[No.857-2]半々な気持ち
No.857-2
朝食時の出来事だった。
お皿の上に、パンがふたつ用意されていた。
「ひとつは好きだったパンで」
渦巻き状の形と小豆が特徴のローカルな菓子パンだ。
他では見掛けたことがない。
「嬉しかったな・・・覚えてくれて」
「その気持ち分かる!」
食感も味も変わっていなかった。
「けど・・・嬉しくもあり、悲しくもあり・・・と言うことは・・・」
「でね、もうひとつのパンなんだけど」
見た目は普通のロールパンだった。
「それで・・・パクついたわけよ」
すると、中に何やら入っていることに気付いた。
「もしかして・・・あの嫌いなやつ?」
「そう!」
バターのようなマーガリンのようなものが入っていた。
「嫌いなの、知っているはずなのに・・・」
でも、吐き出すこともできず、そのまま胃に流し込んだ。
「だから、嬉しくもあり・・・ってことね?」
結局、そのことは言えなかった。
でも、よくよく考えたら・・・。
(No.857完)
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