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2018年8月

[No.864-1]いつの頃からか

No.864-1

登場人物
男性=牽引役
-----------------------------

相変わらず文字はない。
ただ、最近はスタンプでもない。

気になって、それの“最初”を探した。

「・・・これかぁ」

最初の日付は4月21日だった。
思っていた以上に、随分前から届いていた。

「気温は23度か・・・」

札幌にしては、例年の倍近い気温だ。

「これならLINEを送りたくもなるよな」

これを皮切りに、札幌の気温が届けられるようになった。
天気アプリで画面をコピーし、それをLINEに貼り付けている。

「僕もここからだな」

その返事として僕も画面をコピーして返す。
“数字”の上では、ほぼ負けることはない。
なにせ、ここは大阪だからだ。

「あはは・・・怒ってるよ」

僅差で負けた時は、怒りのスタンプが返ってきた。
もちろん、本気で怒っているわけではないが。

「でも、考えちゃうよな・・・」

どうでもいいようなLINEだとも思う。
それを送ってくれる意図がイマイチつかめないからだ。

(No.864-2へ続く)

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[No.863-2]今年の夏は

No.863-2

「そう!あれは絶対彼女よ」

そう思い込むのも無理はない、場所が場所だけに。

「そう思いたいね」

友人もオカルト的なものを信じているわけじゃない。
そうあって欲しいと願っているだけだ。

「単なる偶然だったのかなぁ・・・」

一昨年は、ミツバチが供えた花に寄ってきた。
周りに、沢山の花があるのにもかかわらず。

「今年は彼女も忙しいんじゃない?」
「・・・そうかもね」

何となく場を繋いだが、そんなことあるわけがない。
それはお互い、分かっている。

「きっと、どこかで見守ってくれてるよ」
「そうね・・・そうよきっと!」

さっきまで不機嫌だった顔が明るくなる。
それに、そうこう話しているうちに、目的地に到着した。

「さぁ、降りるわよ」

その時、あることに気付いた。

「うそ・・・運転手の名前」

今年は運転手になって、私たちの前に現れた。
S863
(No.863完)
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[No.863-1]今年の夏は

No.863-1     No.781-1  来年の夏も

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「それにしてもこの渋滞・・・何とかして欲しいよね」

友人の顔があからさまに不機嫌だ。

「仕方ないじゃん、お盆だもん」

広大な霊園にして、この車の量は半端じゃない。
さっきから全く動いていない。

「ようやく、バスに乗れたというのにねっ!」
「まぁまぁ・・・そう怒らないの」

送迎用のバスに乗り込むまでも大変だった。

「運転しない分、気楽でいいじゃん!」

特に帰路を急いでいるわけでもない。
それに、女性の運転手ということもあり、運転が丁寧だ。

「そう言えば、今年は何も起こらなかったわね?」
「・・・そうみたい」

不機嫌の原因は、多分、渋滞よりも、そこにあるのだろう。

「そりゃ、起こったら起こったで、アレだけど・・・」

毎年、共通の友人の墓参りに、ここを訪れる。
その時、必ずと言っていいほど不思議な現象が起こる。

「去年は、ちょうちょだっけ?」

墓参りの帰り道、一匹のもんしろちょうが寄ってきた。
まるで、私たちの歩調に合わせるかのように。

(No.863-2へ続く)

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ホタル通信 No.371

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.489 近くて遠い
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

何だかスッキリしない小説ですね。肝心な部分を隠したまま話が進んでいますから。

小説的な狙いから隠したのではなく、正直に書けなかったのが本音です。それに、ホタル通信で書くことも少しためらっています。
人物設定は実際とは真逆で、彼と小説上の私は反対の立場にいます。つまり、色々な事実を語るのが、“私”であり、その聞き役が“彼”というわけです。ちなみに作者はこのどちらかです。これ以降この立場で話を進めて行きますね。

私には結婚を前提にした彼がいる。彼と言っても、純粋な彼ではなく、悪意を持って書けばある意味、彼に“飼われている”存在でした。
不自由でもないが自由でもない。逃げ出そうと思えば、いつでも逃げだせる。でも、私自身、行くあてもない・・・そんな世界で生きていました。
早い話、生きることを半分あきらめていたのかもしれません。そんな中、聞き役の彼と出会ったのです。

この小説は、二人の距離が近づけば近づくほど、何かが遠のいて行くさまを描いたものです。私に結婚を前提にした彼が居ること、そしてもうひとつ、十代で結婚して、離婚の経験があること、これを聞き役の彼に告白しました。
冬のホタルの原点とも言えるような小説です。こんな経験があったからこそ、ブログを始めたとも言えます。
T371
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[No.862-2]私にも見える

