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2017年4月

[No.755-2]vs

No.755-2

「私だって、本当は・・・」

実際に飼っているからこそ、余計に辛い決断だ。

「私なんか、すぐ情にながされて・・・」

無責任にエサを与えてしまう。
結果、生きながらえた彼らが子供を残すこともあるだろう。

「彼らになにも罪はないんだけどね」

一匹の猫が友人の足元でじゃれつき始めた。
私たちの悩みなんて、お構いなし・・・といった感じだ。

「ねぇ、あんた・・・その人は“立て札側”の人間よ?」 

じゃれつく猫に、イジワルく問いかけた。

「でも・・・悔しいけど、ちゃんと分かっているみたいね」

口先だけの人間とそうではない人間。
だから、その猫は友人を選んだ。

「いずれにせよ、彼らには関係がない争いね」

人間が手助けしようがしまいが、彼らは彼らで生を全うする。

「・・・ところで、あなたはどっちの味方?」

友人が話を戻してきた。

「私はやっぱり、与える側・・・」
「いいんじゃない・・・それで」

安堵の表情を浮かべる友人の顔が、とても印象的だった。
S755
(No.755完)
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[No.755-1]vs

No.755-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
答えはきっとある。
そう願わずにはいられない。

「ねぇ・・・どう思う?」
「・・・う~ん・・・」

ある立て札の前で、しばし考え込んでしまった。
この手の立て札は、時々見掛ける。

「あなたはどっちの味方?」
「味方って・・・」

言わば戦っているのは、人間同士だ。
それもご近所同士だろう。

「私は“立て札を立てた”側かな」

友人ならそう言うと思った。

「知ってると思うけど・・・」
「・・・三匹だっけ?」

友人が猫を飼っているのは知っている。
だからこその発言なんだ。

「私は無責任な行為だと思う」

猫にエサをあげないで下さい・・・立て札にこう書かれていた。

「数も・・・そこそこいる見たいだね」

今も数匹の猫があたりをうろついている。

(No.755-2へ続く)

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[No.754-2]同じパターン

No.754-2

「ほら、あの女優さんが・・・」

この時点で、あの番組ではないことがわかる。

「ごめん!見てないんだ」
「・・・何だか嬉しそうね」

自分としては隠したつもりだった。

「ところで・・・」

声のトーンが急に変わった。

「ある番組でさぁ・・・同じパターン・・・あったよね」

天国から地獄に突き落とされた気分だ。

「えっ・・・あっ・・・見たんだ」

隠し通せる自信がなかった。
だから、素直に白状した。

「けんかの原因だったから良く覚えているよ」
「私達だけじゃなかったんだね」

ある日、LINEのやりとりでオウム返しが始まった。
その途中に、僕は“好き”と入力した。
本気ではないにせよ、嘘でもない。

「あの時は・・・ごめん」

その言葉でオウム返しは終わった。
でも、それが発端で、彼女とはしばらく音信普通になった。

「もう気にしていないから」

何とか関係を戻すことができた。
以前と変わらぬ、仲が良い友人という関係を。
S754
(No.754完)
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[No.754-1]同じパターン

No.754-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ん?」

テレビで、あるシーンを見かけた

「これって・・・」

僕としては、彼女が見ていないことを祈るだけだった。

季節の変わり目は、新番組の季節でもある。
それだけにおのずと、テレビの話題になりやすい。

「昨日さぁ・・・」

まさかとは思うけど一応、警戒しておいた方がよい。

「なに?」
「・・・なにか変・・・緊張してる?」

ごく自然に応えたつもりだった。

「き、緊張するわけないだろ?」
「噛んでるじゃん・・・」

とにかく、自然にやりすごそう。

「急に“なにか変”って言われると焦るだろ?」
「・・・まぁ、それもそうね」

一旦、落ち着きそうだ。

「ところで、昨日、あの番組見た?」

もしかして、あの番組のことだろうか・・・。

「何の番組?」

単なる連続ドラマの新番組であって欲しい。

(No.754-2へ続く)

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ホタル通信 No.316

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.292 決意の花火
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

実話度は、一部を除いてほぼ100%ですが、小説のタイトルを見てもどんな話だったのか思い出すことができませんでした。

あらためて読んで見ると・・・自分で言うのもなんですが、胸が熱くなりました。実話度が示す通り、ドラマのような展開が、現実に起き
ようとしていました。
彼女は彼と住んではいるものの、住んでいる理由はそう単純なモノではありませんでした。端的に書けば行き場所がない彼女にとっての“転がり先”だったわけです。多少の恋愛感情がなかったわけではないものの、“住まわせてもらっている”という、負い目からきた感情だったのかもしれません。

