[No.802-2]僕らの鉄工所
No.802-2
「・・・だから、懐かしいな・・・と」
地元を離れた数年後に、廃業したらしい。
「その鉄工所は、僕らにとっては宝の山だったからね!」
「これに、そんな思い出があるとは・・・ね」
僕自身も意外だった。
思い出と言うほど、大切にしてきたつもりはなかったのに。
「正直、忘れてたくらいだよ」
「でも、思い出ってそんなものじゃない?」
確かにそうとも言える。
この金属クズが、思い出の引き出しを開けるカギになった。
「上手いこと言うわね!」
何となく、カギにも見えなくもない。
「多分、あそこの工場からだろうね」
目線の先に、小さな町工場が見える。
「そうだな・・・転がってきたんだろうな」
形が形だけに、そう考えるのが妥当だろう。
「どうするの、これ?」
拾ったものの、どうしていいか対応に困る。
捨てるのも忍びないが、今の自分には“不要”な物だ。
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