« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »

2018年9月

[No.872-2]雨男の彼女だけに

No.872-2

「あの時・・・」

僕が家を出た瞬間、空模様が急激に変化した。
それまでは、そこそこ晴れていたのに。

「やっぱり!」
「なんだよ・・・その“やっぱり!”って」

予想された反応だけど、あっさりと認めたくない。

「だって・・・」
「時間的にそうなんじゃないかって思ってた」

待ち合わせの時間から逆算すればそうなるだろう。

「あの天気の変わりようだもん!」
「あなた以外に考えられないよ」

もちろん、単なる偶然に過ぎない。
ただ、状況によっては自信を失うこともある・・・今回のように。

「うぅ・・・」

特にゲリラ豪雨だっただけに、雨男が際立ってしまった。

「ごめん・・・俺のせいじゃないけど」

おかしな謝罪になった。

「相当、濡れただろ?」

自分自身もズブ濡れになってしまった。
自分が呼び寄せた雨に濡れた・・・何とも笑えない結果だ。

(ん?・・・いや、待てよ・・・)

全くと言っていいほど、彼女は濡れていなかった。
S872
(No.872完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.872-1]雨男の彼女だけに

No.872-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」

久しぶりに、その力を発揮したような気がする。

「また、台風が来てるんだって!」

今年は台風やら大雨やら、何かと物騒だ。

「僕のせいじゃないぞ」
「そうなの?」

軽くイジられている。

「あのね・・・」

今年は出掛ける前に、雨が降っていることが多かった。
そのため、“雨男”にならずに済んだ。

「だって、最強の雨男でしょ?」
「おいおい・・・」
「冗談よ、冗談!」

僕にはとても冗談に聞こえない。
多少、やましい気持ちもあるからだ。

「まぁ、強く否定もできないけど・・・」

つい最近も雨男の所以たる出来事があったばかりだ。

「デートの日、大雨降ったよね?」

いわゆるゲリラ豪雨だ。
自分が住んでいる一帯が局地的な豪雨に見舞われた。

「あれ、凄かったよね!」

彼女も、近くに住んでいるから知っているはずだ。

(No.872-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.871-2]思い付かない選択肢

No.871-2

「さて・・・と・・・」

まず、ページ数を確認する。
この時点で、弱腰の自分が見え隠れしている。

「20ページ読んだとしたら・・・」

それでも、10日ほど掛かる。
ただ、あくまでも毎日読んだ場合だ。

「う~ん・・・・」

うなってみても始まらない。
けど、うなりたくもなる。

「とにかく・・・毎日、少しでも刻んで行こう!」

1ページだけでも刻んで行けば、いずれ読み終えられる。
長い道のりだけど、今日から始めよう。

「じゃあ、記念すべき1ページ目は・・・」

あれから、約3週間が経過した。
何とか予定通りに読み終えることができた。

「明日の社内便で送り返すね」
「うん、わかった」

実用書だけに、知識の幅が広がった気がする。
頑張って読んだ甲斐があった。

「勉強になったよ」
「ちゃんと読んだのね、偉い偉い!」

(・・・そうか!)

“読んだふりをする”という選択肢を思い付かなかった。
S871
(No.871完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.871-1]思い付かない選択肢

No.871-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「えっ!・・・そ、そうだね」

予期せぬ展開になってきた。

「じゃあ、社内便で送りますね」

大したことじゃない。
でも、まるで学生時代に戻ったかのようだった。

「2~3週間、借りてて大丈夫?」

最近、本らしい本を読んでいない。
そのため、読破するのに慎重になった。

「全然、大丈夫ですよ」

それに夜遅く帰宅してから本を読むのは至難の業だ。
格好の睡眠薬になるからだ。

「ありがとう」

彼女が最近読んだ本の話をしてきた。
その話に何となく付き合っていた。

「じゃぁ、楽しみに待ってる」

その割には、調子良く答えてしまった。
大袈裟だけど、罪の意識を感じずにはいられない。

(・・・とは言え、読むのは大変そうだな)

小説ではない、いわゆる実用書だ。
それも、全くの専門外だ。

「ふぅ~」

話がついた後、何とも表現しがたい感情が表に出た。

(No.871-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.375

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.433 3つの願い事
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

うそのような本当の話です。今でも少し、神秘的な力を信じていないわけではありません。

ただ、事実はこうです。一度に3つの願い事をしたのではなく、毎年1つ願い事していました。毎年と言っても、具体的なお願いをしたのは2年、つまり2回だけでした。
そして、その2回の願い事がほどなくして叶いました。ひとつ目が「自転車が欲しい」、ふたつ目が「あの人と付き合いたい」でした。これは小説の通りです。

