[No.876-2]大したことがない翼
No.876-2
「けどさ、ずっとここに居たら気付かないんだろうね?」
急に、友人がまじめな表情に変わった。
「ほら、良くも悪くも染まっちゃうというか・・・」
確かに都会に住んでいるからこそ、その違いに気付く。
とは言え、都会を批判しているつもりはない。
「ほんと、そう・・・」
こんな素敵な環境も、慣れてしまえば何とも思わなくなる。
「たまに来るくらいが丁度いいかもね」
「そうね、私たちには」
別に仕事に疲れたわけでも恋に破れたわけでもない。
でも、せわしない毎日に翼を休めたくなることもある。
「翼?そんな立派なもの生えてたっけ?」
「・・・かもね」
二人で顔を見合わせて、大笑いした。
「じゃぁ・・・行きますか!」
「うん!今度は私が運転するね」
目的地に向けてハンドルを握った。
「ふぅ~、無事、家に到着!」
「お疲れさま!」
大したことがない翼でも、明日からまた飛び立てそうだ。
(No.876完)
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