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[No.748-1]スーツの悲鳴

No.748-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
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「そんな季節だね」
「だよね!」

真新しいスーツに身を包んだ若者が増えてきた。
まだ、スーツに“着せられている”感じだ。

「・・・そう言えば、まだ持ってる?」
「えっ!?」

彼と別れたのも今の時期だ。
就職したことも、その引き金のひとつになった。

「うん・・・捨てられなくて」

彼との思い出の品を捨てられない。
もう、5年が過ぎようとしているのに・・・。

「そうなんだ・・・知らなかった」

だから、今でも次の恋に進めないでいる。

「・・・けど、今、そんな話してるんじゃないよ」
「えーーー!」

穴があったら入りたい気分だ。

「“入社した頃に着ていたスーツ持ってる?”って聞いたの」
「主語はちゃんと言おうよ・・・」

必要がないカミングアウトだった。

「ごめん、ごめん!」

言葉とは裏腹に、お詫びの姿勢は感じられない。
むしろ、顔は笑っている。

(No.748-2へ続く)

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