[No.777-2]ライバル出現
No.777-2
「だから、今、不思議な気持ちなんだよね」
私はそんなに桃が好きではない。
桃に限らず、果物が全般的にだが。
「独占できるから?」
「あぁ・・・嬉しいような悲しいような」
小さい頃は、お腹一杯食べたい欲求があったのだろう。
けど、今はそれを実現できている。
「・・・そうね、わかる気がする」
「まぁ、贅沢な悩みかもしれないけど」
満たされてしまうと、冷めてしまうことがある。
これもそれと良く似ている。
「“足りないくらいが丁度いい”のかもな」
そう言うと、またひとつ桃を口に運んだ。
「ほんとに好きね」
「言ったろ?嫌いな果物は無いって」
私がそんなに食べない分、ほぼ彼が独占できる。
でも・・・。
「さっき、足りないくらいが・・・なんて言ってたじゃない?」
「あぁ・・・それがどうした?」
良い機会だ。
この際、言ってしまおう。
「もう少ししたら、足りなくなるかもよ?」
「・・・どういう意味?」
彼が不思議そうな顔をする。
「取り分が少なくなるってこと!」
「それって・・・もしかして・・・」
(No.777完)
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