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2017年12月

[No.812-2]冬休み

No.812-2

「別に、なにもないわよ」

とは言うものの、なにかを隠している顔だ。
今までも何度か目にしたことがある。

「まさか・・・会社を辞めようとか?」

連休どころか、へたをすれば永遠に休みになってしまう。

「まぁ、その・・・そうじゃないんだけど」
「・・・じゃぁ、なに?・・・あっ・・・」

あることに気付いた。
もしかして、その永遠の休みと言うのは・・・。

「ま、ま、まさか・・・付き合っている人、居たの!?」

昨日のクリスマスイブは一緒に過ごした。
おまけに、今日も一緒に過ごす予定だ。

「もしかして・・・」
「一緒に過ごすのが最後だから付き合ってくれたの?」

振り返れば、5年以上はクリスマスを彼女と過ごしている。

「なんで?」
「だって、結婚を機に・・・」

そうなると私と過ごすわけにもいかないだろう。
そもそも、私と過ごしたいとも思わなくなる。

「ごめん、全然気付かなかった・・・」

同じ独身者同士だと思っていた。
ただ、裏切られたとは思っていない。

「・・・おめでとう」
「さっきからひとりで盛り上がってない?」

友人が呆れ顔で問い掛けてきた。

「休みを長めにとりたいんだけど、いいかな?」S812
(No.812完)
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[No.812-1]冬休み

No.812-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「もうすぐ、お正月休みよね?」
「・・・予定は?」

友人がさも自然な流れと言わんばかりに、嫌味を言ってきた。

「あなたと一緒よ」

私も嫌味で返した。

「あら、寂しいわね」
「あのね・・・」

それが自分のことでもあることを理解していないようだ。

「けどさぁ、働き出してからは連休が待ち遠しいよね」
「・・・」

どんな嫌味が含まれているのかと、つい身構えてしまった。

「・・・あぁ・・・まぁ、そうよね」

悪意がないことに気付くのに少し時間が掛かった。

「小学生の頃は、暇でしょうがなかったけどね」
「そうね・・・案外、することがなかったかも」

特に夏休みは、退屈だった。

「けど、高校生や大学生になると・・・」
「部活とかサークルとかで、普段と変わらなかったりする」

確かに言うとおりだろう。
私も、ほぼ毎日、学校に足を運んでいたような気がする。

「それはそれで充実してたけどさ」
「休みの有りがたさを分かってなかったのかも」

どうにも、いつもの友人らしくないセリフが続く。

「なにか・・・あった?」

友人でなくとも、年末になれば少しは神妙な気分になるからだ。

(No.812-2へ続く)

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[No.811-2]大人買い

No.811-2

「でも今更どうしたの?」
「たまたま、ネットを見てたら・・・」

その漫画と再会した。
懐かしさと最終回の興味から、ついリンク先をクリックしてしまった。

「つまり、通販サイト?」
「うん」

そこでは、全巻がセットで販売されていた。

「・・・で買ったわけだ」

大人と言えども気軽に買える金額ではなかった。
でも、無理な金額でもなかった。

「少し高めの服を買ったと・・・」

そう考えれば、納得できる金額でもあった。

「いわゆる“大人買い”ってわけね」
「まぁ・・・ね」

それが届いた日は一切外出せず、むさぼるように読み進めた。
まるで、失われた何かを取り戻すかのように。

「それって今だからできる大人の贅沢ね!」

金額的なものじゃない。
心の贅沢とでも言えばいいのだろうか?

