[No.887-2]水泳の時間
No.887-2
「・・・それにしても、地獄だったわね」
「うん・・・言えてる」
泳げない者にとっては、これほど嫌な時間はない。
単に恥ずかしいだけじゃないからだ。
「何度か溺れかけたよ」
「私も」
もちろん、足が付くから大事には至らない。
けど、ジタバタしている時はそのことすら忘れている。
「大笑いされるし、苦しいし・・・」
「ほんと、トラウマになってる」
それもあってか、海やプールに泳ぎに行くことはない。
今でも泳げないのは変わらないからだ。
「泳げる子がうらやましかったな・・・」
だからと言って、親に助けを求めたりしなかった。
別に親が嫌いとか反抗とかしているわけじゃなかったのに。
「まぁ、子供心に何か感じてたのかもね」
「そうね・・・心配かけまいと」
結局、無様だった水泳の時間を気合でやり過ごした。
| 固定リンク | 0
「(036)小説No.876~900」カテゴリの記事
- [No.900-2]暖かくなると・・・(2019.03.03)
- [No.900-1]暖かくなると・・・(2019.03.02)
- [No.899-2]YATAI(2019.03.01)
- [No.899-1]YATAI(2019.02.28)
- [No.898-2]見送る背中(2019.02.12)
コメント