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2018年2月

[No.824-2]恋の残骸

No.824-2

「ただ、今回は・・・」

落ちる瞬間を目撃し、それを手にとってしまった。

「口は悪いけど、事故に巻き込まれた気分」

とにかく、どう処理すれば良いのか分からない。

「けど・・・さぁ・・・」
「・・・なに?」

友人が何やら考えている。

「“わざと落とした”ってことない?」
「それって・・・」

友人が言いたいことは何となく想像できる。
少女マンガにでも出てきそうな展開だろう。

「あなたの気を引こうとして・・・」
「そんなことあるわけないでしょ!?」

否定しつつも、多少の期待を抱いてしまった。

「明日あたり、声を掛けられるんじゃない?」

確かに、落とし方が不自然だったようにも思える。

「そう考えると・・・さぁ・・・」

アチコチで落ちている片方の手袋。
報われなかった恋の残骸かもしれない。
S824
(No.824完)
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[No.824-1]恋の残骸

No.824-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あっ!ちょ、ちょっと・・・落としましたよ!!」

通り過ぎた自転車から手袋が落ちてきた。

「これがその手袋ね?」

私の叫びは、むなしく空を切った。
多分、ヘットフォンで音楽でも聞いていたのだろう。

「うん・・・捨てるわけにもいかなくて」

“仕方なく”持ってきてしまったのが本音だ。

「ある意味、大変なものを拾ったわね」
「・・・かもしれない」

落し物だから交番に届ければ済むことだ。
けど、そう簡単ではない。

「届けるのが嫌なんじゃなくて・・・」

これを届けたら、アレもコレもなってしまう。

「手袋、たくさん落ちてるんだもん!」

大袈裟に言えば、今時期、一日一回は手袋に出会う。

「確かに多いわよね」

今までは、落ちていても当然のごとく無視していた。

(No.824-2へ続く)

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[No.823-2]ヒイラギとイワシ

No.823-2

「いや、だから・・・ヒイラギは?」

間違って、イワシを二匹買ってきたのかもしれない。

「ヒイラギって魚、見たことないからさぁ」
「えっ!?」

彼女が驚いた表情を見せた。
けど、すぐに笑いに変わった。

「ぷっ・・・そういうこと!?」

吹きだしそうな笑いを、何とか抑えている感じだ。

「悪かったな!見たことなくて・・・」

もちろん、食べたこともない。

「そんなことないわよ」
「今、見てるじゃん!」

あらためて、イワシがのっているお皿を指差す。

「これがヒイラギよ」
「だから、それは・・・イワ・・・」

言い掛けて気付いた。

「もしかして・・・ヒイラギって魚じゃない!?」
「確かに、似たような名前の魚は居たと思うけど」

そう言うと、ヒイラギをそっと手に取る。

「ほら、これがヒイラギよ」
「・・・」

思い込みが招いた大きな勘違いだった。

「ほら、持ってみてよ」
「・・・痛っ!!」

鬼が嫌う理由が、身をもって分かった気がした。
S823
(No.823完)
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[No.823-1]ヒイラギとイワシ

No.823-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どっちも・・・イワシだよな?」

送られてきた写真には、焼き魚が二匹、写っていた。

「おかえり!」
「ただいま・・・」

挨拶もそこそこに、あれが気になって仕方がない。

「写真送ってくれただろ?」
「節分だからね!」

節分に、ヒイラギとイワシを用意する。
彼女から聞かされて初めて知った。

「節分と言えば、豆まきしか知らなかったよ」
「実は、私も最近まで知らなかったの」

聞けば、買い物に出掛けた時に、たまたま耳にしたらしい。

「鬼が嫌いなんだって、この組み合わせが」

そういうと、あらためて、それを指差す。
もちろん、さっきから視界には入っていた。

「でもさぁ・・・どっちも同じに見えるんだけど?」
「・・・ん?」

話が通じていない雰囲気だ。

「だから、どっちもイワシだろ?」
「・・・そうよ?」

それでもまだ話が通じない。

(No.823-2へ続く)

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ホタル通信 No.351

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.279 うちの子
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

話の流れが、かなりギクシャクしていますが、内容についてはほぼ事実です。

ギクシャクしているのは、単に文章力がないだけですが、実話度が高くなると、逆に脚色が減るため、当人しか分からない状況下で会話が進行して行きます。
特に冬のホタルでは、時間や場所、風景などをあまり描写しないため、そのギクシャク感に拍車が掛かります。

