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2017年3月

ホタル通信 No.315

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.241 糸
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この手の小説を作る時は、何らかの悩みや困りごとを抱えていることが少なくありません。

それが何であったのかは正直覚えていません。でも、思い当たることはあります。もともと、“冬のホタル”自体が、ある悩みごとから生まれたようなものです。特に初期の作品は、同じルーツを辿るといっても言い過ぎではありません。
この小説では、女性ふたりが登場していますが、実際は違うかもしれません。その時々により、作者が男性になったり、女性になったりしています。

内容は小説にも出てくる通り、少し哲学っぽい作りです。ホタル通信を書いている時に思い出したのですが、昔々、小学生の頃に、こんな感じの詩を書いていました。
もちろん、こんな大人っぽいものではなく、少し背伸びしたような感じのものです。その頃から、出来栄えは抜きにしても、文章を書くことが好きだったみたいですね、自分で言うのも何ですけど。

今は、あまり書かないタイプの小説です。
書けば書くほど、現実味がなくなることに加えて、自分に酔ってしまうことが少なくないからです。
とは言え、自分に溜まったガスを、時々抜いてあげる必要もありますから、その意味では“らしくない”小説を作りことは今でもあります。
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[No.751-2]普段はスマホ

No.751-2

「普段は、スマホを見てるから」

あれが美味しかったとか、また行きたいね・・・とか話が弾む。

「だから、景色なんて見ない」

うっかり、電車の中だということを忘れてしまうこともある。
その結果・・・。

「どうせニヤけてるんでしょ?」
「・・・そうみたい」

別の友人に指摘されて、始めて気付いた。
でも、恋人同士ってそんなものだと思っている。

「だけど、昨日は景色が気になって・・・」

時より、大きく揺れる景色は、私の心、そのものだった。

「自分で言ってるじゃん!」
「・・・あはは、そうみたい」

さっき、“揺れ動く乙女心”と言われたことを思い出した。

「まぁ、そんな時はスマホなんか見ないほうがいいよ」

友人、曰く、来ない連絡に下を向く日々が続くという。

「ありがとう・・・だから、直接会ってくれたんだね」
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(No.751完)
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[No.751-1]普段はスマホ

No.751-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
向かいの窓に、私の後ろの風景が映っている。
普段なら気にならないのに、今日はやけに気になる。

「まさしく“揺れ動く乙女心”って感じだね」

やっぱり、話すべきじゃなかった。
相談する相手を間違えた。

「そんな軽いノリじゃないんですけど・・・」

昨日突然、彼から別れ話を切り出された。
けど、予兆がなかったわけでもない。

「どこにでもある話じゃん」
「そ、そうだけど・・・」

確かに、どこにでもある話だ。
私だけが特別じゃない。

「わたしもさぁ、つい最近、彼と別れたよ!」

なのに、この元気っぷりには驚かされる。

「羨ましいよ、その性格・・・」
「そうかな?」

昨日の帰り道、いつもの電車に乗った。
スマホを握りしめたまま、呆然と向かいの窓を見ていた。

(No.751-2へ続く)

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[No.750-2]叶えてあげる

No.750-2

「実は・・・」

小学生の頃、夏休みの宿題に自由研究があった。

「俺もあったよ」
「でね・・・」

空き箱を利用して、何かを作ろうとした。

「何かって?」
「それが、いろいろ考えるけど、結局何も出来なくて」

そもそも思い立っても、肝心の空き箱がない。
だから、無理矢理に空き箱を作ることが多かった。

「母親に頼んでさぁ・・・中身を取り出したりしてた」

でも、そんなに都合よく箱が揃わない。
結局、何も作れずに終わる。

「それが毎年、続いて・・・」

たかが小学生のすることだ。
普段から空き箱を準備するほど、用意周到さはない。

「その反動が出てるんだよね、きっと」

気付けば、空き箱をとっておくことが習慣になった。

「けど、さすがに工作はしないだろ?」
「うん、多分・・・というより、絶対しない・・・でも・・・」

くどいようだけど、捨てられない。

「仕方ないなぁ・・・」
「昔の“何か”を叶えてあげるよ、時間はたっぷりあるんだし」

S750
(No.750完)
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[No.750-1]叶えてあげる

