« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »

2017年10月

[No.798-1]210円の切符

No.798-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ICカード・・・だよね?」
「そうだよ」

友人がおそるおそる聞いてきた。

「しつこいけど、“今も”だよね?」
「そうよ」

友人がなぜしつこく聞いてくるのか、理由は分かっている。

「だったら・・・さっきの・・・」
「別に彼女たちをだましたわけじゃないからね」

さっき、高校生らしい女の子二人組に声を掛けられた。
電車から降りた直後に。

「けど、その切符、あなたのじゃないでしょ?」
「もちろん!だってICカードだもん」

彼女達からこう声を掛けられた。
“切符を落としましたよ”と。

「だったら、その切符、どうするつもり?」
「とりあえず、駅員さんにでも届けておくわ」

友人が何か言いたそうだった。

「“なぜ違うと言わなかったの?”・・・なんて顔ね」
「だってそうなるでしょ!?」

これにはちゃんとした理由がある。

(No.798-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.797-2]避けるのが上手い

No.797-2

「目の前の弾を避けるだけじゃなくて・・・」

彼がテクニックを語り始めた。

「避けた先の先も見据えておかないと」
「・・・追い詰められるんでしょ?」

彼が驚いた顔をしている。

「・・・詳しいな?」
「あれ、話してなかった?」

ゲームは男性だけのものじゃない。

「ゲーマーなの?」
「その昔ね」

今は、スマホでぬるいゲームをたしなむ程度だ。

「・・・とか、得意だったわ」

さらに彼が驚きの表情を見せた。

「今度、一緒にゲーセンに行かない?」

シューティングゲームには、もうひとつ上達するものがある。

「いいわよ」

たった今、彼は私に撃墜されたのだ。
S797
(No.797完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.797-1]避けるのが上手い

No.797-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「へぇ~、運動神経がいいのね」
「まぁ・・・な」

すれ違う人波を、器用に避けて歩いている。

「よくぶつからないわね!?」

サッカー選手がドリブルで敵陣を突破するのに似ている。
大袈裟な表現だけど。

「得意なんだよ、こんなこと」
「何かスポーツでもしてたの?」

身のこなし方は、なかなかのものだ。

「いいや・・・でも、今はスポーツかもな」
「・・・今は?」

彼が、その理由を話してくれた。

「昔からシューティングゲームとか得意でさ」

簡単に言えば敵に撃墜されないようにするゲームだ。

「だから、避けるのが上手くなった?」
「あぁ、それは間違いない」

確かに、通ずるものはあるだろう。
弾幕を避けるには、相当のテクニックがいる。

(No.797-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.338

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.314 ファースト・イベント
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

ほぼ100%実話で、セリフも完全とは言えませんが、忠実に再現してみました。

本題に入る前に、前々回のホタル通信「No.336」を、ご確認頂ければ幸いです。これは小説「No.278 群れの外」の舞台裏を紹介したものです。
今回ご紹介する小説とNo.278は、関連性があります。一部、マッチしない部分もありますが、登場する女性は同一人物です。

実話度100%なので、読んでいただいた通りです。
パソコンの件で彼女の印象がガラリと変わりました。別にそれ自体ショックというわけではありませんでした。それよりもこれを期に彼女が語る過去に大きな衝撃を受けました。
この衝撃については、小説でもホタル通信でも何度か紹介しています。とにかく、この小説はある意味、ふたりの関係のターニングポイントになりました。

今思えば“ファースト・イベント”よりも“ターニング・ポイント”の方がタイトルとしては優れていたのかもしれませんね。
ただ、ふたりの間にあった他人行儀な距離感が、グッと縮まることになった出来事でした。そのため、記念日的な意味合いを込めて、ファースト・イベントとタイトルを決めた記憶があります。
T338
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.796-2]上には上がいる