「やっぱり、大人っていいねぇ~」
「まぁ・・・そうだね」

名前こそは“大人”だ。
だけど、やっている行為自体は“子供”のままだ。
S811
(No.811完)
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[No.811-1]大人買い

No.811-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これ・・・見てもいい?」

友人が漫画のコミック本を指差した。

「もちろん、いいわよ」
「ありがとう!懐かしいね」

私たちが子供の頃に、流行った漫画だった。

「最終回はこうなってたんだ!」

最終巻の最後のページを開いて見せた。

「そうだよ」

とは言うものの、私もコミック本を買ってから知った。

「当時は、飛び飛びにしか読んでなかったからね」

月刊とは言え、それを買ってまで読む余裕はなかった。

「私も同じ・・・もっぱら“立ち読み”だったわ」

だから、読み忘れることもあれば、読めない時もある。

「売り切れてたりしてたもんね」

時々、早々に売り切れることがあった。
そんなこんなが続くと、読む気が段々と薄れてきた。

「その内、フェードアウトみたいな・・・」

ストーリーへの興味どころか、漫画にも興味が薄れてきた。

「まぁ、お年頃にもなったしね」

漫画よりも、興味をひかれるものが出てきたからだ。

(No.811-2へ続く)

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ホタル通信 No.345

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.263 ナオちゃんタクちゃん
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

小説の通りではありませんが、これと似たことを経験したことがきっかけでストーリーが生まれました。

小説の設定では、幼馴染の二人となっていますが、実際のモデルは、高校生の時に付き合っていた二人で、別れてから久しぶりに再会した事実がもとになっています。
最初は、事実に沿って話を展開させていたのですが、小説のタイトルにもなっている、そのフレーズをラストに持ってきた時に、どうもしっくり来ませんでした。
別にドロドロした別れでもなかったわけですが、別れた二人の再会にしては、ちょっと距離感が近すぎたために、幼馴染の設定に変更しました。

設定こそ違えども、髪の色を変えた私、たばこをふかせる彼という描写は事実です。もうひとつ付け加えると、髪の色だけではなくパーマも掛けた私がそこに居ました。
S345
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[No.810-2]答えは近くにある

No.810-2

「間違って入ることもないだろうし・・・」

さっきも言ったように、登るしか手がない。

「どうする?」
「・・・そうね」

自力で入ったのなら、自力で出れると考えた。
でも、もし・・・。

「いたずらされたかも?」
「あり得なくもないわね」

フェンスの中に放りこまれた可能性がある。

「けど、どうやって出す?」

問題はそこだ。
フェンスをよじ登れば済むことだが、そう簡単には行かない。

「助けを呼ぼうか?」
「う、うん・・・」

そうしたい気持ちはあるが、あまり大ごとにもしたくない。

「もうちょっと考えて・・・」
「・・・えっ!?」

さっきまで中にいたはずの猫が私の足もとでじゃれついている。

「ど、ど、どういうこと!?」

その時だった。
風にあおられて、フェンスの一部がゆっくりと開いた。

「とびらぁ!?」
「そうみたい・・・よく考えたら、ないとおかしいよ」

猫に何かを教えられた、そんな気分になった週末だった。
S810
(No.810完)
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[No.810-1]答えは近くにある

No.810-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
フェンスの向こうに猫がいる。

「どこから入ったんだろう?」
「・・・そうよね」

友人の言葉に素直に反応してみる。
そのフェンスは建物の四方をとり囲んでいる。
加えて、2メートルほどの高さがある。

「まさか、登った?」
「かもしれないけど・・・」

猫にとってみれば、朝飯前なのかもしれない。
ただ、あまりそんな光景を見たことがない。

「どこかに、穴が開いているのかもよ?」

フェンスをマジマジと確認する。

「残念ながらなさそうね」

ということは、答えは必然的に決まる。

「やっぱり、登ったんだぁ!」

状況からそう判断せざるを得ない。
ただ・・・ひとつ疑問が残る。

「疑問?」
「うん、なんで登ったのかな?」

というより、なぜ中に入る必要があったのか・・・。

「・・・何もないわよね?」
「そうね・・・」

建物は民家じゃない。
何らかの設備を収納していそうな無機質な建物だ。
猫の興味をひきそうな物は見当たらない。

(No.810-2へ続く)

