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2017年6月

ホタル通信 No.324

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.284 プラタナスの道で
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

う~ん・・・なんとも言えない微妙な作品ですね。その微妙感の理由はとても簡単です。

小説に、ある歌詞が出てきていますが、この歌詞のタイトルは「夏の微笑」という荻野目洋子さんの曲です。その歌詞の一部を小説のタイトルにしています。
正しくは、小説を作ってタイトルを付けたのではなく、タイトルを決め、そのタイトルから小説を創作しました。そのため、実話度は限りなくゼロです。
とは言え、この曲を初めて知った時、この歌詞に共感できるというか・・・同じようなことが起こっていました。そのため、感情移入が激しく、とても印象深い一曲として、心に刻まれていました。当時、プラタナスがなんであるか、正確には分かっていませんでした。

本当は、当時の出来事を小説にするつもりで書き始めたのですが、残念ながらそっちの方向には進みませんでした。
実話度ゼロの方が、小説としては完成度が高いことが多いのですが、この作品に関して言えば、狙いすぎの粗悪品です。でも、自分的にはタイトルだけでグッときてしまう作品なんですよ。
T324
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[No.769-2]掴んで引き寄せて

No.769-2

「そう言えばさぁ・・・」

友人がなにかを思い出したかのように話し始めた。

「恋愛も同じパターンよね」
「・・・恋愛?」

指折り数えて・・・というほど恋愛経験はない。
あったとしても、99%は苦い経験だ。

「ほら、いつも先を越されてたじゃん」

なぜか、他の人が先に告白をしてしまう。

「恋愛は、間一髪・・・“間に合わなかった”ほうだけど」
「よく覚えてるわね!?」

言い終わった後に、私もあることを思い出した。

「“他の人”には、あなたも含まれていたよね?」
「えっ!?そ、そうだったかしら・・・まぁ、この話はこのへんで・・・」

友人が強引に話を終わらせようとしている。
自分で話を振っておいて。

「“このへんで”じゃないわよ・・・全く」

当時はふたりの友情に大きなヒビが入った。

「まぁまぁ、付き合えなかったんだから無罪でしょ?」

告白したものの振られた。
だから、それ以上、ヒビは大きくならずにすんだ。

「今日こそは、掴んで引き寄せてみせるわ!」

合コンに向かう私たちの鼻息は荒かった。
S769
(No.769完)
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[No.769-1]掴んで引き寄せて

No.769-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「えいぃ!」

閉まりかけたドアノブを、間一髪で掴んで引いた。

「な、なにしてるのよ!?」
「なにって、見たまんまよ」

もう少し遅ければ、完全に閉まっていた。

「分かってるけど・・・」
「そこまでしなくても」

「そうだけど・・・」

いちいちパーソナルカードをかざすのが面倒なだけだ。
今はどこもかしこもセキュリティがうるさい。

「閉まったら、開ければすむことじゃん!」

それでもつい体が反応してしまった。

「いつかケガするわよ」

確かに無理な体勢でドアノブに飛び付いた。

「もう・・・してたりして」

若干、腰をねじってしまった。
そのせいか、ゆるい痛みが走る。

「まったくもぉ・・・相変わらずというか・・・」

友人の呆れ顔も、これで何度目だろうか?

「以後、気をつけます!」

ただ、守れるかどうかは分からない。

(No.769-2へ続く)

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[No.768-2]きっと届いてる

No.768-2

その気になれば、周りの人に聞くこともできた。
でも、あえてしなかった。

「誰にでも必ず巡ってくることよ」
「僕にも?」

彼女が大きくうなづいた。
やはり、僕が考えていた通りのようだ。

「ごめんね・・・隠すつもりはなかったんだけど」
「言うのも・・・ね」

気持ちは分かる。
進んで他人に話すようなことでもない。

「構わないさ」
「そんな気がおきないよな」

土日を挟んで数日間、会社を休んでいたことも知っていた。
だからこその結論だった。

「落ち着いた?」
「うん・・・もう、1ヶ月が過ぎたからね」

確かにいつもの彼女に戻りつつあった。

「じゃぁ、またスタンプでも」
「うん!今まで送らなかった分、まとめて送るからね!」

いつも通り、スタンプが飛んでくるようになった。
“ありがとう”のスタンプがやけに目立つ。

「きっと届いてるよ」

天から彼女を見守る人が、もうひとり増えた。
S768
(No.768完)
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[No.768-1]きっと届いてる