No.862-2

「それと、もうひとつ・・・」
「なによ・・・神妙な顔しちゃって」

子供をあやすお母さんと彼女を重ねてみた。

「重ねて・・・?」
「・・・私がお母さん?」

彼女がキョトンとした顔をしている。
僕が彼女の立場だったら、そんな顔にもなるだろう。

「いや・・・その・・・ほら・・・」
「・・・で、重ねて見た結果はどう?」

今度は真剣な顔に変わった。

「えっ・・・うん、ピッタリ、重なった」
「そう!それは良かったわ」

ただ、言葉とは裏腹に、喜んでいるようには見えない。
今度は彼女が神妙な顔になってしまった。

「ごめん・・・なんか変なこと言って」
「・・・」

何も答えてはくれなかった。

「でも・・・」
「私には、あなたもあやしている姿が重なるけどな」
S862
(No.862完)
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[No.862-1]私にも見える

No.862-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今時期、飛行機の中は、小さな子供連れが目立つ。
それもあってか、アチコチで泣き声が聞こえる。

「やっぱり気になる?」

彼女がおもむろに聞いてきた。

「・・・どうして?」
「だって、さっきから泣き声のする方をジッと見てるから」

そんなつもりはなかったが、どうやらそうらしい。
ただ、見ている先は鳴き声の“主”ではない。

「でも、“うるさい!”というわけじゃないからね」

場所が場所だけに、赤ちゃんは特に大変だ。
気圧の変化で、大人でさえ頭が痛い。

「ほんと、お母さんが大変だよな」

何とかあやそうとするも、そう簡単ではない。
誰かが泣くと、まるで連鎖反応のごとく、誰かが泣き始める

「あら、随分とやさしいのね?」

こんな時は、男はまるで役に立たない。

「母と言うか、女性は強いよなぁ~」

ひとり、ふたりと席を立つ人が目立ってきた。

(No.862-2へ続く)

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[No.861-2]褒められてる?

No.861-2

ただし、漫画版だ。
そこから、歴史は漫画で学ぶようになった。

「その話、本当なの?」
「何かの本で読んだ記憶があるんだ」

そう言われるとそんな気がしないでもない。

「う~ん・・・」
「あれ?歴史好きならたまらない話じゃない?」

確かに歴史は好きだ。

「好きだけど鉄砲って・・・なんなのさ?」
「鉄砲が歴史に与えた影響は大きいのよ!」

それは否定できない。
ただ・・・。

「いきなり鉄砲の話なんだもん・・・」
「だって、そんな気分だったからね!」

どんな気分になれば、鉄砲の話を思い付くのか。
心の中を覗いて見たくなる。

「歴史の陰に鉄砲あり・・・鉄砲の陰に歴史あり!ってことね」
「それらしくまとめるんじゃないの!」

まったく、友人の気ままな性格には呆れかえる。

「せっかくなので、調べてみるよ」

多少、興味をそそられなくもない。
とりあえず、持っている歴史の漫画を見直してみることにしよう。

「やっぱり、漫画みたいな歴史を持っている人は違うね~」
「・・・ん!?」

褒められてる?ディスられてる?
S861
(No.861完)
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[No.861-1]褒められてる?

No.861-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「最初は、底が抜けちゃったんだよね」
「・・・なんの話?」

いつも唐突に話が展開する。

「鉄砲よ、鉄砲」
「はぁ?」

今日はいつにも増して、話が“ぶっ飛んで”いる
鉄砲だけに・・・。

「上手いこというね?」
「・・・それより、なに?」
「昔々・・・」

友人が延々と、鉄砲の歴史について語り始めた。

「・・・要するに、砲身の底が抜けたってこと?」
「そうそう!」

最初に作った鉄砲は、爆発の衝撃で底が抜けたらしい。
例えるなら、ワインのビンとコルクの関係だ。

「その失敗から・・・」

底の部分をネジ式にすることを思い付いたらしい。

「ネジ式だと、衝撃があっても簡単に抜けないからね」

大変、すばらしい話だ。
でも・・・。

「何なの、この話!?」

真昼間のおしゃれなカフェでする話とは思えない。

「あれ?三国志、好きだったよね?」
「そうだけど・・・」

(No.861-2へ続く)

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ホタル通信 No.370

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.423 崩れた壁
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

当初、この小説は作ったもののボツにしていました。理由は簡単です。余りにも自己満足な小説だと感じたからです。

硬派を気取れば、「読者に妥協せず我が道を行く」となりますが、それでも公開をためらってしまう小説も少なくありません。出来栄えの問題ではなく、着眼点があまりにも自分目線過ぎるからです。
ただ、小説上の私には崩れかけた壁が物理的なものではなく、家族の崩壊として見えていました。
先に書いておくと、小説上の私は作者ではありません。つまり、他人の心境を想像して書いています。とは言え、創作ではなく、事実がもとになっています。

