[No.785-2]例えようがない
No.785-2
「何だろうね?」
意識して、周囲の匂いをかいでみた。
でも、やはり匂いはしない。
「その家・・・だよね?」
「あぁ、たぶん」
お世辞にも新しくないけど、それなりの歴史を感じる。
建物の歴史と言うより、人の歴史だ。
「おばあちゃんの家に似てる」
怪しまれない程度に、家の奥を覗く。
昼間だと言うのに、薄暗く独特の“うっそう感”が漂っている。
「確かにそんな感じね」
ただ、それが逆に自然体なんだ。
開けた窓から入る風との組み合わせは、最高の昼寝環境だった。
「わかるわかる!」
「だろ?」
今更ながら、このタイミングで思い出した。
「・・・話が関係のない方向に進んじゃったな」
「いいんじゃない?」
残念ながら、もう家はない。
住む人も居なくなっため処分した・・・そう母親から聞いた。
「残念ね・・・」
「でも、こうして、おばあちゃんの家の匂いをかい・・・」
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