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2018年5月

ホタル通信 No.362

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.351 孤独のかげ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

タイトルからして、何だかヘビーな感じが漂う小説です。でも、読んでみると、そこまでヘビーな内容ではありません。

会話の内容は概ね事実です。高校を中退、そして一人暮らしを始めた彼女。ただ、一人暮らしと言っても、正直に言えば、家を飛び出しています。
小説では一人暮らしとなっていますが、実際は居候みたいな状態でした。ですから、見た目上、一人暮らしではありません。
また、居候と言っても、悪く言えば、全くの他人の家に転がり込んだようなものでした。

ですから、実際は一人暮らしではなく、見た目は同居ということになります。ただ、彼女にとっては心休まるな場所ではなく、生きていくための苦渋の選択でもあったわけです。
彼女がそのような状態にあったので、あえてシチュエーションを一人暮らしにしました。

冒頭、「そこまでヘビーではない」と書きましたが、事実が明らかになると、少しヘビーさが増してきます。
でも、彼女の持ち前の明るさというか、暗い出来事でもサラっと話してくれるところに、僕自身が助けられていました。ラスト付近は、手前味噌ですが、大変好きな表現方法です。
T362
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[No.844-2]なにもない

No.844-2

考えごとをするつもりはなかった。
けど、草むらを見ていたら、思い出がよみがえってきた。

「小さい頃、土手の草むらでさぁ・・・」

寝転がれば、姿が見えなくなるほどだった。
そこで、青空を仰ぎ、風の音を聞く。

「実家が町の外れだったから」

車もほとんど通らなかった。

「そこで、何もしないことが最高の遊びだったな」
「何もしないのに?」

もちろん、草むらで友達と遊ぶこともあった。
でも、行き着くところはいつもそれだった。

「地球に包まれているって感じだったよ」
「大げさね・・・」

彼女がクスクスと笑い出した。
雷鳴は何とか避けられたようだ。

「あの草むらを見て・・・そんなことを考えてたんだ?」

場所こそ違えども、雰囲気は似ていた。

「そりゃ、草むらだもん!似てるでしょ!?」
「・・・だよな」

初夏の他愛無い会話だった。

「でも、なんだか見えたような気がする」

彼女が僕を見てつぶやいた。
S844
(No.844完)
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[No.844-1]なにもない

No.844-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ・・・」

誰かに呼ばれた気がして、辺りをキョロキョロしてしまった。

「・・・もしかして呼んだ?」

一気に彼女の表情がこわばる。
雲ひとつない青空に、雷鳴が響き渡りそうな予感がする。

「さっきから、何度か呼んでるわよ」

周囲に人がいるせいか、控えめな対応だ。
逆にその方が怖い。

「ご、ごめん・・・」
「・・・ちょっと考えごとしてて」

嘘ではない。
視線の先にある草むらが、さっきから気になっていた。

「草むらって、あれのこと!?」

彼女がその草むら指さした。

「そうだよ」
「何も・・・ないよね?」

ごく当たり前の反応だ。
実際、草以外、何もない。

「あぁ・・・何もないよ」

ちょっとした禅問答のような会話になってしまった。

「どうしたの?考えごとなんて」

(No.844-2へ続く)

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[No.843-2]笑顔があふれる場所

No.843-2

「なんなの!?そのクイズみたいなもの・・・」
「花壇だよ、か・だ・ん!」

今までなかった花壇ができていた。
大きくはないが、それらしく囲まれていた。

「肝心の花は、これからみたいだけどね」

ちょっとしたビニールハウスのようなものもあった。
とにかく、何かを期待させる作りだ。

「へぇ~、楽しみぃ!」

それもあってか、そこに人が集まるようになった。
今までにはない光景だった。

「なんか色んなこと話してるみたい」

話の中心は、花壇のことだとは思う。
時々、それを指さしながら、話しているからだ。

「まぁ、単なる世間話もあると思うけど」
「でも、いいんじゃない・・・それで」

友人の言う通りだ。
花壇がどう形作られるかより、集う人たちに注目したい。

「みんな、いい笑顔だったよ」

それこそ、話に花が咲いていた。
S843
(No.843完)
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[No.843-1]笑顔があふれる場所