願いが叶ったことは、もちろん単なる偶然です。冒頭、神秘的なとは書きましたが、本気でそう思っているわけではありません。
ただ、どちらも自分の力だけで叶うものではなかっただけに、当時は結構、信じていました。
実はこれに味をしめて、3回目の願い事をしようかと計画は立てていました。そう遠くない場所にあったので、その気になれば年1回とは言わず、毎日通うことも可能です。でも、そこは信心深くない私でも“ずうずうしい”と感じていたので、年1回にかけることにしました。

で、その3回目ですが、結局、そこを訪れることなく、私は実家を離れました。3回目の願い事も女子には在りがちな内容ですが、あえて隠しておきます。
T375
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.870-2]宇宙人の話

No.870-2

「結構、覚えてるじゃん!」

その宇宙人から地球を守るのが私達の役目だった。

「そうそう!それに悪い宇宙人と言えば・・・」
「火星人?」

彼が驚いた顔をしている。

「良く知ってるね!?」
「逆に金星人なんかは良い宇宙人」

設定が、火星人だったのを覚えていたからだ。
それに当時の子供向けの科学雑誌もそんな感じだった。
侵略してくるのは、もっぱら火星人だった。

「あくまでもイメージだけどね」

ただ、このイメージが今でも根付いているのかもしれない。

「火星人にしてみれば、迷惑な話ね!」
「・・・だよな!」

もし、本当に居たら・・・の場合だが。

「ねぇ、もし、本当に宇宙人が侵略してきたら」
「あの時のように、私を守ってくれる?」

怯える私を、宇宙人から守ってくれた。

「・・・まぁ、もし、そうなったら・・・な」
「うん・・・」

宇宙人の話も、たまには悪くない。
S870
(No.870完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.870-1]宇宙人の話

No.870-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
彼が大きくうなづき始めた。

「・・・だよな、確かに」
「テレビでなにか言ってたの?」

さっきからテレビに釘付けになっている。
逆に私は全く興味がない。

「ほら、宇宙人ってさ・・・」

どうして男子は、宇宙人とかが好きなんだろう。

「・・・でね・・・の場合・・・」

話が理解できないわけじゃない。
でも、話半分どころか、ほとんど入ってこない。

「宇宙人のイメージってさ、“タコ”だよね」
「・・・たこ?」

何のことだが、ピンと来ない。

「・・・ごめん、ごめん、ほら、宇宙人と言えば」

タコのように足が何本も生えているイメージと言う。
確かに・・・言われてみれば何となく記憶に残っている。

「ほら、僕らが幼稚園に通ってた時・・・」
「・・・あぁ!あれね」

何かの時間に、先生が宇宙人の恰好をした。
その姿が、タコのようだったことを思い出した。

「色は・・・緑だったかな?」

地球を侵略に来た、悪い宇宙人の設定だっだと思う。

(No.870-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.869-2]敏感なのか鈍感なのか

No.869-2

「あの時計は・・・だし、微かな香水も好印象ね!」

偶然近くにいたのか、近づいたのかはあえて聞かない。

「でも、悩み事でもあるのかな~?」
「どうしてですか?」

先輩曰く、時より、険しい表情を浮かべていたらしい。

「よく気付きますよね!?」
「でも、目は燃えてたわよ!」

どうやら、相当近い距離に居たようだ。

「そ、そこまで・・・」
「何か大きな仕事を任されてるんだわ!」

普通の人なら、単なる妄想で終わる。
でも、先輩の場合、あながちそうとも言えない。

「カバンからすると営業ね」
「良い感じに使い込まれてるから」

観察力と言うか、何かを敏感に感じ取る能力は高い。
逆にこれがなければ、単に面倒な先輩で終わる。

「彼女は・・・多分いないね」
「それまで分かるんですか!?」

何度も言うが、何かに“気付く”ことに長けている。

「明日もイケメンを見つけるぞ!」

ただ、そのわりには、ウンザリしている私には気付いてくれない。
S869
(No.869完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.869-1]敏感なのか鈍感なのか

No.869-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・でね、それでさぁ・・・」

興味がないわけではない。
でも、何度も同じような話をされると正直うんざりする。

「ん?興味ない?」
「えっ!?ど、どうかな~」

(あ、あぶない・・・)