No.768-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「そう言えば・・・さぁ・・・」

今まで、聞くべきか聞かざるべきか迷っていた。

「・・・あのこと?」
「よく分かるな!?」

僕の神妙な雰囲気を感じ取ったらしい。

「いずれ聞かれると思ってた」

1ヶ月前、2週間ほどLINEのやり取りが途絶えたことがあった。

「ずっと気になってて」

いつもなら、特に意味がないスタンプがしきりに飛んでくる。
僕も、さほど意味がないスタンプを返す。
それが僕らのコミュニケーションでもあった。

「そうよね」

それがある日を境に、2週間ほど途絶えた。

「嫌ならいいよ」

気になってこちらから送っても返信はない。
それどころか、既読にすらならない。

「そうじゃないんだけど・・・」

極端に言えば、ケンカの最中でもスタンプは来ていたくらいだ。
だから、今回は異常事態とも言える。

「ごめん・・・話したくないなら」

二人の間に原因となるものはなかったはずだ。
だからこそ・・・あることが脳裏をよぎって聞けずにいた。

(No.768-2へ続く)

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ホタル通信 No.323

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.255 個性
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

あらためて読んでみると、ちょっと読み難かったですね。良くも悪くも作者の“個性”が出ています。

猫との出会いは事実です。それも小説と同じく、食堂脇に陣取り、エサを貰おうと出待ちをしているようでした。ただ、その猫がお世辞にも綺麗とは思えず、毛は汚れ顔は目やにでいっぱいでした。それに嫌悪感を抱く私と全く気にしない彼。その対照的なふたりを描いてみました。作者はこのどちらかになります。
猫が嫌いなわけではありませんが、とても野生過ぎて、私的には無理なシチュエーションでした。
でも、彼はそんなことを全く気にする様子もなく、じゃれついていました。もしかしたら、彼のそんな所に惹かれたのかもしれません。

ラストに、「人ってね・・・案外、そんな所に惹かれるものだよ」とあります。彼は彼で、私のちょっと変わった部分を好きでいてくれました。
悪く言えば、薄汚い一匹の猫ですが、彼にして見ればキラキラと輝いて見えていたのでしょうね。単に野良猫に同情していたとは思えない行動でした。もしかしたら私にはできない行動に、少し嫉妬していたのかもしれません。
T323
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[No.767-2]彼の背中

No.767-2

「それだけで、責任感と言うか・・・」
「集団下校“あるある”だよ、それ」

いっぱしのリーダー気取りだったのかもしれない。
けど、それなりの行動はしたつもりだ。

「ある意味、これも教育だよね」
「あぁ、大切なことだと思う」

6年生の背中を見て育ち、それを受け継いだ。

「どうだった?」
「えっ!?なにが・・・?」

彼が唐突に何かを質問してきた。

「なにがって・・・背中だよ、俺の背中!」
「背中が・・・どうしたの?」

分かっているけど、とぼけてみた。

「見てただろ?当時!」
「・・・あぁ、その背中ねぇ~」

私が1年生の時、彼は6年生だった。

「別に・・・たいした背中じゃなかったわよ」
「そうなの!?」

本当は頼りになるお兄ちゃんだった。
その背中で私達を守ってくれた。

「じゃぁ、逆に私は?」
「小さ過ぎて、どこにいるかわかんなかったぞ」
「もう!失礼ね!」

そんな二人が今は肩を並べて歩いている。
S767
(No.767完)
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[No.767-1]彼の背中

No.767-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「懐かしいよね~」

反対側の歩道を小学生の集団が歩いている。

「今頃の時間なら、集団下校だろうな」

これから遠足という時間ではない。

「だよね・・・ほら!」

それぞれの集団の先には、高学年らしき人が居る。
飛びぬけて背が高いからすぐ分かる。

「俺らの時代も、こうだったよな」

私たちの学校は、毎週土曜日がそれだった。
運動場に集められ、一斉に下校する。

「そうそう!校長先生の長~い話があってさぁ・・・」

私達相手に、空気を読んではくれなかった。

「けど、何となくワクワクしただろ?」
「うん!それはあった」

ただ帰るだけなのに、妙な高揚感があった。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんの存在が大きかったよな」

