[No.845-2]すずめの親子
No.845-2
「ごめん・・・もしかして思い出させてしまった?」
「うん・・・ちょっとだけやけど」
彼女にとっての“親子”は、ある意味、タブーだ。
過去の嫌な記憶を思い出させてしまう。
「目の前で、こんなに仲良くされたらなぁ・・・」
すずめには罪はないが、想定外の展開になってしまった。
「それが普通やろ?それでええねん!」
彼女の純粋な言葉だろう。
「・・・だよな!」
つい、強い口調で返事をしてしまった。
「いつまでも仲良くするんやで!」
いずれ、子離れ親離れする日は来る。
知っていても、そう言わずにはいられなかったのだろう。
「・・・だな」
中途半端な返事になった。
でも、僕も彼女と同じ気持ちだ。
「お腹いっぱいになったやろか?」
「そりゃ、なっただろ?」
少し嫌味っぽく言った。
少ないながらも、カレーパンの一部を失ったわけだから・・・。
「じゃあ、借りた分、返すわ・・・ほいっ!」
彼女のカレーパンをちぎって、僕の口の中に押し込んだ。
さすがに口移しとは行かなかったが。
(No.845完)
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