さて、今回の小説を要約すれば、響子(きょうこ)から家庭菜園を勧められ、同意もなくそれがスタートしてしまった・・・というものです。
興味はあったものの、いざ、実行するとなると二の足を踏んでいたのが当時でした。ですから、背中を押してもらったというのが正しいでしょうね。
それからというもの、育てるものは変われども家庭菜園は続いています。趣味とまでは行きませんが、寒さが緩み始めるころ「今年は何を育てるかな?」とワクワクしてきます。

小説のタイトルでもある“うちの子”、ラストにも出て来ますが、この会話は実際に交わされたものです。
正確に言えばメールなんですが、仲間意識が芽生えたというよりも、妙に照れくさかったことを覚えています。だってそうですよね?
T351
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[No.822-2]携帯を持ったら

No.822-2

今なら当たり前すぎて、誰もそんなことを思わない。
けど、当時はそんな雰囲気が少なからずあった。

「・・・そう言われて見ればそうね」

笑い飛ばされるかと思っていた。

「彼女には相当、怪しまれたなぁ・・・」

もちろん、そんな事実はなかった。
それに、それを期待して携帯を持ったわけでもない。

「スマホを見てたら、ふと思い出しちゃって」
「全員、浮気予備軍に見える?」

思わず電車の中で、ふき出しそうになった。

「とにかく、昔々の話だよ」

携帯はいつしかスマホにとって代わられた。

「ふ~ん・・・」
「なんだよ?」

話の流れで、何らかの疑いの目を向けてきた。

「おいおい・・・浮気なんかしてないぞ!」
「冗談でしょ、冗談!」

何だか試されたようで気持ちが悪い。

「結論を言えば、その人の使い方次第でしょ?」

僕の場合、これで彼女と知り合うことができた。S822
(No.822完)
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[No.822-1]携帯を持ったら

No.822-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」

「なに?」

何もしゃべっていないのに、伝わったらしい。
表情にでも出ていたのだろうか?

「ほら、全員、スマホ片手に・・・」

よく見る光景と言えばそれまでだ。
でも、今は“見事”と言っても良いくらいだ。

「ほんと、全員、いじってるね」

正しくは僕達を除いて全員だ。
数名立ってはいるが、彼らさえもいじっている。

「けど、それが?」
「今じゃ、別に珍しくもないでしょ?」

ふとあることを思い出したからだ。

「昔、携帯が世の中に出始めた頃・・・」

当時の彼女にあることを言われた。

「興味深いわね」

それが今でも心の片隅に残っている。

「“浮気でもするつもり?”と言われたよ」

爆発的に普及する前の話だ。

(No.822-2へ続く)

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[No.821-2]笑われる漢字

No.821-2

「あなたって、文学少女だったの?」
「まさか!見ての通りよ」

もう、何年も本らしい本を読んでいない。
別に嫌いじゃないけど、好んで読んだりはしない。

「世間ではそれを“本嫌い”っていうんじゃない?」
「・・・まぁまぁ、それはそれとして」

よからぬ方向に話が進む前に、さっさと話をしてしまおう。

「小さい頃、私も読めない漢字を聞きに行ったことがあって」

たいていの人は経験があると思う。

「・・・まぁ、私もそうね」

何の本だったかまでは、さすがに記憶はない。
ただ、児童書ではないことは確かだ。

「それで、この字なに?って聞いたの」
「そしたら・・・」

親にクスクスと笑われたのを今でも覚えている。

「・・・笑われた?」
「そんな愉快な漢字ってあったっけ?」

漢字自体に、ユーモアがあるわけじゃない。
それを聞きに行くから、笑われてしまう。

「えっーなになに!?早く教えなさいよ!」
「もう、答えは出てるよ」

数秒前に。
S821
(No.821完)
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[No.821-1]笑われる漢字

No.821-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
テレビで、何らかの再現ドラマが放送されていた。
そこに登場する子供の行動から、あることを思い出した。

