[No.832-2]修繕の跡
No.832-2
「懐かしいね!」
「まだ、動くの?」
黙ったまま背中に付いている小さなハンドルを回す。
ジリジリとゼンマイが巻かれる音がする。
「見てなよ」
音楽と共に、ロボットの首と両腕が交互に動く。
「そう!これこれ!」
何の曲かは分からない。
けど、妙に心が落ち着く。
「もう、捨てられたと思ってたよ・・・」
確かに、捨ててしまおうかと考えたことはある。
陶器製だけに、何度も腕が折れてしまったからだ。
「その度に、接着剤を持ち出しては・・・」
出来る限りの修繕をおこなった。
「ほんとだ・・・アチコチにその形跡が残ってるわね」
「でも、不思議だよな」
彼女から貰ったプレゼントが彼女の元へ戻ったみたいだ。
「あっ!そうそう・・・私もあるんだ!」
パンダのぬいぐるみだ。
最初のクリスマスに僕から彼女に贈ったものだ。
「これも、修繕の跡がすごいな」
捨てられないんじゃない。
残そうとする想いが強いだけだ。
(No.832完)
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