見透かされているみたいだ。

「ないわけじゃないですけど・・・」
「でしょ~!」

この決めつけ感がすごい。

「今日のイケメンは、俳優で例えるとね・・・」

週3ペースで、イケメン報告をしてくれる先輩が居る。
主に通勤途中に出会ったイケメン。

「・・・似、かな?」
「そ、そうなんですね」

先輩だけに、無視するわけにはいかない。
それどころか、逆に話に“乗る”必要がある。

「私も見たかったなぁ~」
「でしょ、でしょ!!」

さらに、ノリノリになってきた。

「結構、いいとこの会社に勤めてるわよ」

いつもながらその観察力には目を見張るものがある。

(No.869-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.374

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.402 前方後円墳
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

当ブログの小説は、決して悲しい涙で終わることはありませんが、この作品に関して言えば、ややしんみりムードです。

かなりピンポイントな話題ですが、今でも鮮明に覚えています。
社会のテストでそれが出題され、結構、自信を持って“かぎ穴”と答えました。
その後、先生からフォロー?みたいなものがあって、その時にそれが“前方後円墳”だと言うことを知りました。もちろん、初めて聞く言葉でした。ただ、小説に書いてある通り、私が聞き逃していた可能性も否定できませんが、古墳そのものが授業に登場しなかった記憶が残っています。つまり、何の情報も与えられずにテストが行われました。

ところが・・・みんな知らないはずなのに、正しい答えを書いている人が結構いました。確かに、テレビや雑誌などを見て知っていたのかもしれませんが、その顔触れは、塾に通っていた人たちばかりでした。私の友人もそうでしたから、余計に印象として残っています。
この時、子供ながら、かなりショックを受けましたし、相当な距離も感じました。昔は今ほど過激ではありませんでしたが、振り返るとこの辺りから学力に差が付き始めるんでしょうね。

大袈裟ですが、競争社会に飲み込まれて行くそのプロローグを描いた小説かもしれません。ですから、冒頭に書いた通り、どこかしんみり感が漂っているのかもしれませんね。
T374
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.868-2]むぎむぎ

No.868-2

(さて、そろそろネタばらしと行くか・・・)

ドッキリとは言えないが、似たようなシチュエーションだ。

「毎日、むぎむぎを作ってくれるの?」
「そうだよ!愛されてるわぁ~」

全く気付いていない。
それどころか、ますますノリノリになっている。

「私にも、愛情を分けてよ?」

それらしく友人のマイボトルに手を伸ばした。

「だ~め!いくら親友でも、このむぎむぎだけはダメ!」
「もう!ケチね!」

ここまで持ち上げておけばいいだろう。

「だって、愛情タップリのむぎむぎなんだもん!」

(今だ!!!)

「ところで・・・“むぎむぎ”ってなに?」
「えっ!?あっ・・・」

友人の顔が真っ赤になった。

「・・・で、どっちが言い出したの?」
「彼・・・のほうかな?」

無意識のうちに、彼の口ぐせが移ってしまったようだ。
そんなふたりの姿が目に浮かぶ。
S868
(No.868完)
読み
終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.868-1]むぎむぎ

No.868-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ふぅ・・・生き返るよぉ~」

友人がマイボトルで何か飲んでいる。

「やっぱり、夏は“むぎむぎ”ね!」

(・・・むぎむぎ?)

でも言葉の響きと状況から判断すれば、容易に想像できる。
おろしろそうだから、しばらく泳がせておこう。

「始めたの?マイボトル」
「うん、今年は猛暑だったでしょ?それに・・・」

猛暑にあわせてマイボトルデビューを果たしたらしい。

「なにか言いたそうね?」
「分かる!?プレゼントされたの、彼から!」

なるほど・・・目の前で飲んで見せたのはそういうことらしい。

「うらやましいなぁ~」

しばらく泳がせておくために、さりげなくご機嫌をとる。

「それに・・・むぎむぎも作ってくれるんだ!」

まだまだ我慢だ。
ここで突っ込んではいけない。

「やさしいね」
「でしょ?」

友人には同棲している彼氏が居る。
だから、むぎむぎを作ってもらっているようだ。

(No.868-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.867-2]モンブラン

No.867-2

「なになに!?」
「ごめん!モンブランというのは・・・」

ケーキではなく、アイスクリームの商品名だ。

「アイス?」
「うん、多分、ローカルの」

小さい頃に帰省先でしか食べたことがない。

「・・・確かに聞いたことも食べたこともない」

ただ、その会社の名誉のために言っておきたい。
あくまでも個人の感覚だ。

「それがさぁ、何とも美味しくて・・・」

まず、パリッとした触感が印象的だ。

「気を抜くと、そのコーティング部分が落ちちゃうんだよね!」
「一人で盛り上がらないの!」

完全に友人を置き去りにしてしまった。

「もう少し詳しく教えなさいよ!」

食いしん坊の友人が食いついてきた。
とは言え、私の記憶も曖昧になっている。

「あぁ~、もう頭から離れないよ!」

友人の中では、もはやモンブランはケーキではなくなったようだ。
S867
(No.867完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.867-1]モンブラン

No.867-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、モンブランって知ってる?」

友人が怪訝そうな表情で私を見つめる。

「失礼ね!スイーツにうとい私でも、さすがに知ってるよ」
「特にこれからが美味しい季節だよね」

(これからが美味しい?)

