[No.895-2]消えた四千円
No.895-2
しばらく無言のまま手を合わせる。
神妙な時間がしばし流れた。
「・・・これでよし!・・・と」
彼女の充実した顔が微笑ましい。
自分のことのように考えてくれる。
「ちゃんとお願いした?」
「あっ、も、もちろん!」
もちろん、お願いした。
なんせ、今回は四千円もつぎ込んだのだから。
「そう・・・それならいいけど」
ただ、願い事は前と同じだ。
「かなうといいな」
昇進がどうでもいいわけじゃない。
けど、彼女はそれ以上の存在だ。
「確認するけど・・・」
「私の幸せなんて、願ってないよね?」
「えっ・・・い、いやぁ・・・そ、それは・・・」
慌てふためく僕を見て、察したらしい。
「もぉ!うれしいけど・・・」
「もう一回、入れるわよ」
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