先頭は、6年生が務めてくれた。
その背中に、憧れすら感じたほどだ。

「・・・で、そうこうしているうちに」

私もその立場になった。 

(No.767-2へ続く)

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[No.766-2]目やに

No.766-2

「そ、それなら、仕方ないわね」
「聞かないの?」

“予期せぬ出来事”なんて、追及の格好の的だ。
それが事実でも事実ではなかったとしても。

「なにを?」
「なにをって・・・“予期せぬ出来事”だよ」

多少なりともそこに弁明の余地がある。
ただ、それを認めてくれるかどうかは彼女次第だ。

「別に聞いたって仕方ないでしょ?」
「仕方なくはないよ」

僕としては出来れば聞いて欲しい。

「・・・もう、いいから、行くわよ」

意味も分からず許されるのも、これまた気持ちが悪い。

「さっきまであんなに怒ってただろ?」

なんだか、立場が逆転してきた。

「気が変わったの!」

シャツを捲り上げられたところから、様子が一変した。
一応、捲り上げたシャツを確認してみる。

(・・・別に変わったところはないよな?)

唯一、猫にじゃれつかれて、抜け毛がそれなりに付いている。
これが遅刻の原因でもある。

「もしかして・・・これ?」

彼女が無類のねこ好きだったことを思い出した。
S766
(No.766完)
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[No.766-1]目やに

No.766-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「お前・・・すごい“目やに”だな」

持っていたポケットティッシュで、そっと目の周りをぬぐった。

「・・・ごめん・・・怒ってる・・・よね?」

1時間の遅刻だ。

「あなただったらどうなの?」

怖いくらい冷静な対応だ。

「普通、お、怒るよね・・・」
「待ち合わせの時間、何時だっけ?」

ジワジワ攻めてくる。

「え・・・っと、10時かな・・・」
「・・・かな?」
「いえ!10時です!」

一言一句、裁かれているような感じがする。

「今、何時だっけ?」

僕の腕を掴み、長袖のシャツを捲り上げた。

「どう?これで良く見える?」

嫌味っぽく、腕時計を露出させた。
必要以上によく見える。

「ごめん!予期せぬ出来事があって・・・」
「なによ、そのよき・・せぬ・・・で・・・」

最後まで言い切る前に、なぜだかトーンが下がって行った。

(No.766-2へ続く)

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ホタル通信 No.322

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.246 大人な私
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

今回の実話度は微妙な判定かもしれません。実際に小説のような会話がなかったのに、40%と高めにしました。

彼女が言う“大人”が僕にとっては強がりにしか見えないこと、また、あるところは子供のままであること・・・これらは全て事実です。でも、このような会話があったわけではありません。言いたくても言えなかった、僕の心の内を文字にしました。
例えば、無礼な人が居たとする。彼女は、その無礼さに対して指摘する。でも、そんな人なんて世の中にはたくさん居ますよね?だから、気にしないでいられること、許せることも大人な対応です。
それに真正面からぶつかることが、僕にしてみれば子供のように見えました。

小説にも書きましたが、彼女にとって大人にならざるを得ない状況であったのは間違いありません。悪く言えば、たかが子供が背伸びして大人な振りをしているに過ぎません。
彼女にとっての“大人”とは、サバイバルであり、緊急避難でもあります。でも、そうでもしなければ生きていくことができないくらい、追い詰められていたのも事実です。
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[No.765-2]消えてしまいたい~風~

No.765-2

「ごめん・・・今更、こんなこと聞いて」

彼女に、辛い記憶を思い出させることになった。

「別にかまわないよ」
「逃げたってしかたない・・・事実だもん」

当時は、聞こうにも聞けなかった。

「ごめんな、一番つらかった時に」
「仕方ないよ、だってほら・・・」

彼女の言いたいことは分かっている。

「触れれば、壊れそうだったからでしょ?」
「う、うん・・・」

そんな時、あの言葉を聞いた。

「消えてしまいたい・・・か」

振り返るようで思い出すようなそんな表情だった。

「それでも・・・ね」

急に声のトーンが変わった。

「消えたとしても、あなたのそばに居たかった」
「・・・この風のように」

彼女と初めて出逢った海沿いの道を歩いている。
時より激しく吹く風に、僕達は肩を寄せ合った。
S765
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[No.765-1]消えてしまいたい~風~

