[No.748-2]スーツの悲鳴
No.748-2
「ほら、最初に買ったスーツってさぁ・・・」
いわゆるリクルートスーツだ。
母と一緒に買いに行った。
「そうね・・・クローゼットに眠ったままね」
「私も同じよ」
無難と言えば無難なスーツだ。
ただ、色々な意味で似合わなくなっていった。
「半年も過ぎれば、もう新入社員じゃないからね」
着慣れないスーツが武器になるのも半年間だ。
「それもあって自分に似合うスーツに買い換えたからね」
聞こえは良いが事実は違う。
「何キロ?」
「私は5キロ・・・」
同僚は同僚で、指を4本立ててみせた。
「・・・だよね」
私たちの場合、新入社員時の心労はマイナスに働いた。
「だから逆にスーツが似合うようになったんだけどね」
「それは言えてるね」
良く言えば、貫禄が出てきた。
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