どちらかと言えばシーズン真っ盛りは過ぎている。

「そうかな?」
「まぁ、北国では・・・」

それ系は夏よりも冬の方が、売れ行きが良いと聞いたことがある。

「北国?」
「場所はあまり関係ないと思うけど・・・」

何だか話が噛み合わない。

「関係あ・・・」

途中であることに気付いた。
肝心な部分を話していない。

「ごめん・・・共通語みたいにしゃべっちゃった」
「・・・共通語でしょ?モンブランって?」

逆に“方言ってあるの?”とでも言いたげな表情だ。

「ちょ、ちょっとタイム!」

自分から話題を振っておきながら、強引に割って入った。

(No.867-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.373

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.464 ぶたカバン
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

当ブログのテーマと言える“日常”を描いたお手本のような作品です。日常だけど今でも鮮明に覚えています。

いつの頃からか、カバンをペシャンコにするようになりました。
他の学校がどうであったか分かりませんが、少なくとも私たちの学校は、それが一種の伝統でした。
先輩から後輩へ、ごく自然に伝染して行ったのでしょうね。気付けば私もそうしていました。ペシャンコをキープするために、クリップで挟んだり、重しを載せてクセ付けしたりしていました。
ペシャンコのカバンですから、ノート程度しか入りません。でもお弁当は毎日、持参していました。では、そのお弁当は・・・。

答えは簡単です。カバン以外に入れ物を持ち歩いていたからです。とは言え、当時と今とでは流行?が異なり、私たちの時代は紙袋が主流でした。紙袋に諸々を入れ、カバンはペシャンコにする、これが定番でした。
ただ、振り返ると、化粧メーカーやブランド品のコンパクトな紙袋ではなく、それこそ“ザ・紙袋”のような、大きめのサイズを持ち歩いていました。今の若者すれば、ダサいと言われ兼ねません。
実はこの紙袋にスポットをあてた小説も書いているんですよ。よければ探してみて下さい。

ラストはお決まりの、何となく良いことを言い放って締め括っています。手前味噌ですが、よくもまぁ、ぶたカバンのテーマでそれなりに締め括れたなと感心しています。
T373
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.866-2]茜色の空

No.866-2

そもそも家を出るのが遅かったのが真の原因だ。
ある意味、電車は“隠れ蓑”になっている。

「本当は・・・」
「電車が遅れなくても・・・」

罪の意識を感じる、大袈裟だけど。

「・・・間に合わなかった?」
「うん・・・」

あえて言わなくても良かったのかもしれない。
丸く収まっていたのだから。

「バカ正直ね」

いずれにせよ、今日は遅れて来る運命にあったようだ。

「だから、ごめん!」
「そこまで言うなら、いちおう怒っておこうかな?」

そういうと、僕の頭をコツンと叩いた。

「はい、これで終わり!」
「じゃ、どこに食べに行こうか?」

彼女とディナーの約束をした。
でも、あえて予約をせず、成り行きに任せることにしていた。

「そうだな・・・」

何となく、魚介系が食べたい気分だ。

「偶然!私も、そう!」
「じゃ、あの店で決まりだね」

茜色の空には、絵にかいたようなうろこ雲が広がっていた。
S866
(No.866完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.866-1]茜色の空