その他人が誰なのか、あえて書く必要もありませんよね。冬のホタルではお馴染みの“彼女”です。崩れかけた壁が、彼女の言動を励起させ、小説に仕立てました。彼女の言動がなければ書いていなかったと思います。
こんな小説ですが、拍手を5つもいただいています。「5つくらいで偉そうに言うなよ」と怒られそうですが、当ブログでは大満足の数なんですよ。少なくとも5人の方々に共感していただけたと思うと、公開して良かった小説のひとつです。

実は、つい最近も一度ボツにした作品を復活させました。そう遠くない時期に掲載されますので、お楽しみに。
T370
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[No.860-2]二代目のネコ

No.860-2

「今までは茶色だったでしょ?」

確かに、あいつは茶色だった。

「今日は真っ白だし」

これまた確かに、あいつは白だ。

「最近、茶色のネコを見掛けなくなったんだよね」

それと入れ替わるかのように、今度は白いネコが現れた。

「それ以来、茶色のネコは見てないんだ」
「そう・・・それは心配ね」

縄張り争いにでも敗れ、去ってしまったのだろうか?
それとも人知れず寿命を全うしたのだろうか・・・。

「新天地で、よろしくやってるのかもしれないよ?」
「・・・それもそうね」

我々が思うほど、彼らはやわじゃない。

「で、白いネコはどんな感じなの?」
「それがさぁ・・・」

茶色のネコを白にしただけのような感じだ。
つまり、色以外は生き写しと言ってもいい。

「一言で言えば二代目って感じ?」
「それって・・・」

同僚が何やら考え始めた。

「本当に二代目ってことない?」
S860
(No.860完)
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[No.860-1]二代目のネコ

No.860-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
最近、見掛けなくなったネコがいる。
逆に、見掛けるようになったネコがいる。

「また、ネコと戯れてきたの?」
「えっ!?なんで分かるの」

同僚と会うなり、第一声がこれだった。

「そんなにたくさん、“毛”を付けてたら分かるよ」

慌てて全身を確認する。

「あっ!ほんとだ」

アチコチにネコの毛がまとわりついていた。

「時々、気にはなってたんだけどね」
「言ってよ!」

同僚曰く、言うタイミングがなかったらしい。

「今日は今までのネコと違うようね?」
「分かるの!?」

今日は驚きの連続だ。
確かに、いつものネコと違う。

「見てた?」
「あのね・・・私はあなたのストーカーじゃないわよ」

軽い冗談だ。
よくよく考えなくとも見ていたはずもない。

「毛の色が違うからね」

真っ白な毛がエアコンの風で、ふんわりとなびいていた。

(No.860-2へ続く)

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[No.859-2]影響

No.859-2

「そんな時、彼女と知り合って」

彼女のブログの作り方がとても参考になった。

「参考というより、かなり似せちゃった・・・かな?」

お知らせのページを画面トップに固定する。
カテゴリなどがきれいに並ぶように番号を振る。

「トップページの雰囲気は彼女のページのまんまかもしれない」
「・・・性格が出てるよね」

確かに、キチンと並べたり、揃えたりしたい派だ。
当初、カテゴリが思う通りに並ばずに困っていた。

「彼女のページを見た時に」
「これだぁ!って、つい声が出ちゃったもん」

それから、ずっとそれを守り続けている。

「まぁ、はたから見れば、堅苦しく見えるかもね」
「でもさぁ、ここまでくれば圧巻よ」

このまま1000話まで行けるのか、私にも分からない。
本当に数を目指しているわけではないからだ。

「ところで、その彼女は?」
「止めたよ」

自然消滅ではなく、理由を告げ、ブログそのものを閉鎖した。
実はこの影響も大いに受けている。

「それって、“お休みのお知らせ”のこと?」
S859
(No.859完)
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[No.859-1]影響

No.859-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
自身のブログは、ある人の影響を受けている。

「ついに900話も夢じゃなくなったわね!」
「・・・別に数は目標にしてないけど」

数少ないファンの一人が友人だ。

「そうなの?」
「そうなの!私の中では結果に過ぎない」

少し、硬派を気取ってみる。
でも、その言葉に嘘はない。

「もしかしたら、明日にでも急に終わるかもしれないし」

だから、あえて目標は立てない。
日々、一歩一歩、前に進むだけだ。

「そう言えば・・・」
「ブログ始めた頃、よく訪問してくれてた人、居たよね?」

今も昔も訪れる人は少ない。
そんな中、開設当初によく来てくれるブロガーが居た。

「そもそもの繋がりは、ボトルメールだったかな?」
「懐かしいぃ~!久しぶりに聞いたわ」

確かに、久しぶりに口にした。

「ブログを始めた頃は、まだポリシーが固まってなくて」

試行錯誤を繰り返していた。

(No.859-2へ続く)

