[No.789-1]今でも変わらない
No.789-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「ねぇ、子供の頃の夢ってなんだった?」
「・・・なりたかった職業ってこと?」
彼女が首を大きく縦に振った。
「何だよ、唐突に・・・」
「覚えてないの?」
“私は覚えています”という表情が憎らしい。
「ちゃんと覚えてるよ」
「定番だけど動物園の飼育員になりたかったんだよね」
生き物が好きという単純な理由からだった。
小学校では飼育係を務めていたこともあった。
「意外だね?」
「・・・なんだよ、その“意外”って」
生き物の世話する姿が想像できないとでも言いたいのだろうか。
「小学生になったら気が変わったんだ?」
「・・・気が変わる?」
彼女が意味深なことを聞いてきた。
何かを知っているような口ぶりだ。
「昨日、押入れを整理してたら・・・」
そう前置きした後に、僕の目の前でそれを広げて見せた。
「・・・なにこれ?」
「卒園する時の、メッセージカードみたいなものかな?」
そこには僕と彼女が写った写真と共に、将来の夢が書かれていた。
「よく持ってたよな、こんなの!?」
「まぁ、別に大切にしてたわけじゃないけどね」
そっけなさは、小さい頃から変わっていない。
(No.789-2へ続く)
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