No.843-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ほら、川沿いに公園あったじゃん?」

多分、これだけでも会話が成立する。

「それがどうしたの?」
「少し前から工事してたんだよね」

最初は取り壊されるのかと思った。
でも、ただの改修工事だった。

「ずいぶん、荒れてたもんね」

それこそ、取り壊されてもおかしくない状態だった。

「先週、その工事が終わったみたいなんだ」

近くに置いてあった重機の姿が見えなくなった。
それに、囲いもなくなっていた。

「きれいになってた?」
「そりゃ、もう!」

今にも朽ち果てそうな椅子も、今では懐かしい。
それに、新しく加わったものもあった。

「加わった?」

それに気付いたのは、それを見たからじゃない。
それに集まる人だかりを見たからだった。

(No.843-2へ続く)

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ホタル通信 No.361

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.339 絆
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

う~ん、かなり説明調の小説ですね。何かを言うために、必死に説明しているように感じます。

実話度はほぼゼロです。はっきりと覚えてはいませんが、話のきっかけは、ラストの1行「人と人とのネットワーク」だったと思います。
このフレーズをどこから入手したかは別にして、このフレーズから、人と人との繋がり・・・その行き着く先として、“絆”という言葉を主軸にしました。冒頭お話しした説明調の展開は、この“絆”を言いたいがための伏線だっとも言えます。

また、世相も反映させたような話になっています。
当時はスマホではなくケータイであり、また、LINEではなくメールの時代です。LINEのようにリアルタイムではなく、ややタイムラグがありながら友人と連絡を取り合っているさまを描いています。
この頃から見れば、良くも悪くもコミュニケーションの取り方は大きく変わっています。

振り返ると、なんだかメールも味がありますね。
相手が読んでくれたのか、読んでいないのかが分かりません。
内容によっては、返信が来るまでのドキドキ感が半端ではありません。
結局、返信が来ずに終わることもあります。でも、妙な達成感はありますよ。あれ?話の方向がズレてしまったかも(笑)
T361
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[No.842-2]真っ赤なス-パーカー

No.842-2

「あんな車で迎えに来られたら誰だって・・・」

注目の的だろう。
ドラマとかなら、ついでに花束も持ってたりする。

「女性なら、イチコロじゃない?」

彼女は違うと信じたい。
でも、さっきからの言動からすれば・・・。

「それはどうかな・・・」
「違うの!?」

イチコロはないにしても、心は揺れるだろう。

「だって、さっき、目で追ってただろ?車を」
「それに気になるって・・・」

男として、見えない敵に負けた気分だ。

「確かに目で追ったし、そうも言ったよ」
「だって・・・うふふ」

肝心な時に、笑いで誤魔化そうとしている。

「なんだよ!」
「ごめん、だって・・・」

僕の追い詰められたような顔を見て、笑ったらしい。
失礼な話だが。

「あんな、うるさい車が通り過ぎたんだもん・・・」
「目で追うし、気にもなるよ」

つまり、好意的な行動ではないらしい。
逆に、迷惑だと言わんばかりの表情だ。

「私はごめんだよ、あんな車」
S842
(No.842完)
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[No.842-1]真っ赤なス-パーカー

No.842-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
爆音と共に、1台の車が通り過ぎて行った。
車に詳しくない僕でさえ、それがスーパーカーだと分かる。