No.796-2

「・・・悲劇?」
「あぁ・・・」

僕の速さは、陸上部では“普通以下”だった。
ハッキリ言えば、一番遅い。

「これくらいなら、まだいいけど・・・」

本当の悲劇はこの先にあった。

「地区の大会に出た時なんて・・・」

それこそ、全員の中でも一番遅かったかもしれない。
予選落ちどころか、本来なら予選すら出れるレベルじゃない。

「厳しい世界ね・・・」
「あぁ、自分の実力を痛感したよ」

世の中、上には上がいる。
自分が一番上なんて、よく考えなくてもあるはずがない。

「クラブ活動は続けたの?」
「あぁ・・・それでもちゃんと3年間続けたよ」

大きな成果は出なかったけど、それなりに速くはなった。

「世の中、誰もがそうじゃない?」
「・・・そうかもな」

そして、そこから新たな一歩を踏み出すのだ。
S796
(No.796完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.796-1]上には上がいる

No.796-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
小中では、いつもクラスの代表だった。

「へぇ~、すごいじゃん!」

スポーツ万能ではなかったが、とにかく足だけは速かった。

「クラス対抗戦では、いつもアンカーでさぁ」

そのため運動会では大いに目立つことができた。
リレーのアンカーは運動会の花形とも言える。

「随分、もてたでしょ?」
「まぁ・・・な」

年中・・・ともまではいかないが、運動会シーズンはもてた。

「陸上部に入っていたの?」
「いいや」

小中と、陸上部には所属していなかった。
ほかのスポーツ部にも・・・。

「じゃぁ、天性のものね」
「良く言えば、そうなるかな」

これを生かさない手はない。

「・・・で、高校の時、陸上部に入ったんだよ」

そして、悲劇はここから始まった。

(No.796-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.795-2]三部作

No.795-2

「これで、二つ目ね」
「なにが?」

この時期の風物詩と言えば良いのだろうか?

「キンモクセイの香り・・・そして、この虫・・・」

これらはほぼ同時にやってくる。

「これで三部作のふたつが出揃ったわけね」
「・・・三部作?」

友人が何とも不思議な表情をしている。

「・・・ということは、もうひとつあるんだよね?」
「もちろん!三部作というくらいだからね」

それが何だか分かっていない・・・そんな表情も加わった。

「ちなみに、残るひとつはあなたのことよ?」
「えっ!?わたし?」

やはり気付いていないようだった。
私にとってみれば、風物詩以上の風物詩だと思っている。

「なに、なに!?」
「そろそろ、物色を始めるころでしょ?」

クリスマスに向けた友人の物色が始まると三部作は完成する。
S795
(No.795完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.795-1]三部作

No.795-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・もう、そんな季節なのね」

友人の唐突なセリフだった。
でも、唐突になる理由は理解できる。

「そうよねぇ・・・」

姿は見えなくとも、どこかで咲いているのは間違いない。
あの独特の香りが漂っているからだ。

「でもさぁ、毎年、同じこと言ってない?」

確かに、この香りを嗅ぐと、つい口から出てしまう。

「逆に言わずにはいられないでしょ?」
「まぁね」

この香りに限らず、この時期、色々なイベントが始まる。

「あいつらも出てきたわよ」
「・・・あっ!ほんとだ」

蚊ような小さな虫がアチコチ飛び交っている。

「けど、まだマシな量ね」

通り過ぎるのをためらうくらい、大量に飛んでいることもある。

(No.795-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.337

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.282 友だちの鏡
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

私がよく言う“商業的な小説”の匂いがしますが、実話度はそこそこ高めです。

全ての原因が仕事にあったわけではありませんが、いつも難しい顔で眉間にシワを作っていたのは小説の通りです。これを自分では気付かず、他人に指摘されて気付いたのが、小説のきっかけとなりました。
小説の後半まで「いったい何の話をしているのか」隠した状態で話を進める、冬のホタルではよく使っている手法です。
前述した通り、眉間のシワに関することは事実ですが、会話についてはほぼ創作です。いきなり、眉間のシワを指摘する話の展開よりも、やや面白おかしくした方法で、読み手の興味を惹こうと考えました。

前半、私は友だちに何を言われたか、想像できますか?
難しくない問い掛けだと思いますが、小説では描いていない真相はこうです。
私は友だちに「顔にシワがあるわよ」と言われます。私が、そこそこの年齢ならそんなに驚きもしないのでしょうが、年齢的に、20歳半ばくらいの設定にしているので、慌てて化粧室に飛び込んで、鏡を覗き込むことになります。

眉間のシワは一時的なものであったとしても、本来はない方が良いものです。友だちはそれを見かねて、ユーモアを交えて私を助けてくれた・・・というお話でした。
T337
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.794-2]あなた達の関係は?

