[No.884-2]なげる
No.884-2
「もしかして、“なげる”ですか・・・」
「もしかしなくても、そうよ」
意味不明な方言ではない分、余計に混乱していた。
それ自体は、一般的な言葉だからだ。
「ほら、この前・・・」
ダンボール箱を彼女に捨てるようお願いしたことがあった。
その時・・・
「元気良く、“なげてきます!”って言ったじゃない?」
「ストレスでも溜まってるのかと思ったよ」
放り投げて、それでスッキリするのなら・・・と思ったくらいだ。
「す、すみません・・・全然気付かなくて」
「北海道弁?」
彼女が小さくうなづいた。
「ごめんね、指摘しちゃって」
彼女も営業の職に付く。
取引先に勘違いさせるわけにも行かない。
「本当に“投げられたら”大変ですよね」
「そういうこと」
標準語と方言を使い分けてこそ社会人だ。
「あの・・・」
「なに?」
彼女が恐る恐る質問してきた。
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