「・・・すごいな」
「そうね」

彼女も通り過ぎて行った車を目で追う。
また、周りの人たちも同じだった。

「いかにも!って車だよな」

それこそ、目が覚めるような“赤”だった。
これで目立たないわけがない。

「ほんと、すごい車ね」

独特のフォルムは、日本車を凌駕している。

「・・・やっぱり、気になる?」
「車のこと?」

さっきから、周りの女性陣もザワついている。
何となく理由に察しは付いている。

「やっぱり・・・」
「そうね・・・気にならない方がおかしいわね」

予想はしていたものの、生で言われるとショックが大きい。

「白馬の・・・じゃないけど、そんな感じだよな?」
「そうね、少なくても成功者だろうね」

それに、どうしても運転者がイケメンだと思ってしまう。
ドラマの影響かもしれないが・・・。

「イケメン?あはは、そうかもしれないね」

笑いが気にはなるが、やはりそう思っているらしい。
見ず知らずの人に、ジェラシーを感じる。

(No.842-2へ続く)

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[No.841-2]夢の河

No.841-2

「でも、急にどないしたん?」

自分でもよく分からない。
何かを思い付いたように、勝手に口から出てしまった。

「う、うん・・・」
「せやったら、あなたの夢は?」

雰囲気を察してか、逆に質問されてしまった。

「僕の!?」
「うちに聞くくらいやから、あるんやろ?」

もちろん、無いわけではない。
ただ、僕も彼女とどこか似ている答えだ。

「大企業がいいな」
「・・・うちと変わらへんやん!」
「だな・・・」

僕らの境遇は似ている。
夢を語るより、現実しか見ていない。
いや・・・正しくは現実しか見えない。

「それ、夢ちゃうやん!」
「仕方ないだろ?」

この後、二人して大笑いした。

今でも、時々、頭をよぎることがある。

「・・・渡れたのかな?夢の河を」

振り返り、人混みの中に彼女の姿を探した。

(No.841完)
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[No.841-1]夢の河

No.841-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なぁ・・・君の夢ってなに?」

「えっ!?うちの?」

あまり触れてはいけないことだと思っている。
でも、聞かずには居られない。

「確か、専門学校だよね?医療系の」
「そうやで」

以前、学校の寮に住んでいると聞いたことがあった。

「将来の夢は看護師?」
「う~ん・・・どやろ・・・」

珍しく考え込んでしまった。

「夢やなくて、単なる仕事やね」

イメージとは違う、案外、クールな答えが返ってきた。

「そ、そうなんや・・・」

焦って、僕まで大阪弁になってしまった。

「夢とか、そんなんやない・・・」
「もっと、リアルなもんやね」

真意は分からない。
けど、何を言いたいのかは理解できる。

「生きていくため・・・だよね?」
「・・・まぁ、そんな感じ」

夢の話のつもりが、現実味を帯びた話になってしまった

(No.841-2へ続く)

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ホタル通信 No.360

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.337 うまくいかない
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

今も作者の年齢や性別は不明にしていますが、時々、あからさまに“仕事”の小説を書くことがあります。

作者を「学生」だと思っている人は居ないとは思いますが、ここまで仕事について踏み込んで書いた小説も珍しいと思います。
実話度は低めですが、概ね、私のポジションを描いた小説です。
どこにでもあるな話だけに、私の職場も例外ではありません。
でも、小説のきっかけは「現場と本社が常々衝突している」ということではありません。

小説のきっかけは、後半の「仕事なんて上手く行かないのが日常じゃない?」のセリフにあります。
これに似たセリフ、あるいは文字を見聞きしたことがあったからでした。これが妙に記憶に残り、これを機に少し気持ちが楽になりました。
とは言え、そうそう失敗しているわけではないのですが、小説ではそれを大げさに表現しています。

後半はお約束の恋愛話に結び付け、意味ありげなセリフと共にラストを迎えています。
ちなみに、最後の一行の意味分かりますか?そんなにひねったものではないので。
T360
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[No.840-2]濃い本

No.840-2

「・・・ったく、いつもこんなんだよな」

彼女の返事は決まって、写真かスタンプだ。
ただ、嫌われているからではないと思う。
その証拠に、ほとんど彼女の方からLINEが来るからだ。

(そっちがその気なら・・・)

