[No.844-1]なにもない
No.844-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「ねぇ・・・」
誰かに呼ばれた気がして、辺りをキョロキョロしてしまった。
「・・・もしかして呼んだ?」
一気に彼女の表情がこわばる。
雲ひとつない青空に、雷鳴が響き渡りそうな予感がする。
「さっきから、何度か呼んでるわよ」
周囲に人がいるせいか、控えめな対応だ。
逆にその方が怖い。
「ご、ごめん・・・」
「・・・ちょっと考えごとしてて」
嘘ではない。
視線の先にある草むらが、さっきから気になっていた。
「草むらって、あれのこと!?」
彼女がその草むら指さした。
「そうだよ」
「何も・・・ないよね?」
ごく当たり前の反応だ。
実際、草以外、何もない。
「あぁ・・・何もないよ」
ちょっとした禅問答のような会話になってしまった。
「どうしたの?考えごとなんて」
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