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[No.830-2]結ばれない二人

No.830-2

「そうなんだけど、電柱越しだったからだよ」
「えっ!?電柱越しに透けて見えた?」

話に、尾ひれ背ひれが付くとはこのことだ。
その付き方たるもの、見事としか言いようがない。

「いや、だから・・・」

この手の話は説明が難しい。

「二人の距離がだんだん近づいてきたんだけど」

電柱が邪魔をするかのように、相手が見えなくなった。

「消えた?」
「・・・じゃなくて」

単に電柱越しの相手が見えなくなった。

「で、姿が見えないまま、すれ違っちゃって・・・」

多分、歩く速度も同じだったのだろう。

「・・・よく分かんない話ね」
「そうね・・・自分でもそう思う」

明らかにトーンダウンしているのが分かる。

「ごめん、説明ベタで・・・」
「けどさ、結ばれない二人の話にも聞こえるわね」

友人らしからぬセリフだ。

「そう言えば昔、そんなこともあったなぁ・・・」
「・・・きたぁー!?」

友人の大好物が他にもあったことを思い出した。
S830
(No.830完)
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