『濃い本をお願いします』

意地悪く、返事を返した。
最初の写真に、気になる本が数冊あったからだ。

「どれを選んで返してくるかな?」

僕の返信の意味が分からないわけではないだろう。
“濃い”に隠された意味が分かれば“あの本”を選ぶはずだ。

「さてさて・・・」

もう、返事が届いても良い時間だ。
でも、うってかわって、返事が届かない。

(・・・悩んでいるんだろうな)

こちらの思惑通りだった。
“あの本”を選ぶと、多少、波風が立つ可能性があるからだ。

「ん!?」

それとは全く関係がない、ビジネス書の写真が届いた。
タイトルがやたら長い本だった。

(逃げたな・・・)

あえて、あの本を避けたと考えて良いだろう。

『無難な本だね』

さっきよりも、さらに意地悪い返事かもしれない。
ただ、正直に言えば、少し“あの本”の話がしたかった。

「“不倫の教科書”って・・・彼女、らしいけどな」
S840
(No.840完)
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[No.840-1]濃い本

No.840-1

登場人物
男性=牽引役
-----------------------------
時々、なんの前触れもなく、写真が届く。
それが、分かりやすいものなら苦労はしないのだが・・・。

(何だよ・・・また、悩ませる気か?)

知り合いの女性から、LINEが届いた。
そこには一枚の写真が添えられていた。

『色んなジャンルの本を読んでるね?』

見たままを返した。
ただ、何かに偏っているような気がしないでもない。

「・・・今度は何だよ!?」

すぐに返信が届いた。
けど、また本の写真だった。

「“老人の取扱説明書”・・・」

すぐさま、あることが頭をよぎった。

「まさか、お父さん?」

母親は数年前に、亡くなっている。
そうなれば、必然的にそう考えてしまう。

「仕事には関係ないだろうし・・・」

職場は違えども、仕事の内容は知っている。

『身近な人?』

やんわり、聞いてみた。
直球では聞きにくい。

「今度は何!?」

また、すぐに返事が届いた。

「“かどとすみの違いを言えますか?”・・・って何だよ!?」

正しくは、返事ではなく、新たな本の写真だった。

(No.840-2へ続く)

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[No.839-2]永い話

No.839-2

「今は、出張に行く前に下調べしたりして」
「あはは!どっちがメインなの?って感じね」

自分自身へのご褒美だとは言った。
でも、見方を変えば・・・。

「そうでもしなければ“やってられない”から?」
「だな!」

彼が笑顔で応えてくれた。

「だから、意地でも観光してやるぞ!って」
「とにかく、手ぶらで帰るのだけは避けたくて・・・」

形があるお土産のことを言ってるのではないだろう。

「ところで、君は?」
「・・・私?」

気付けば、彼の話の聞き役になっていた。

「私も・・・同じようなものね」

行って帰るだけの出張に嫌気がさしていた。

「色んな所に少し余裕ができてきたんだ」

だから、スイーツが話題の店に、並んでいる。

「でも、ちょっと場違いかな・・・」

スーツ姿の私たちは浮いた存在だ。

「でも、話しかけて良かったよ」
「なんとなく、同じ匂いがしたんでさぁ・・・」

私に続いて、彼が列に並んだ。
そして、見ず知らず通しの会話が始まった。
S839
(No.839完)
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[No.839-1]永い話

No.839-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「若い頃は、出張を楽しめなかったんだよな」
「逆に若い時こそ、楽しめるんじゃないの?」

彼が急に、昔話を始めた。
それも、仕事の話だ。

「それこそ、“逆”だよ」
「仕事をこなすだけで精一杯で・・・」

仕事が終わったら真っ直ぐ帰る・・・そんな日々だったと言う。

「それはそれで普通のことなんだけどな」
「・・・だね」

むしろ、それの方が正解だろう。
仕事を名目にした観光の話も世にはびこっている。

「仕事もお金も余裕がないし・・・」
「それ以前に、心にも余裕がないからね」

分かる気がする。

「それでも年齢を重ねて行くと・・・」
「・・・余裕ができた・・・と?」

彼が小さくうなづいた。

「地元の美味しいものを食べたり・・・」
「ちょっとした観光もするようになったんだ」

もちろん、プライベートな時間だろう。
それにこれが仕事に生きることも少なからずあるだろう。

「それ以上に、リフレッシュできるからね!」
「自分自身へのご褒美みたいなものね?」

彼が満面の笑みを浮かべた。

(No.839-2へ続く)