No.765-1    [No.608]消えてしまいたい

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・私の場合?」
「あぁ、一番理解できる立場だと思って・・・」

唐突にあることを聞きたくなった。
無責任だけど、周りの雰囲気が僕をそうさせた。

「そうね・・・」

しばらく沈黙が続く。
この沈黙の長さが、心のキズの深さでもある。

「私の場合はね・・・」
「・・・私の場合だからね!」

それは理解しているつもりだ。
皆が同じ考えだとは思っていない。

「ただ、消えてしまいたいだけ・・・」
「でも、死ぬことじゃない」

彼女はつらい子供時代を過ごした。
彼女の居場所はどこにもなかった。

「私は居たいの、この世界に」
「けど、誰にも気付いて欲しくない」

人の目に怯えて暮らしてきた。
クラスメート、そして・・・親までも。

「まぁ・・・私の場合はねっ!」

明るく締めくくるのが、彼女らしい。

(No.765-2へ続く)

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[No.764-2]やさしい人

No.764-2

「とにかく、気をつけてね」

普段なら、とことん追及されるところだ。
今回は、多少オーバーな演技が功を奏したようだ。

「ところで君も自転車だろ?」
「気をつけろよ」

最近、自転車の事故も増えている。

「そうね」
「あなたみたいにならないように気をつけるわ」

そんな会話から、1週間が過ぎた時だった。

「まさか・・・」
「その、“ま・さ・か”よ」

僕と同じように、自転車で転倒したらしい。

「なんでまた!?」
「石ころ?」

1週間前と同じ展開だった。

「ううん・・・そうじゃないんだけど」

聞き覚えのあるセリフだった。

「じゃぁ、なに?」
「そのぉ・・・ハンドル操作を誤ったの」

展開が同じだ。
僕の場合は、“アレ”が目の前を横断していた。
それを避けようとして・・・。

「もしかして、毛虫が関係してる?」
S764
(No.764完)
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[No.764-1]やさしい人

No.764-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あっ!」

気付いた瞬間、天と地が数回、入れ替わった。

「どうしたの!?その傷・・・」

本当は隠したかった。
けど、隠せるほど小さなものではなかった。

「・・・自転車で転倒しちゃって」

特に左腕を擦りむいてしまった。

「痛そうね・・・」
「まだ、ヒリヒリするよ」

幸いにも大きなケガには至らなかった。
けど、すりキズや打撲は残った。

「石ころでも踏んづけたの?」
「ううん・・・そうじゃないんだけど」

理由を言うべきか迷う。

「じゃぁ、なに?」
「まぁ、ハンドル操作を誤ったから・・・かな」

嘘は付いていない。
結果的にそうなったからだ。

「どうせ、朝からボーと、してたんでしょ?」
「そ、そんなとこかな・・・」

これで話が終息するのであれば、我慢も必要だ。

「・・・追及もここまでにしておくよ」

時より、痛そうな表情をワザと見せ付けてやった。
追求の手が休まることを期待して。

(No.764-2へ続く)

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ホタル通信 No.321

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.244 ニアミス
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

ほんの少しだけ演出は入れていますが、ほぼ実話です。初期の作品ということもあり、リアルに仕上がっています。

ほぼ実話というくらいですから、実際にこのようなことがありました。
待ち合わせ場所の変更、変更した理由、そしてその理由である彼とのこと・・・書いてある通りです。
“彼と上手く行っていないけど、別れずに付き合っている”理由は単純です。彼女には行き場所がないからです。だからといって、そこが安全地帯でもありません。この小説では、この辺りの事情は省略しています。

当ブログを読んで頂いている方は、この彼女が誰なのかすぐに分かると思います。隠す必要もないのですが、あえて伏せてみました。
全体的な構成としては、コミカルな印象を持つ人もいらっしゃるとは思いますが毒々しさも見え隠れしています。そもそも小説上の僕との関係がありますよね?ニアミスの危険性がありながら、それでも逢う二人って・・・。