冬のホタルの読者なら分かるとは思いますが、その彼女は“せいじゅうろうシリーズ”の菜緒に他なりません。
大袈裟ですが、彼女の脱出劇はこの小説に始まったことではなく、過去にも何度かありました。ただ、ここまで具体的に話が進んだことはなかったため、その期待は大きく膨らみました。その分、未遂で終ったときの落胆もまた大きなものでした。

あらためて読み返してみると、ラストに書いてある「真夏の逃亡劇」というのが小説のタイトルに相応しい気もします。でも花火のように派手に咲いて儚くも散った“私の心”を表現したかったため、今のタイトルにしたように記憶しています。
S316
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[No.753-2]遅れた理由

No.753-2

「・・・で、本当のところはどうなの?」
「本当のところ?」

同僚が、ドヤ顔で聞いてきた。

「体調不良って、うそでしょ?」

それなりの演技はしたつもりだった。
オーバーアクションにならない程度に。

「・・・気付いてたの?」
「最初からね」

ばれるほど、まだそんなに会話はしていないはずだ。
さすが友人と言うべきかどうか・・・。

「実は・・・」

会社にくる途中、自転車同士の衝突事故があった。

「振り返ったら、女の子がふたり倒れてて」

幸い、大きなケガはなかった。
見た感じ、ふたりとも社会人1年生のようだった。

「でも、ひとり足から血が出てて・・・」

転倒した時に、足を切ったようだった。

「それなら、正直に言えばいいのに」

遅れる理由としては、逆に嘘っぽく聞こえると思った。
だから、ありきたりな理由にした。

「“血が出なかった”方は、もう来てるわよ」
753
(No.753完)
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[No.753-1]遅れた理由

No.753-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁぁ!・・・・ビックリしたぁー!」

あまりの音の大きさに、思わず声が出てしまった。

「遅刻なんて、珍しいじゃない・・・」
「電車でも遅れたの?」

返答に困る。
本当のことを言うのは、何だか照れくさいからだ。

「ちょっと、体調がすぐれなくて・・・」

上司には、始業前に遅れる旨、連絡していた。
だから、何も問題はない。

「・・・風邪?」
「まぁ、そんなものかな・・・」

これ以上の追求は、できればして欲しくない。

「いつも遅くまで飲んでいるせいよ」

“遅くなるのは誰のせい?”と突っ込みたくなる気持ちを抑えた。

「そ、そうかもしれないね」
「それとも、なに?彼にうつされた?」

彼氏が居ないのを知ってて聞いてくる。
同僚のいつものパターンだ。

「はいはい・・・妄想の彼にうつされたの!」

これに関しては、あながち嘘じゃない。
妄想の彼はいる。

(No.753-2へ続く)

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[No.752-2]変なおじさん

No.752-2

「十分、変でしょ!?」

それに、ほぼ毎日見掛ける。
けど、読んでいる場所はマチマチだ。

「読んでるだけ?」
「う、うん・・・」

友人が何を言いたいことはわかる。

「それなら別にいいじゃん」
「周りに迷惑を掛けているわけじゃないし」

そう言われると返す言葉がない。
確かに、私がそう思っているだけに過ぎない。

「そうかもね・・・」

よく考えれば、他にも大勢いる。
柔道着を着て、何やら不思議な動きをしている人とか・・・。

「えっ・・・その人の方がよっぽど変よ!?」
「そうなの!?」

私にはごく普通に見えた。

「どんな感覚してるのよ・・・まったく」
「まぁ、そのお陰で少々のことでは驚かないけどね」

(・・・そのお陰?)

その意味が理解できるまでに、数分を要した。
S752
(No.752完)
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[No.752-1]変なおじさん

No.752-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
通学路に、変わったおじさんがいる。

「どんな人?」

風貌が変わっているわけではない。
その点については、逆に普通以上に普通に見える。

「じゃぁ、なにが?」
「行動というか・・・」

“している”ことが変わっている。

「本を読んでるんだよね」
「・・・多分、週刊誌だと思う」

本の大きさや目に入る誌面からの推測にはなるが。

「普通よね?」
「週刊誌だけど、外で本を読むこと自体は・・・」

そう・・・読むこと自体は別に変じゃない。

「それがね」

座って読んでいるわけではなく、立って読んでいる。
それも仁王立ちと言わんばかりに。

「普通、ベンチとかで座って読むじゃない?」
「・・・まぁ、変と言えば変だけど・・・」

友人の反応がイマイチだ。
いつもなら、真っ先に食い付いてくる話題のはずだ。

(No.752-2へ続く)

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