[No.802-1]僕らの鉄工所
No.802-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「これ何だか分かる?」
目の前に落ちていた、それを拾い上げた。
「何かの金属片だよね?」
「まぁ・・・大きく捉えるとそうだね」
欠片と言うより、正確には金属クズになるだろう。
クルクルと、らせん状になっているのが懐かしい。
「・・・懐かしい?」
「あぁ、子供の頃、よく集めてた」
子供の頃のよくある話だ。
特に意味も無い物を、意味も無く集める。
この金属クズもそのひとつだ。
「それって、結局何なの?」
何の変哲もない、金属の削りかすだ。
多分、金属を削ったりした時に出てくるのだろう。
「実家の近くに、鉄工所があって・・・」
その前を通ると、よくそれが落ちていた。
「何に使うの?」
「だから、さっき言ったように、意味はない」
キラキラと輝くらせん状の金属に、何となく価値を感じていた。
「まぁ・・・子供らしいと言えば子供らしいけど・・・」
ただ、その鉄工所はもうない。
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