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ホタル通信 No.369

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.420 買えない自転車
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

事実となる出来事は小さいですが、思い出としてはかなり強く残っていますので、実話度を少し高めにしています。

記憶にある限りでは、働きに出る前までに乗り換えた自転車は3台です。最初の1台はもらい物か拾い物のどちらかだと思います。それを塗り替えたのでしょうか・・・やけにペンキ感が強かったことを今でも覚えています。
まだ、低学年ならいいのですが、高学年ともなると、その自転車が恥ずかしくて恥ずかしくて・・・。同級生はアニメのキャラクターの自転車だったり、カラフルで女の子らしい自転車だったりしていましたからね。

ある日、とうとうそれに耐えられなくなり、それこそ号泣しながら新しい自転車をねだりました。すんなりとは買ってもらえませんでしたが、何とか新品の自転車を購入することができました。
当時、自転車がどの程度の金額であったのか分かりませんが決して安い買い物ではなかったと思います。でも、子供ですからそんなことはお構いなしです。

家が裕福じゃなかったから・・・と言うことではなく、生活を切り詰めるべき所は切り詰める、ただそれだけだったと思います。大人になってようやくそのことに気付きました。小説のラストもこれで締め括りました。両親への感謝を込めて。
T369
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[No.858-2]洗濯ばさみの謎

No.858-2

「当時の流行りとか?」
「それはないな」

流行りについては、今でも鮮明に覚えている。
当時、いくつかの遊びや物がブームになった。

「さすがに、これは流行にはなかったよ」

色とりどりの洗濯ばさみが、キラキラ光っている。
それに負けない、三人の笑顔も輝いている。

「多分、何かの影響だとは思うんだけど」
「そうだろうね、子供のすることだもんね」

写真はこれ一枚きりだった。

「当時は、テレビの影響力が今以上にあったろうから」

何かを見てそれを真似たのだろう。
そう考えるのが妥当だ。

「でも不思議だよな」
「なにが?」

なぜ、こんな写真が残っているのだろう。

「ほら、写真を撮るためにこんなことをしたのか・・・」
「それとも、こんなことをしたから写真を撮ったのか・・・」

可能性としては後者だ。
写真を撮るだけなら、こんな手の込んだことはしないだろう。

「今で言う、インスタ映えでも狙ってたのかな?」
S858
(No.858完)
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[No.858-1]洗濯ばさみの謎

No.858-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これなに?」

彼女が僕のアルバムを見ている。

「なにって・・・ただの洗濯ばさみだよ」

彼女が言いたいことは分かっている。
わざと、とぼけてみた。

「そうじゃなくて・・・な・・・」
「“なんでこんなことしてるのか”ってことだろ?」

彼女じゃなくても、聞きたくなるだろう。
確かにインパクトはある。

「もう!いじわるね」
「ごめん、ごめん」

とは言うものの、実はその答えを持っていない。

「で、なんでこんなことしてるの?」
「・・・覚えていない」

その写真には僕と姉、そして近所の同級生が映っている。
皆、服を覆い尽くすほどの洗濯ばさみをくっ付けている。

「覚えてないの!?」
「うん・・・」

なぜ、そうしたのか・・・背景は覚えていない。
そもそも、そんな写真があることすら忘れていた。

(No.858-2へ続く)

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[No.857-2]半々な気持ち

No.857-2

朝食時の出来事だった。
お皿の上に、パンがふたつ用意されていた。

「ひとつは好きだったパンで」

渦巻き状の形と小豆が特徴のローカルな菓子パンだ。
他では見掛けたことがない。

「嬉しかったな・・・覚えてくれて」
「その気持ち分かる!」

食感も味も変わっていなかった。

「けど・・・嬉しくもあり、悲しくもあり・・・と言うことは・・・」
「でね、もうひとつのパンなんだけど」

見た目は普通のロールパンだった。

「それで・・・パクついたわけよ」

すると、中に何やら入っていることに気付いた。

「もしかして・・・あの嫌いなやつ?」
「そう!」

バターのようなマーガリンのようなものが入っていた。

「嫌いなの、知っているはずなのに・・・」

でも、吐き出すこともできず、そのまま胃に流し込んだ。

「だから、嬉しくもあり・・・ってことね?」

結局、そのことは言えなかった。
でも、よくよく考えたら・・・。
S857
(No.857完)
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