でも、ラストはそんな毒々しさとは無縁です。
彼女との待ち合わせ場所を、ある場所からある場所に変えたのは、リラックマの売り場がそこにあったからです。この売り場を起点にした小説も書いているんですよ。
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[No.763-2]スポーツドリンク

No.763-2

「是非、聞きたいわね!」

あの不透明さも手伝って、薬の印象を持っていた。
それにスポーツドリンクという名も手伝って。

「スポーツする人が飲む、なんて言うか・・・」
「栄養剤?」
「そう!それ!」

普通の人は飲んではいけない・・・。
子供心にそう思い込んでしまった。

「確かに、子供には怪しく見えるよね」

だから、口にすることがなかった。

「けど、今ならそれが何であるか、理解できてるでしょ?」

友人の言うとおりだ。
でも、子供心に刻まれた“何か”は思いのほか深い。

「そうなんだよね・・・」
「そんなあなたがなぜ、口にしたの?」

水のペットボトルを取ったつもりだった。

「間違えてスポーツドリンクを取ってしまって・・・」
「それってさぁ・・・」

友人が何かを懸命に考えている。

「誰の?」
「誰のって・・・あっ・・・」
S763
(No.763完)
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[No.763-1]スポーツドリンク

No.763-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それ自体は随分前から発売されていた。
ただ、“飲んではいけないもの”として認識していた。

「スポーツドリンクって飲む?」

友人にさりげなく聞いてみた。

「そうね・・・頻繁には飲まないけど」
「これからの季節にはいいよね」

確かに水分補給が必要な夏にはピッタリだ。

「でも、突然どうしたの?」
「まぁ・・・その・・・」

別に隠すようなことはひとつもない。
なのに、口ごもってしまった。

「飲んだこと・・・ないとか?」
「あるにはあるんだけど・・・ただ・・・」

飲んだのはつい最近だ。

「えっ!?そうなの」
「飲めないの?」

さながら、お酒の話に聞こえる。

「ううん・・・“飲まなかった”の」
「どうして?」

そこには、それなりの理由があった。

(No.763-2へ続く)

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[No.762-2]パイナツプル

No.762-2

「ちょっとした、スゴロクみたいなものよ」

ただ、これが始まると、大変だ。
なかなか家までたどり着けなくなる。

「途中で、断念したこともあったなぁ・・・」

友達が先に進みすぎて、見えなくなる。
そうなると、じゃんけんそのものがままならない。

「そりゃそうだろ・・・」
「でも・・・今でもこの遊び、やってるんだね!」

お金も道具も必要ないし、今すぐできる。
まさに小学生にはうってつけの遊びだ。

「僕は初めて知ったよ、この遊び」
「ちょっと、してみる?」

彼がうれしそうに首を縦に振った。

「じゃぁ・・・いくわよ!」
「のぞむところだ!」

彼がどんどん先に進んで行く。

「くっそぉ~!“ビギナーズフラッグ”ってやつね!」

それでも私もだんだんと追いついてきた。

「すぐに追い越してやるからね!」

ただ、あることを忘れていた。
そのせいで、あかね雲は星空に変わった。
S762
(No.762完)
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[No.762-1]パイナツプル

No.762-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「懐かしい~!」

ひとりの小学生が大股で私たちの横を通り過ぎて行った。
ある言葉を発しながら。

「えっ!?なにが・・・」
「・・・知らないの!?」

冷静に考えれば、知らない可能性もある。

「ほら、さっきパ・・・」

話し終える前に、次の言葉が聞こえてきた。

「ほら、これ!」
「これって・・・“チョコレート”ってこと?」

一般的にはこれで正しい。
でも、この遊びの場合は微妙に違う。

「正しくは“チヨコレイト”だよ」

彼の困惑した顔もうなづける。
何が何だか分かっていないだろうから。

「最初から教えてくれない?」
「あのね・・・」

じゃんけんの派生的な遊びだということを話した。

「“グー”はグリコで・・・何だっけ?」
「三歩、進めるのよ」

“パー”はパイナツプル、“チョキ”はチヨコレイト。
勝てばその文字分だけ進める。
そのためだろうか、文字をハッキリ発音する。

(No.762-2へ続く)

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