[No.808-2]黄色いじゅうたん
No.808-2
「ちょっと、向こうまで走ってくるから!」
そう言うと、小走りで駆けだした。
「転ぶなよ!」
少し大きめの声で叫んだ。
彼女が振り向きざまに、大きく手を振ってきた。
「・・と・・」
「・・・えっ!?なに?」
立ち止まった彼女が何か叫んでいる。
ただ、遠くてうまく聞き取れない。
「・・・が・・とぅ」
「ぁり・・・・・ぅ」
何らかの言葉が断片的に聞こえてくるだけだ。
「だからぁ、なぁにぃ!!!」
思い切り叫んだ。
「・・・・」
でも、彼女の声は、もう僕には届かなかった。
「今までありがとう・・・」
黄色いじゅうたんは、ずっと向こうまで続いている。
彼女の姿は、もうそこにはなかった。
(No.808完)
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