「・・・それなら、私も見たわよ?」

それなら話も早い。

「でも、内容まではあまり覚えてないなぁ~」
「スマホいじってたし」

活字離れならぬ、テレビ離れの実体がここにあった。

「大袈裟ね!それなりに見てたわよ」
「それなら・・・」

例の再現ドラマの話を持ち出した。

「あぁ・・・アレね?」
「ホント、分かってる!?」

適当にあいづちを打っているように見えなくもない。

「失礼ね!読書好きな子供の話でしょ?」
「そうそう!ちゃんと見てるじゃん」

一応、“さすが友人!”と心の中で褒めておこう。

「で、それがなにか?」
「ほら、その子供がさぁ・・・」

読めない漢字を親に聞きにくるシーンがあった。
結構、難しい本を読んでいるようだった。

「それを見た瞬間、思い出しちゃって」

きっとそれは、私だけじゃないと思う。

(No.821-2へ続く)

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ホタル通信 No.350

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.271 笑顔
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

初期の作品に見られる“自己満足”感、満載の小説ですね。何のことやらよく分からない作品です。

“笑顔を作る”とは言います。でも、小説にも書いた通り、怒った顔や泣いた顔を“作る”とは言いません。小説のきっかけはこれでした。
今回の話は、友人が笑顔を作る練習をしている場面から始まります。練習している理由は、直接的には書いていませんが、彼と別れ話が持ち上がっており、展開次第では、その時に“作り笑顔”が必要になるからです。
「練習が無駄に終わったみたい」のセリフは、「別れずに済んだ」のではなく、号泣したことを間接的に伝えています。

ただ、ラストは冬のホタルらしく、涙で終わらないようにしました。
友人の練習の成果は、今度の合コンで生かされる・・・とのオチを持ってきました。
いつもの通り、書き進めて行き、話しの流れで何となくオチを思いつきました。きっと、私と友人ならこんな展開になる・・・作者ではなく、登場人物達が自ら話を作り上げて行く、典型的な作品とも言えますね。
T350
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[No.820-2]雪国の余裕

No.820-2

「何かあった?」
「ごめん、そんなんじゃない・・・」

別に悩み事とか心配事があるわけじゃない。

「ほら、さっきから雪の話題が・・・」
「・・・それがどうしたの?」

同僚には悪いが、雪に興味がない。
もちろん、ちゃんとした理由がある。

「私・・・雪国生まれなの」
「そうなの!?知らなかった・・・」

同僚と親しくなって、まだ日が浅い。
お互い、まだ知らないことも多い。

「・・・だから・・・か」
「うん・・・そういうこと」

私にとっては、珍しくも何ともない。
雪がチラホラしようが、晴れや雨となんら変わらない。

「ごめん・・・」
「ううん、それを言うなら私のほうよ」

もちろん、生返事をしてしまったことに対してだ。
それと、もうひとつ、謝る理由がある。

「雪は初めて?」
「・・・うん、だからつい・・・」

沖縄生まれの同僚を気遣えなかったことに対してだ。
S820
(No.820完)
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[No.820-1]雪国の余裕

No.820-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あら?・・・降ってきたねぇ~!」
「そうね」

予報通り、雪がチラホラし始めてきた。

「どうりで冷えると思ったぁ!」
「そうだね」

今日は全国的に寒さが厳しいらしい。
昨日も関東地方は大雪に見舞われた。

「東京は大混乱だったよね?」
「そうみたいね」

交通機関は完全にマヒしていた。
それに、ビックリするくらい転倒する人が続出した。

「積もるのかなぁ~!?」
「さぁ・・・」

多分、積もりはしないだろう。
着地と同時に、その姿は消えている。

「・・・さっきから何よ?」
「“何よ”って何によ?」

同僚が不機嫌そうな顔をしている。

「・・・生返事ばかりじゃない」
「あっ・・・ごめん・・・」

指摘され、我に返った。

(No.820-2へ続く)

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[No.819-2]T路地の恋

No.819-2

「理由?・・・見せ付けたいから?」
「ううん・・・その場所ってね」

その場所は、T路地になっている。
彼らは、その交差点にいる。

「それが?」

つまり、彼らはそこで二手に分かれて帰るはずだ。
一方は右に、一方は左に。

「・・・なるほど!」
「始めて見たときに、ピンと来たわ」

少しでも一緒に居たいがための行動だろう。
実際、私もそうだった。

「へぇ~そんなタイプには見えないけどね?」
「そんなタイプってどんなよ!?」

いずれにせよ、淡い思い出だ。
若さゆえの行動だったのかもしれない。

「で、その後、彼とは?」
「・・・私のこと!?」

上手く行っていれば、今でも独身のはずがない。

「見ての通りよ!」

とにかく彼らを見守って行きたい。

「今度、私も連れてってよ?」
「ぜっーたぁいぃー、いやぁー!!」

私が彼と上手く行かなかった理由はそこにあったからだ。
S819
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[No.819-1]T路地の恋

