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[No.809-1]雨女の皆様へ

No.809-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
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「偶然だとは思ってるんだけど・・・」

大袈裟だけど、数えきれないくらい何度も口にしたセリフだ。

「・・・だよね」

友人も私が雨女だということを認めている。

「さすがに、これはないよね?」

自分のことなのに、呆れ果ててしまう。
私が店から出た途端、雨が降り始めてきた。

「たしかに・・・今まで曇り空だったのに」

雨が降る可能性は十分あった。
本来なら単なる偶然で済まされるべきことだ。

「でも、なんでこういつもいつも・・・」

まるで見ていたかのようなタイミングで雨が降り始める。

「まぁそう言わずに・・・お陰で濡れずに済みそうだし」

そう言うと、バッグから折りたたみの傘を取り出した。

「・・・複雑な心境ね」

私のせいで雨に降られた。
一方では、それを見越して、傘を用意していた友人。

「あなたも持ってるんでしょ?」

もちろん持っている。
外出する際は、晴れの日だってバッグに忍ばせている。

「きっと全国で同じような会話をしてるんだろうね」

その可能性は十分過ぎるほどあるだろう。
私だけが雨女というわけではない。

(No.809-2へ続く)

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