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[No.829-2]指なんか立てたりして

No.829-2

「どうして?」
「ほら、懐かしい音楽が聞こえてきたから」

自然にその方向に向けて、指をさしてしまった。

「それなら、あっちじゃない?」

今度は彼女がある場所を指さす。

「スピーカーはあそこにあるのよ?」
「ほんとだ・・・」

いつもの感覚で、天井を指さしてしまった。
音楽は天井から聞こえることが多いからだ。

「・・・ん?・・・でも、まてよ」

いちいち、突っ込まれるようなことでもない。

「なんだよ・・・上げ足を取りたかったのか?」

どうでもいいことだけに、逆に腹正しくなってきた。

「初デートの時に流れてた曲なのよ?」
「えっ!?そうなの・・・」

申し訳ないが、全く記憶にない。

「そりゃそうでしょ・・・」
「随分と緊張してたみたいだから」

彼女曰く、あの時を思い出して笑ったらしい。

「今じゃ、余裕でこの曲を聴いてるから・・・」
「それに指なんか立てちゃったりして!」
S829
(No.829完)
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