[No.748-1]スーツの悲鳴
No.748-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
-----------------------------
「そんな季節だね」
「だよね!」
真新しいスーツに身を包んだ若者が増えてきた。
まだ、スーツに“着せられている”感じだ。
「・・・そう言えば、まだ持ってる?」
「えっ!?」
彼と別れたのも今の時期だ。
就職したことも、その引き金のひとつになった。
「うん・・・捨てられなくて」
彼との思い出の品を捨てられない。
もう、5年が過ぎようとしているのに・・・。
「そうなんだ・・・知らなかった」
だから、今でも次の恋に進めないでいる。
「・・・けど、今、そんな話してるんじゃないよ」
「えーーー!」
穴があったら入りたい気分だ。
「“入社した頃に着ていたスーツ持ってる?”って聞いたの」
「主語はちゃんと言おうよ・・・」
必要がないカミングアウトだった。
「ごめん、ごめん!」
言葉とは裏腹に、お詫びの姿勢は感じられない。
むしろ、顔は笑っている。
| 固定リンク | 0
「(030)小説No.726~750」カテゴリの記事
- [No.750-2]叶えてあげる(2017.03.22)
- [No.750-1]叶えてあげる(2017.03.19)
- [No.749-2]ボロボロの本(2017.03.16)
- [No.749-1]ボロボロの本(2017.03.14)
- [No.748-2]スーツの悲鳴(2017.03.12)
コメント