No.750-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「・・・これって、空き箱だろ?」
「そうよ」

彼に引越しするための荷造りを手伝ってもらっていた。

「捨てても・・・いいよね?」

もともとそのつもりで彼を呼んだ・・・はずだった。

「ちょっと待って!」

捨てられない性格ではない。
その証拠に、目の前には捨てる物が仕分けられている。

「いるの!?」
「・・・う、うん」

私の反応に彼が不思議な表情を浮かべる。

「・・・珍しい箱じゃないよな?」

単なる石鹸の外箱だ。
ブランドものでも、お土産の品でもない。

「集めてるの?」

確かにこれだけの数になると、そう思われても仕方がない。

「集めているわけじゃないんだけど・・・」

いまだに捨てることをためらってしまう。

「・・・他にも色んな箱があるよね?」

その通りだ。
他にも何の変哲もない空き箱がたくさん転がっている。

(No.750-2へ続く)

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ホタル通信 No.314

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.239 似た人を好きになる
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

好きになるかは別にしても、誰しも好みの顔はあると思います。
その瞬間は意識していなくとも、歴代の彼を並べてみると・・・。

実話度は低めですが、タイトルにもなっている「似た人を好きになる」という点は事実です。加えて、アイドルの話が出て来ていますが、これも事実です。同時期に両方好きになったために、どちらを先に好きになったのかは、自分の中でもいまだに謎です。それからというもの、タイプはどうしても似てきます。

さて、ラストは顔と声の話になっていますが、本当は違う結末にする予定でした。もちろん、創作上の結末なので事実ではないのですが、もしかしたら・・・と思わせるものです。
顔が似た人を好きになっても、心まで同じということはほぼありえません。それを分かっていながら、昔の彼の面影を姿形だけではなく、心の中まで追い求めていた・・・こんな結末です。

顔は似ていると、心も・・・なんて幻想を抱くことはもうなくなりましたが、それでも逆戻りしそうなときがなくもないですけどね。
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[No.749-2]ボロボロの本

No.749-2

極力、自然に話題を振ったつもりだった。
けど、感づかれているかもしれない。

「ほら、イマドキの子にしてはさぁ・・・」

お世辞にも、ボロボロの参考書は“カワイイ”とは言えない。
いくら勉強のためだとは言っても。

「多少、見栄えを気にするだろ?」
「まぁ・・・ね」

だから、その姿勢に感動すら覚えた。

「そうなんだ」
「好きになっちゃいそうだよ」

もちろん、本気で言ってるのではない。
けど、冗談でもない。

「これって新手の告白?」
「・・・」

やはり、感づかれているようだ。

「確か、同じ電車だったよね?」
「・・・高校の時」

学校は違えども、同じ電車だった。
毎朝、彼女と同じ車両に居た。

「だから“久しぶり”だったんだ」
S749
(No.749完)
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[No.749-1]ボロボロの本

No.749-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(ええっ・・・)

イマドキの女子高生が持ってるだけにそのギャップに驚いた

「参考書?」
「うん・・・多分、英単語の本だと思う」

昨日、電車の中でひとりの女子高生に目が行った。

「それがさぁ・・・ものすごく使い込まれてて」

一言で言えば、ボロボロの状態だ。
本なのに、磨り減った感が半端ない。

「久しぶりに見たよ、あんなの」

もちろん、使い方が荒いわけではない。
彼女の勉強ぶりを見れば分かる。

「・・・熱心に勉強してた?」
「そりゃ、食い入るようにな」

ボロボロの程度は、努力の裏返しでもあるだろう。

「参考書も幸せね」
「だろうな」

参考書にしてみれば、本望だろう。
ここまで、使い込まれたのだから。

「・・・ところで、なんでこんな話をしたの?」

(No.749-2へ続く)