No.866-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ごっ、ごぉめん!!」

約束の時間より1時間近くも遅刻してしまった。

「ほんとにごめん!」

電車が大幅に遅れたのが原因だ。

「大変だったわね?」
「・・・怒ってないの!?」

拍子抜けするほど、落ち着いた対応だった。

「だって、あなたのせいじゃないでしょ?」
「う、うん・・・」

ただ、手放しでは喜べない。
家を出た時間も決して早くはなかったからだ。

「ごめん、もう少し早く家を出てたら・・・」

電車の遅れに巻き込まれることもなかった。

「それは結果論」
「いつも最悪の事態を想定しておくわけにもいかないでしょ?」

彼女にしては、珍しく冷静な発言だった。

「それに、今まで遅れてきたこともないからね」

今までの信用も大きいようだった。

「だから、別に気にしてないよ」

とは言え、どうもすっきりしない。
電車の遅れがなくとも、間に合わなかった可能性があるからだ。

(No.866-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.865-2]彼との出会いも

No.865-2

「で、ある時、偶然その曲の“先”を聞いちゃったんだ」

FM放送だったと思う。
店内に、その曲が流れ始めた。

「別に耳をふさぐ理由もないから」
「そりゃそうよね」

特に意識もせず、聞いていた。

「そしたら・・・」
「もしかして・・・いい曲だったとか!?」

私が言うまでもなく、友人が先に答えてくれた。

「そう!すごくいい曲で」

触手が向かなかったイントロさえ、そう感じるようになった。
そうなると、“いい曲感”が止められない。

「言わば、食わず嫌いだったみたい」
「でも、その時々の心境も影響するんじゃない?」

友人にしては珍しく良いことを言った気がする。

「そうね・・・それはあるかもしれない」

いずれにせよ、時々、こんな経験をする。

「私と彼の出会いもそんな感じだったなぁ!」
「・・・聞いてないし!!」
S865
(No.865完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.865-1]彼との出会いも

No.865-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
つい最近も経験した。
私の中では、“音楽あるある”だと思っている。

「ねぇ、こんな経験ない?」

誰かに話さずにはいられない。
いや、どうしても聞いて欲しい。

「どんな?」
「この前、アルバムを聞いてたんだけど・・・」

かなり昔に買ったものだ。
CDだけど、それこそ擦り切れるほど聞いている。

「いつも飛ばす曲があって」

好きなアーティスでも、好みの曲ばかりではない。

「へぇ~そうなんだ?」

そんな曲は、大抵イントロを聞けば分かる。
さらに歌い始めればそれが確定する。

「だから、最後まで聞いたことがない曲があるんだ」

自分でも不思議に思うくらい徹底している。
強情と言うか、頑固と言うか・・・。

「もしかして、それが“あるある”?」
「ううん、違うの」

この話にはまだ先がある。

(No.865-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.372

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.481 電話の向こうで
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

その昔、あるところに、ひとりの女性が勤務していました。
その人は無愛想で有名な方でして・・・。

仕事で事務所に立ち寄るまでは、彼女とは面識がなく、ごく稀に電話する程度の関係でした。面識と言っても対面したわけではなく、「彼女が例の人か・・・」と、腫物を触るかのごとく遠くから見ていたのが実情です。
噂通りの無愛想な方で、事務的とはまた違う感じでした。悪く言えば高圧的に感じるし、要件が上手く伝えられないと「で、結局何が言いたいの?」と、逆ギレされそうな感じもあります。
経験と先入観から、ますます電話するのが苦手になり、そんな心の内が、相手にも届いてしまう・・・という、まさに悪循環の見本のような関係でした。

そんな時、彼女から思わぬ言葉が発せられました。当時は深くは考えなかったのですが、今思えば、なぜ僕のことを知ってたのか、不思議です。
事務所に立ち寄った時も、自己紹介したわけでもなく、「○月○日に○○さんが来る」程度の情報しかなかったはずです。
確かに、見掛けない顔の人が居ればその人を僕と思うかもしれません。でも、電話口では「もしかして来ましたよね?」ではなく「来てたでしょ?」と言われています。

他の人に「あの人、誰?」と聞いている可能性が濃厚ですがそれでも、少しでも興味を持ってくれたことで彼女との距離が少し縮まったような気がしました。
そんな彼女は、今、比較的近い距離で仕事をしています。
T372
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.864-2]いつの頃からか

No.864-2

特に7月に入ってからは、毎日、届くようになった。

「まぁ、今年は猛暑だったしな」

猛暑に関して過去形ではなく、進行形とも言える。
とにかく、例年よりも早く夏が来たのは確かだ。

「これだけでも話題には事欠かないけど」

今年は良くも悪くも猛暑が話題になった。
お互いの気温を教え合うことも、今年ならではだ。

「ただ・・・」

別にその土地に居なくてもアプリで確認できる。
わざわざ、送ってくる意味は薄い。

「それにしても、いつまで届くのかな?」

そうこうしているうちに夏は終わり、冬がやって来る。
そうなると、今度は向こうが主役になる。

「もっと送られてくるかもな!」

さすがに冬場は勝ち目がない。

「来なきゃ来ないで寂しくもあるけど」

もしかしたら、そう思わせる高等テクニックかもしれない。

「とりあえず・・・明日も気温が上がりそうだな!」

いつしかそれを心待ちにしている自分が居る。
S864
(No.864完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »