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[No.887-2]水泳の時間

No.887-2

「・・・それにしても、地獄だったわね」
「うん・・・言えてる」

泳げない者にとっては、これほど嫌な時間はない。
単に恥ずかしいだけじゃないからだ。

「何度か溺れかけたよ」
「私も」

もちろん、足が付くから大事には至らない。
けど、ジタバタしている時はそのことすら忘れている。

「大笑いされるし、苦しいし・・・」
「ほんと、トラウマになってる」

それもあってか、海やプールに泳ぎに行くことはない。
今でも泳げないのは変わらないからだ。

「泳げる子がうらやましかったな・・・」

だからと言って、親に助けを求めたりしなかった。
別に親が嫌いとか反抗とかしているわけじゃなかったのに。

「まぁ、子供心に何か感じてたのかもね」
「そうね・・・心配かけまいと」

結局、無様だった水泳の時間を気合でやり過ごした。

「お陰で、心の強さだけは“カナヅチ”級ね!」
S887
(No.887完)
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