No.794-2

「結構、鳴き声が似てたわよ」
「・・・あのね」

なかなか話を軌道に乗せられない。

「で、何よ?」

友人から軌道に乗せてきた。

「ほら、会社の近くに公園があるじゃない?」

比較的、大きな公園だ。。
そこに、猫が数匹、住み着いている。

「時々、見かけるわね」
「まだら模様と言えばいいのかな?」

黒やこげ茶などのまだら模様で、見るからに雑種と分かる。

「彼らは、親子なのかな?」

大きさも同じくらいだ。
模様は同じでも、大きさからは親子とは断言しにくい。

「どうだろう・・・血のつながりはありそうだけどね」
「模様からするとね」

どんな関係であろうが、人間がそれを知る術はない。

「なにさ・・・猫が不倫してるとでも言いたいの?」
「ま、まさか・・・」

でも、本能のまま生きれたら・・・と思うことはある。
S794
(No.794完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.794-1]あなた達の関係は?

No.794-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
言葉の使い方は間違っているが、世は“不倫”ブームだ。

「あなたはどうなの?」
「・・・な、わけないじゃん!」

ただ、未遂ならある。
こればかりは、友人にも話していない。

「でも、急になによ?」
「好きになった人が既婚者とか?」

“相談に乗るよ!”と言う顔がうそ臭い。
とにかく、早めに話を軌道に乗せた方が良いだろう。

「私のことじゃなくて・・・」
「それなら誰?」

誰でもない。
ただ、生き物である点だけは合っている。

「猫よ・・・ね、こ!」
「そんな人、居たっけ?」

話題の振り方がマズかったのかもしれない。
“不倫”という言葉を出してしまったからだ。

「・・・だから、ねこ!ニャーニャーの!」
「そんなに必死にならなくても、分かってるわよ」

どうやら、からかわれたらしい。

(No.794-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.336

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.278 群れの外
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

初期の作風が色濃く出ている作品です。ある意味、読み手のことは全く考えていません。

先に事実となる部分を書いておきます。まず、鳩が一羽だけウロウロしていることがあること、そして、小説上の私(女性)が、その昔、群れの外に居たことです。
時々「なんでこんな所に居るの?」と思ってしまうほど、場違いな所で鳩を見かけることがあります。
多くの人は、それを見て心情的に何も感じないと思いますが、私は違っていました。私にとっては、高校の時に周囲から浮いた存在であったことを思い出させる象徴でした。

今で言う“イジメ”があったわけではなく、周りと馴染めず、ひとり群れの外・・・といった感じでした。周りもそれを察してか、良くも悪くも一定の距離がありました。
色々と事情があって、どうしても学校生活を楽しむことができませんでした。普段、鳩は群れているイメージが強いために、一羽だけウロウロしている姿を見掛けると、どうしても自分と重ね合わせてしまいます。

最後になりますが、この記事を書いている人を作者だとすれば、作者と小説上の“私”は別人です。つまり、この小説は作者自身ではなく、他人の話を描いたものです。
当ブログによくお越し下さる方々なら、誰のことを描いた小説かすぐ分かると思います。
T336
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.793-2]一本の糸

No.793-2

「多分、手紙だったと思う」
「・・・手紙?」

とは言え、本格的な手紙ではない。

「ほら、友達同士で回すアレよ」
「・・・あぁ、アレね!」

でも、ひとつ疑問が残る。
手紙だとしても、彼にどうやって渡していたのだろう。
郵送していないことは確かだ。

「私、ちょっと思い出したんだけど・・・」

友人が何やら話しはじめた。

「最初の1通は、何らかの方法で渡して」
「その後の約束は手紙に書いてあったと思う・・・」

私も思い出してきた。

「そう言えば、そうやって会う日を決めたかもしれない」

曜日や時間、場所さえも・・・。

「私もそうかもしれない」
「その時に、また手紙を渡して・・・」

そして、次の約束を確認する。
私達にとって手紙は、いつ切れるとも限らない一本の糸だった。
S793
(No.793完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.793-1]一本の糸

