[No.856-1]売物件
No.856-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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それが最悪の事態だとは思っていない。
誰しもそれからは絶対に逃れられないからだ。
「・・・売物件?」
「ほら、以前、話したことがあっただろ?」
通勤の途中に、ある家の前を通る。
その時、必ずと言っていいほど、お婆ちゃんを見掛ける。
「確か・・・デイサービス待ちとか・・・」
「多分ね」
そのようなサービスを受けている瞬間を見たわけじゃない。
ただ、経験上、そう見える。
「玄関で座ってたり」
「近くをウロウロしてる時もあったな」
明らかに何かを待っている仕草だった。
よそ行きの恰好が一層、そう思わせた。
「僕も時間には正確なほうだから」
家を出る時間はほぼ同じだ。
道中、信号待ちがあったとしても、そう大きくは変わらない。
「自転車だよね?」
「そう・・・だから、家の前をただ通過するだけなんだけど」
毎日、顔をあわせていると何となく気になってくる。
「それが・・・数か月前から見掛けなくなって」
数日なら気にはならない。
今までも、何度かあったからだ。
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