[No.798-2]210円の切符
No.798-2
「半年前かな・・・」
今日のようなシチュエーションを目撃した。
電車を降りた女性に、高校生の女の子が声を掛けた。
「“切符、落としましたよ”ってね」
「そしたら・・・」
その女性は“私のじゃない”と足早に去って行った。
「事実なんだから、その女性を責められないけど」
その女の子は何ともバツが悪そうに席に戻った。
「褒められるべき行為なのに」
車内には微妙な空気が漂った。
「・・・だよね」
「意外に尾を引くのよね・・・こんな経験」
これからは落ちている切符を見つけても躊躇するだろう。
「だから、私は受け取ったの」
「・・・私のじゃなくても」
彼女たちの行為をムダにしたくない。
それに親切心がないのは、むしろ私達“大人”のほうだ。
「210円の切符だけど」
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