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[No.809-2]雨女の皆様へ

No.809-2

「・・・だろうね」
「でも、その中でも誰が・・・」

あまり好ましくない方向に話が進みだした。

「・・・私じゃないわよ」
「私なんか、雨女の中でも下の下」

自分で言っておきながら、何の根拠もない。
ただ、少なくともそうであって欲しい。

「そうかな?」
「私としては、上の中くらいだと思ってるよ」

友人の話もまた根拠がない。

「・・・根拠がない?」
「ちゃんとあるわよ」

まぁ、話半分として聞いておこう。

「それで・・・その根拠は?」

どうせ、たいした根拠ではないだろう。

「実は私も雨女なのよ」

予期せぬカミングアウトだった。

「私も今みたいなこと、たくさん経験したわ」

聞けば、今の私と同じ立場だったらしい。

「けどね、あなたと知り合ってから・・・」

何となく結末が想像できる。

「雨が降るタイミングが・・・」
「あなたのタイミングに変わったの」

S809
(No.809完)
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[No.809-1]雨女の皆様へ

No.809-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「偶然だとは思ってるんだけど・・・」

大袈裟だけど、数えきれないくらい何度も口にしたセリフだ。

「・・・だよね」

友人も私が雨女だということを認めている。

「さすがに、これはないよね?」

自分のことなのに、呆れ果ててしまう。
私が店から出た途端、雨が降り始めてきた。

「たしかに・・・今まで曇り空だったのに」

雨が降る可能性は十分あった。
本来なら単なる偶然で済まされるべきことだ。

「でも、なんでこういつもいつも・・・」

まるで見ていたかのようなタイミングで雨が降り始める。

「まぁそう言わずに・・・お陰で濡れずに済みそうだし」

そう言うと、バッグから折りたたみの傘を取り出した。

「・・・複雑な心境ね」

私のせいで雨に降られた。
一方では、それを見越して、傘を用意していた友人。

「あなたも持ってるんでしょ?」

もちろん持っている。
外出する際は、晴れの日だってバッグに忍ばせている。

「きっと全国で同じような会話をしてるんだろうね」

その可能性は十分過ぎるほどあるだろう。
私だけが雨女というわけではない。

(No.809-2へ続く)

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ホタル通信 No.344

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.256 どじょうがこいに
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この作品は、オチありきで作ったものです。どじょうが・・・の一連のフレーズから、先にオチが生まれました。

このフレーズを、どこの誰が言い出したのかは分かりませんが、時々、耳にします。くやしいほど、よく考えられたフレーズだと思っています。
実は、小説のきっかけはこのフレーズではなく、“愛おしい”という感情を小説にしたいと思ったからです。恋でも愛でもない、ましてや同情でもない・・・そんな不思議な感情をテーマにしました。
そんな時、例のフレーズを思い出し、それならば全て魚でなんとかならないか、と考えました。
“愛おしい”が、幻の魚と言われている“イトウ”で置き換えられたのは、単なる偶然でラッキーでした。

全体的には、自分で言うのも何ですが、パッとしませんね。オチだけはそこそこ仕上がっている関係で、そこに行きつくまで展開がプアです。
言い訳がましいですが、事前の構想もなく、約1時間の中で仕上げている関係で、ほぼ思い付いたまま書き上げています。
日常の会話に、小説のような起承転結があるわけでもなく、そんなアバウトさも感じて頂ければと思います。
T344
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[No.808-2]黄色いじゅうたん

No.808-2

「ちょっと、向こうまで走ってくるから!」

そう言うと、小走りで駆けだした。

「転ぶなよ!」

少し大きめの声で叫んだ。
彼女が振り向きざまに、大きく手を振ってきた。

「・・と・・」
「・・・えっ!?なに?」

立ち止まった彼女が何か叫んでいる。
ただ、遠くてうまく聞き取れない。

「・・・が・・とぅ」
「ぁり・・・・・ぅ」

何らかの言葉が断片的に聞こえてくるだけだ。

「だからぁ、なぁにぃ!!!」

思い切り叫んだ。

「・・・・」

でも、彼女の声は、もう僕には届かなかった。

「今までありがとう・・・」

黄色いじゅうたんは、ずっと向こうまで続いている。
彼女の姿は、もうそこにはなかった。
S808
(No.808完)
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[No.808-1]黄色いじゅうたん

