[No.764-1]やさしい人
No.764-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「・・・あっ!」
気付いた瞬間、天と地が数回、入れ替わった。
「どうしたの!?その傷・・・」
本当は隠したかった。
けど、隠せるほど小さなものではなかった。
「・・・自転車で転倒しちゃって」
特に左腕を擦りむいてしまった。
「痛そうね・・・」
「まだ、ヒリヒリするよ」
幸いにも大きなケガには至らなかった。
けど、すりキズや打撲は残った。
「石ころでも踏んづけたの?」
「ううん・・・そうじゃないんだけど」
理由を言うべきか迷う。
「じゃぁ、なに?」
「まぁ、ハンドル操作を誤ったから・・・かな」
嘘は付いていない。
結果的にそうなったからだ。
「どうせ、朝からボーと、してたんでしょ?」
「そ、そんなとこかな・・・」
これで話が終息するのであれば、我慢も必要だ。
「・・・追及もここまでにしておくよ」
時より、痛そうな表情をワザと見せ付けてやった。
追求の手が休まることを期待して。
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