[No.774-2]ひまわりとセミ
No.774-2
「ほら、見てん・・・」
「・・・セミだよね?」
多分、死んでいる。
ひっくり返ったような体勢で、ピクリとも動かないからだ。
「まだ、夏が始まったばかりやのに」
対照的だった。
どちらも、夏の代表的な風物詩だ。
「ひまわりはいきいきしてるのにな」
一方、セミはその短い生涯を終えた。
「悲しいね」
そう言うと、拝むかのように手を合わせた。
つい、僕もそれにつられる。
「これでよし!」
そう言うとその場から立ち上がり、ひまわりを見つめる。
「セミの分も生きなあかんで!」
ひまわりの茎を小突いた。
「・・・だよな!」
彼女は、かつてそのセミだった。
けど、今はひまわりとして生きようとしている。
(No.774完)
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