No.793-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
振り返ると、とても不思議なことがある。

「たしかに、そうね」

同窓会では昔話に花が咲く。
加えて、必ず恋愛話に発展して行く。

「でしょ!?」

私たちの高校は女子校だった。
だから、ふたりとも彼氏は他校にいた。

「電話で連絡を取り合っていた記憶がなくて」
「・・・私も」

今のように、携帯もメールもない時代だ。
あったのは、いわゆる“黒電話”だった。

「高校生にはハードルが高かったよね?」

特に、彼氏が彼女に電話する場合は。

「・・・私も数回しか話した記憶がない」

それでも、学校帰りに何度となく一緒に帰っていた。
その時、どうやって連絡を取り合っていたのだろうか?

「そうよね、特別な日ならともかく・・・」
「日常的な連絡って、ほんとどうやってたんだろう・・・」

ただ、なんとなくある記憶が残っている。

(No.793-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.792-2]思い出のブルーハワイ

No.792-2

「でも休みが取れてよかったよね!」

ダメもとで上司に休暇を申請してみた。
それが意外にアッサリと、取得することができた。

「・・・絶対無理だと思ってた」
「だからなおさら、思い出に残ったのかもね」

ある意味、心置きなく休暇を楽しめた。

「また行きたいね」

“また”どころか何度でも行きたい。

「でも、しばらくは無理ね」
「・・・だね」

もちろん、ゴールデンウィークとかに行けないわけじゃない。
ただ、費用もかさむし、人も多過ぎるだろう。

「次、行ける日を夢見て、頑張るしかないね!」
「いつになるかわかんないけど」

きっと仕事の原動力になるだろう。

「もっと、違うものを原動力にすれば?」
「それもそうね」

ふたりして大笑いした。

「まぁ、今は雰囲気だけで我慢するわ」

軽快なウクレレの音楽と共に、ランチを楽しんだ。
S792
(No.792完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.792-1]思い出のブルーハワイ

No.792-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「もう、一年たったんだぁ・・・」
「・・・そうね」

去年の今頃、友人とハワイを旅行した。

「ついこのあいだ行ってきたみたい」
「私もそう・・・それこそ数週間前に行った気がしてる」

海外旅行の経験はそこそこある。
けど、今までこんな感覚になったことはない。

「そうなんだよね」
「記憶が一向に古ぼけない」

むしろ、日を追うごとに新鮮になってきている。

「不思議ね・・・」
「行く前はお互い乗り気じゃなかったのに」

別に、何でも良かった。
仕事や人間関係に疲れた末の行動だった。

「ほんと、そう・・・」

それでも、非日常が一番のくすりだと考えた。
そのひとつの答えが海外旅行だった。

「二人とも、行ったことがなかったからね」

一番ポピュラーなはずのハワイに行ったことがない。
それも決め手のひとつになった。

(No.792-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.335

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.252 ひざのぬくもり
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

小説のようなシチュエーションが少なくありません。気付くのが遅れて、ビックリすることもあります。

経験上、猫はくぼんだところが好きなようです。私が寝ている時布団の上に乗っかってきて、両足の間に入り込むこともあります。
猫の種類や育った環境にも左右されるかもしれませんが、狭いところや窮屈なところが好きですね。それに、そんな場所を見つける天才でもあります。

さて、そんな猫とのふれあいを描いた小説です。基本的に動物になつかれることが多く、小説のような他人に厳しい犬や猫でも仲良くなれます。
もちろん、100%仲良くなれるわけではありませんが、少なくとも敵対心は持たれずに済みます。

