[No.765-2]消えてしまいたい~風~
No.765-2
「ごめん・・・今更、こんなこと聞いて」
彼女に、辛い記憶を思い出させることになった。
「別にかまわないよ」
「逃げたってしかたない・・・事実だもん」
当時は、聞こうにも聞けなかった。
「ごめんな、一番つらかった時に」
「仕方ないよ、だってほら・・・」
彼女の言いたいことは分かっている。
「触れれば、壊れそうだったからでしょ?」
「う、うん・・・」
そんな時、あの言葉を聞いた。
「消えてしまいたい・・・か」
振り返るようで思い出すようなそんな表情だった。
「それでも・・・ね」
急に声のトーンが変わった。
「消えたとしても、あなたのそばに居たかった」
「・・・この風のように」
彼女と初めて出逢った海沿いの道を歩いている。
時より激しく吹く風に、僕達は肩を寄せ合った。
(No.765完)
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