No.808-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
イチョウ並木を歩く。
今しかできない贅沢な時間だ。

「まさしく黄色いじゅうたんだな」

圧巻の光景とはこのことだろう。

「・・・えっ!?なにか言った?」

僕より少し前を歩く彼女が振り返った。

「いや、だから黄・・・」

言いかけて止めた。
場の雰囲気がそうさせたのかもしれない。

「それにしても、サクサク音がするね」
「・・・音?」

そう言うと、その場で大袈裟に足踏みをして見せた。

「ほら!」
「あぁ、そういうことね」

色に圧倒されて、心地よい音まで気付けなかった。
確かに、サクサクと音がする。

「ずっと・・・向こうまで続いてるね」
「・・・そうだな」

まるで有名な絵画にでも出てきそうな風景だ。
その中に僕たちが居る。

(No.808-2へ続く)

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[No.807-2]解決したいこと

No.807-2

「別にのどは乾いてないけど・・・」
「まぁ・・・見てて」

一番説明しやすい物を探した。

「じゃぁ、いくわよ」
「えっ!?なになに・・・」

いつも通り、最初に“ガタン!”と大きな音がした。
続けて、ガチャガチャ・・・という連続音も。

「・・・その缶コーヒーがどうしたの?」
「じゃなくて、こっち!」

110円に対して、100円玉を2枚入れた。
当然、90円がお釣りで戻ってきた。
しかも、幸いなことに全て10円玉で。

「どういうこと?」
「・・・お釣り、取ってみて」

友人が、怪訝な顔で、返却口に指を入れた。

「そぉぉ!!それぇぇ!!」
「わぁぁぁ!!脅かさないでよ!?」

返却口に指を入れる姿が、どうも美しくない。
取り忘れがないか、ゴソゴソしている時は特に。
S807
(No.807完)
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[No.807-1]解決したいこと

No.807-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
常々、考えていることがある。

「なによ?年末に向けて仰々しい・・・」

年末が関係するかは別にして、一刻も早く解決したい。

「何だか穏やかじゃないわね・・・」
「まぁ・・・ね」

ついさっきも、それに向き合っていたところだ。

「誰かと会ってたの?」
「ううん、違う」

ただ、ある意味、対面はしている。
それも真正面から。

「・・・聞いても大丈夫な内容?」
「構わないわよ」

でなければ、自分から口にはしない。
逆に解決に向けて知恵を貸して欲しいくらいだ。

「じゃぁ、こっちに来て」

口頭で説明するより、見せたほうが早い。
丁度、近くにそれが置いてある。

(No.807-2へ続く)

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ホタル通信 No.343

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.316 さすらいの太陽
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

時々、歌をきっかけとして、小説を書くことがあります。書き方は大きく分けると、2パターンあります。

今回のパターンは、歌の世界観を利用して書き上げたものであり頻繁に使っています。ホタル通信のように“ネタばれ”させなければ、気付かれることもないでしょう。
一方、もうひとつのパターンは、歌の世界に入り込む・・・つまり、歌詞そのものを小説化していくようなものです。代表的な作品は「No.346 パッセージ」です。

さて、話を進めると、今回の小説はアニメの主題歌、それも相当古いアニメです。
私もそれをYOU TUBE以外では見たことがありません。昔らしいと言えば語弊があるかもしれませんが、子供が見るにはとても重い内容のアニメです。ただ、オープニングもエンディングも内容に通じる世界観を持っており、ある意味、硬派なアニメです。このアニメをたまたま目にし、いずれこの世界観をテーマにした小説を書こうと決めていました。