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ホタル通信 No.359

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.334 ばいばい
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

シチュエーションはかなり違いますが、根底に流れる別の意味を持たせた“バイバイ”については事実です。

当時、少しギクシャクした関係が続いていた中で、「どうにでもなってしまえ!」という感情で、バイバイとメールを打ったことがありました。もちろん、文章自体はごく普通でした。
今思えば、焦っていたのか、小説の通り、イラだっていたのか分かりませんが、とにかく文章の裏に隠されていた感情は一言で言えば、かなり攻撃的なものでした。

ただ、メールを送った後、我に返り、慌てて別のメールを送ったのも小説の通り事実でした。
前述した通り、攻撃的なのは感情だけであり、文章自体はごく普通だったので、それが相手に届くはずもありません。でも、不思議なもので、それが彼に伝わってしまったのです。
冷静に考えれば、そのメールだけが原因ではないと思いますが結果的に、それが引き金となってしまいました。

ある意味、駆け引きだったのかもしれませんね。多分、直接的に真実を知ることが怖かった・・・そう、自分自身を分析します。
T359
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[No.838-2]星が好き

No.838-2

「いいね!でも、どうしてハワイのパンフ・・・」
「えっ!?たまたまだよ」

この言葉に嘘はない。
貧乏学生には、ハワイは色んな意味で遠すぎる。

「ふ~ん・・・誰かと行くのかと思った」
「・・・かもしれないけどな」

一応、軽く見栄を張る。
もちろん、そんな人は居ないし、予定もない。

「そうなんだぁ・・・」

話の方向が少し変わってきた。
戻したほうが良さそうだ。

「とにかく・・・ハワイがおすすめ!」

この話は、このあたりで終わりにしよう。

「いいわよ、考えとくね」
「じゃ、決まりだな!」

一応、相手のノリに付き合うことにした。

「そう言えばさぁ・・・さっきのセリフ覚えてる?」
「“宇宙に存在するもの全てが好き”って言ったじゃん」

覚えてるも何も、印象に残っている。
かなり、個性のある発言として聞こえたからだ。

「あぁ・・・それが?」
「“全て”には、あなたも入っているよね?」

言葉の意味からすれば、そうなる。

「そうなるけど・・・どういうこと!?」
S838
(No.838完)
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[No.838-1]星が好き

No.838-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「私も好き!」

このセリフが両想いの始まりなら、どんなに素晴らしいことか・・・。

「でも、周りには星ではなくて・・・」
「宇宙が好きってことにしてるけどね」

星が・・・では、メルヘンチック過ぎる。
男子としては、やはり硬派に行きたいところだ。

「変な所に拘ってるのね?」

ただ、今は星よりも宇宙そのものに興味がある。

「私もそうよ!宇宙に存在するもの全てが好き!」
「そうなの!?」

僕の場合、それを通り越して、物理学にも興味が出てきた。

「・・・へんかな?」

専門書を読めば読むほど、切っても切れない関係だと分かった。
もちろん、言うほど理解はしていないが。

「ううん、変じゃないよ!」

話が下火になるどころか、どんどん大きくなって行く。
異性で、ここまで盛り上がるのも珍しい。

「いつか、満天の星空を見に行きたいね」
「うん・・・でも、ここじゃ・・・」

見えるのはネオンの灯りだけだ。
満天の星どころか、夜空さえも見えない。

「ハワイなんてどう?」

以前、旅行のパンフレットで見掛けたことがあった。

(No.838-2へ続く)

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