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[No.783-2]手の温もり

No.783-2

「小さい頃、近所に子犬が捨てられてて・・・」

ただ、その日は土砂降りの雨だった。

「見るに見かねて」

さすがに家には連れて帰れなかった。
だから、せめて雨に当たらないようにと・・・。

「人目に付きにくい所に大きな土管があって」

子供なら立ったままでも悠々と入れる大きさだった。

「・・・そこに連れていったんだ?」
「うん・・・」

子供らしい素直な行動だった。
けど、時々思い出すことがあった。

「人目に付かない場所・・・だから?」
「うん、誰にも拾われない可能性がある」

私の行動で子犬の死期が早まってしまうこともあるだろう。

「だから、セミも」
「カラスとかの格好の餌食になっちゃうかな・・・と」

元気なら逃げることも可能だろう。

「そのまま床に転がっていたほうが・・・」
「そうかな?あなたの手の温もりで癒されたと思うよ、きっと」

そう言うと、私の手を握りしめてきた。
S783
(No.783完)
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