小説では彼と彼女の・・・ようなシチュエーションにしていますが、実際はそんな色気のある話ではなく、仕事中のひとコマを切り取ったものです。
私があるお客様の家にお邪魔して仕事をしていたら、猫が寄ってきた・・・というのが事実です。従って、ラストの一言は、もちろん、創作です。
T335
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.791-2]学生二枚

No.791-2

「もちろん、親に連れて行ってもらったことはあるけど」

“自力”では始めてとなった。

「とりあえず、チケットを買わなきゃならない」
「・・・でも、売り場が分からなくて」

今みたいにネットでアレコレ調べられる時代ではなかった。
だから、どこに売り場があるか分からなかった。

「映画館はビルの3階にあったんだよね」

けど、てっきりビル全体が映画館だと思っていた。
だから・・・。

「1階の受付みたいな所で・・・」
「学生二枚・・・と」

受付嬢のキョトンした顔を今でも覚えている。

「・・・それは恥ずかしい」
「だろ?そこから先は・・・覚えてない」

映画を見た記憶はあるが、何の映画だったか覚えていない。

「普段から硬派を気取ってたからさぁ」

知らなかっただけとは言え、人には見せたくない姿だった。

「学生・・・二枚って言ったよね?」
「・・・そうだけど?」

アレコレ聞かれるはめになった。
S791
(No.791完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.791-1]学生二枚

No.791-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
思い出すと今でも恥ずかしくなる出来事だった。

「ほんと、便利になったよなぁ~」

“しみじみ感”を出し過ぎたのが原因だったのかもしれない。

「その昔、なにかあったの?」

すぐに食い付かれた。
それに的を得ている質問だ。

「いや、ほら、なんだ・・・」
「ネットでもチケットが買えるだろ?それに・・・」

こうして無人の機械からも買える。

「昔はこうはいかなかっただろ?」
「確かに、今とは雰囲気が違う窓口で買ってたわね」

窓口と言っても今のようなオープンなスタイルではなかった。

「学生の頃は緊張したなぁ」

独特の雰囲気にのまれていた記憶がある。

「・・・それで?」
「あぁ・・・ええと・・・」

高校生の時、初めて映画館に行った時の話だ。

(No.791-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.790-2]最後の100メートル

No.790-2

「なに、びっくりしてるのよ」
「経験者なら、そう言うでしょ?」

大袈裟だけど、400メートルには魔物が棲んでいる。
それも、最後の100メートルに。

「私も何度か、魔物に襲われたわ」

200メートルなら全力を出し切ったところでゴールできる。
でも、400メートルになるとそうはいかない。

「俺なんか、いつもだったよ」

300メートルを越えたあたりから、急激に失速する。
前半、飛ばし過ぎれば、それは顕著に現れる。

「その力加減が難しいのよね」

後半に備えて力をセーブし過ぎると、上位には食い込めない。

「それに、雰囲気もあるし」
「そうね、飲まれちゃうと言うか・・・」

独特の高揚感に襲われる。
だから、力をセーブすることの方が難しいと言える。

「最後の100メートルは息も絶え絶えで・・・」
「・・・足も上がらない」

その必死の形相は、彼や彼女には見せられない。
それこそ100年の恋も冷めかねないからだ。

「そう?私は逆に、それで付き合うようになったんだけど」
S790
(No.790完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.790-1]最後の100メートル

No.790-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「陸上部だったの!?」
「言ってなかった?」

話の流れで学生時代のクラブ活動の話題になった。

「てっきり文科系だと・・・」
「それ、ほめてるの?」

その質問には答えにくい。
ただ、少なくともけなしてはいない。

「その、ほら・・・お嬢様に見えたからさぁ・・・」
「ふ~ん」

少なくとも喜んでいる表情ではない。
早く話をもとに戻した方がよさそうだ。

「ちなみに、短距離だったよ」
「俺もそう!」

幸いにも彼女から話をもとに戻してくれた。

「400メートルは?」
「もちろん、走ったわよ」

それなら話が早い。
あの苦しみも分かってくれるだろう。

「それなら・・・」
「最後の100メートル?」
「えっ!?そ、そうだけど・・・」

彼女の口から先に出るとは思っていなかった。

(No.790-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年9月 | トップページ | 2017年11月 »