No.819-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時々、ある場所でカップルを見掛ける。
雰囲気からすれば、二人とも高校生だろう。

「そんな趣味があったの!?」
「どんなよ!?」

説明の仕方を少し間違えたのかもしれない。

「だって、カップルを覗いてるんでしょ?」
「あのねぇ・・・」

やはり、丁寧な説明が必要であった。

「帰り道の・・・道の脇で・・・」

人目をはばからず寄り添っている。

「その・・・二人の距離感がすごいんだよね!」

それこそ重なり合ってるんじゃないかと思えるほど近い。

「多分、毎日居るんじゃないかなぁ・・・」

仕事が早く終わった時には、必ずと言っていいほど居る。
だからこその推測だった。

「でもさぁ、道の脇でなんて・・・大胆だね」

確かに、こちらが目をそらしてしまうほどだ。
そのアツアツぶりに。

「ただ・・・分かる気がするなぁ」

それは昔の自分を見ているようでもあった。

「分かる?」

あの場所で寄り添っているのには、きっと理由がある。

(No.819-2へ続く)

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ホタル通信 No.349

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.265 菜の花
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

もちろん、話のきっかけはあるのですが、実際に二人が会話した事実はないので、実話度はゼロにしました。

特に意味も無く花を摘む・・・小さい頃はこんな行動が多かったと思います。意味がないわけですから、後先は何も考えていません。摘んだ後は、多分、捨てていたんでしょうね。
実家のすぐそばに大きな川が流れており、川沿いの土手には毎年、黄色が鮮やかな菜の花が咲いていました。私にとってはとても身近過ぎて、大袈裟ですが空気のような存在でした。

ある時、久しぶりに菜の花を見掛けたことで、記憶がよみがえりこの小説へと繋がりました。
本当はもう少し、ノスタルジックな内容になるはずだったのですが、時を同じくして、“菜の花のお浸し”を食べたことで方向性が変わりました。つまり、先にオチが決まり、それに肉付けして行った関係で、このような話になりました。
比較的、初期の作品なので、今よりも自己満足感が満載ですが当ブログのテーマでもある“日常感”は今よりも魅力的です。

この記事を書いていると、菜の花を見に行きたくなりました。
目に飛び込んで来る鮮やかな黄色と、風に吹かれた草花のざわめきだけしか聞こえない、そんな場所に。
T349
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[No.818-2]老人とイヌ

No.818-2

「相棒?」

私にはそんな関係に見える。

「・・・とは言っても人間じゃないんだけど」

そうなると答えはひとつしかない。

「妖怪?」
「・・・あのね」

おじいちゃんの歩みにあわせるイヌが、そこに居なかった。

「なんだぁ~」
「なんだぁ~・・・って、普通はイヌでしょ?」

とにかく、おじいちゃんだけが散歩していた。

「それは心配ね」
「うん・・・その日だけならいいんだけど」

ただ、今まで一度もひとりだけの姿を見たことがない。
だからこその違和感だった。

「まぁ、明日には元気な姿を見せてくれるんじゃない?」
「うん・・・そう願ってる」

翌日、友人の言葉通りになった。

(良かったぁ・・・)  

すれ違いざまに、心の中でつぶやいた。

「今日も一日、頑張るかぁ!!」

私の大きな声に、相棒だけが振り向いた。
S818
(No.818完)
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[No.818-1]老人とイヌ

No.818-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
瞬間的に、あることを想像した。
その違和感が明確だったからだ。

「・・・何だか元気ないわよ?」
「そ、そうかな・・・」

否定してみても、自覚できるほど声に元気がない。

「どうみてもそうでしょ!?」

確かに隠すつもりもない。

「彼とケンカしたとも思えないし・・・」

嗅覚・・・いや、感性だけは鋭い。

「朝、いつもすれ違う人が居るんだけど」
「あっ!ちなみに“おじいちゃん”だからね」

いらぬロマンス話にならぬよう、始めからクギを刺した。

「えっ!?まさか・・・」
「・・・ん?ちがうちがう!」

友人の反応を見れば何を言いたいか分かる。

「脅かさないでよ・・・」

知り合いでもないのに、この驚きようだ。
何だか嬉しくもある。

「でも、ある意味あたってるかも」

気掛かりなのは、その“相棒”の方だ。

(No.818-2へ続く)

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