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[No.790-2]最後の100メートル

No.790-2

「なに、びっくりしてるのよ」
「経験者なら、そう言うでしょ?」

大袈裟だけど、400メートルには魔物が棲んでいる。
それも、最後の100メートルに。

「私も何度か、魔物に襲われたわ」

200メートルなら全力を出し切ったところでゴールできる。
でも、400メートルになるとそうはいかない。

「俺なんか、いつもだったよ」

300メートルを越えたあたりから、急激に失速する。
前半、飛ばし過ぎれば、それは顕著に現れる。

「その力加減が難しいのよね」

後半に備えて力をセーブし過ぎると、上位には食い込めない。

「それに、雰囲気もあるし」
「そうね、飲まれちゃうと言うか・・・」

独特の高揚感に襲われる。
だから、力をセーブすることの方が難しいと言える。

「最後の100メートルは息も絶え絶えで・・・」
「・・・足も上がらない」

その必死の形相は、彼や彼女には見せられない。
それこそ100年の恋も冷めかねないからだ。

「そう?私は逆に、それで付き合うようになったんだけど」
S790
(No.790完)
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