[No.801-2]近付けば近付くほど
No.801-2
「ただね、皆とは壁を感じたな・・・」
会場に来ていたほとんどの人は地元に残っていた。
私のような“流出組”は数える程度だった。
「なんで?」
「だって、地元のこと・・・何も知らないんだもん・・・」
記憶は高校生で止まっていた。
「ほら、社会に出て、飲みに行ったり・・・」
そんなこんなで、地元についてもっと詳しくなる。
「・・・かもね」
「まぁ、会場に着く前に分かっていたことだけど」
それは普通電車に乗った時から始まっていた。
「電車?・・・どういう意味?」
同僚が不思議そうな顔をしている。
「だって、地元に近付けば近付くほど・・・」
知らない地名であふれていた。
「地元に残ってたら・・・と思うとね」
少し寂しい気がする。
「でも、“ここ”は詳しくなったでしょ!?」
「そ、そうね!」
同僚も流出組のひとりだ。
地元に拘らなくても、住み着いた土地を愛すればいい。
(No.801完)
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