ところが、書き始めて見ると、そのアニメほど重い話にならず、逆にややコミカルな部分も含まれました。
これ自体はよくあることで、小説の展開は創作している人が決めるのではなく、あくまでも登場人物が決めるものと位置付けています。
私が、"こんな展開にしたい”と考えるのではなく、“今、会話している2人ならこうなるだろう、こうするだろう”との視点です。
T343
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[No.806-2]ヘアピン

No.806-2

「小さい頃、これで耳かきしてもらってたんだよね」
「してもらってた?お母さんに?」

雰囲気が耳かきに似ていないこともない。

「あぁ」
「危なくない!?」

むしろその逆だ。
丸みを帯びているので、肌触りも悪くない。

「色々な意味で気持ちよくて」

耳かきの気持ちよさと、母のひざ枕の安心感。

「それが叶うことは、もうないけどな」
「・・・それって、私に求めてる?」

別に、そんな意味を含ませたわけじゃない。

「私なら別に構わないけど?」

今年を締めくくる、最高の出来事になりそうだ。

「じゃ、いくわよ」
「・・・い、い痛ぁぁぃぃ!!!」

先に、ヘアピンの“向き”を言うべきだった。
S806
(No.806完)
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[No.806-1]ヘアピン

No.806-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「そんな趣味があったとは・・・」
「どんなだよ!?」

とは言え、勘違いを招いたのは僕のせいだ。

「だって、そんなにマジマジと見てるから・・・」
「・・・だよな」

それにしても、正式な名前があるのだろうか、これに・・・。

「ヘアピンだよな?」
「そうよ」

昔からある、ごく普通のやつだ。

「特別な名前・・・あるの?」
「えっ・・・どうだろう」

名前が知りたいわけじゃない。
ただ、名前がないと話が進めにくい。

「とりあえず、ヘアピンでいいんじゃないの?」
「じゃ・・・まぁ、とりあえず・・・」

幸いにも現物がある。
これがないと、相手に伝えるのが途端に難しくなるだろう。

(No.806-2へ続く)

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[No.805-2]触れていたい

No.805-2

当時、カラフルな色の手袋をしていた。
原色と言うより、蛍光色と言ったほうが良いだろう。

「流行だったかどうかは覚えていないけど」
「結構、みんなしてたな」

それに値段がかなり安かったように記憶している。
具体的な金額は覚えていないが。

「今思えば、手袋と言うより軍手に近かったかも」

その割には、耐久性はイマイチだった。
かなり、頻繁に買い換えていた記憶もある。

「ただ、安かったから」

高校生のお小遣いでも負担にならずに済んだ。

「じゃぁ、当時を思い出してして見れば?」
「よせよ、恥ずかしい・・・」

色もさることながら、年齢に相応しい品が必要だ。

「そんなことを言う歳になったんだ?」
「まぁ・・・な」

大袈裟だけど、年末を前に少し感慨深くなった。

「でも、なんで今はしないの?」

話を振り出しに戻してきた。

「だから、習慣・・・」

いや、違う・・・。

「直接、君に触れていたいからだよ」
T805
(No.805完)
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[No.805-1]触れていたい

No.805-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・手袋は?」
「まだ、早いだろ?」

それよりも、そもそも手袋の習慣がない。
それに、ポケットに手を突っ込んでおけば何とかなる。

「私なんか見て見て!・・・ほら!この通り!」

単にそれを見せびらかしたいだけだろう。
たた、これに関しては、嬉しくもあるが・・・。

「そんなにはしゃぐなよ・・・」

その手袋は、僕がプレゼントしたものだった。

「照れ屋なんだからぁ!」

と言うより、恥ずかしいだけだ。

「暖かいよ、これ」

それはそうだ。
かなり吟味して買った。

「あなたも手袋すれば?」
「だから、そもそも習慣が・・・」

とは言え、高校を卒業するまではしていたことを思い出した。

「じゃ、すれば?」
「当時は自転車通学だったから・・・」

さすがに、素手ではきつかった。

「ただ・・・」

手袋で思い出したことが、もうひとつあった。

(No.805-2へ続く)

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