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[No.748-2]スーツの悲鳴

No.748-2

「ほら、最初に買ったスーツってさぁ・・・」

いわゆるリクルートスーツだ。
母と一緒に買いに行った。

「そうね・・・クローゼットに眠ったままね」
「私も同じよ」

無難と言えば無難なスーツだ。
ただ、色々な意味で似合わなくなっていった。

「半年も過ぎれば、もう新入社員じゃないからね」

着慣れないスーツが武器になるのも半年間だ。

「それもあって自分に似合うスーツに買い換えたからね」

聞こえは良いが事実は違う。

「何キロ?」
「私は5キロ・・・」

同僚は同僚で、指を4本立ててみせた。

「・・・だよね」

私たちの場合、新入社員時の心労はマイナスに働いた。

「だから逆にスーツが似合うようになったんだけどね」
「それは言えてるね」

良く言えば、貫禄が出てきた。

「でも、スーツは悲鳴を上げているだろうな・・・」
S748
(No.748完)
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[No.748-1]スーツの悲鳴

No.748-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「そんな季節だね」
「だよね!」

真新しいスーツに身を包んだ若者が増えてきた。
まだ、スーツに“着せられている”感じだ。

「・・・そう言えば、まだ持ってる?」
「えっ!?」

彼と別れたのも今の時期だ。
就職したことも、その引き金のひとつになった。

「うん・・・捨てられなくて」

彼との思い出の品を捨てられない。
もう、5年が過ぎようとしているのに・・・。

「そうなんだ・・・知らなかった」

だから、今でも次の恋に進めないでいる。

「・・・けど、今、そんな話してるんじゃないよ」
「えーーー!」

穴があったら入りたい気分だ。

「“入社した頃に着ていたスーツ持ってる?”って聞いたの」
「主語はちゃんと言おうよ・・・」

必要がないカミングアウトだった。

「ごめん、ごめん!」

言葉とは裏腹に、お詫びの姿勢は感じられない。
むしろ、顔は笑っている。

(No.748-2へ続く)

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ホタル通信 No.313

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.296 別れの予感
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

突然、彼と連絡が取れなくなったのは事実です。小説に書いた「じゃあ、また明日!」ではなかったですが、こんな感じのメールが最後になりました。

メールを送ればエラーが返ってくるし、電話は拒否されているようでした。もちろん、全く予感がなかったわけでもありません。実際、そうなる数ヶ月前に多少の修羅場がありました。
でも、それも乗り越え、ようやく安定し始めた時期だっただけに、残念でなりませんでした。
悲しいとか悔しいとか、そんな感情を抱くこともできず、それこそ“糸が切れた凧”のように、私の心はしばらく、行く宛もなくたださまようだけでした。

気にしていない・・・と言えば嘘になりますが、私の中では想い出に変わっています。
あれだけ、“彼なしでは生きていけない!”なんて言っていたわりには、振り返るとバカバカしくなるほどです。誰もが通る道・・・とまでは言いませんが、その道を通ることは決してマイナスではありません。もしろ、私の場合はプラスに作用しました。

春が近づくと思い出します。
桜の花びらが舞い落ちる中で、途方に暮れていた私。繋がらないケータイを握り締めて・・・。
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[No.747-2]ショートヘア

No.747-2

「それより、よく気付いたね?」
「だって、あれだけバッサリだと・・・」

気づかない方が無理だと言ってもいい。

「朝、見かけた瞬間に“あっ!”と声が出たくらいだよ」
「ふ~ん・・・」

ただ、その場で、あれこれと聞くことは出来なかった。

「とにかく・・・ショートもいいかもね」

今まで、あまり気にしたことはなかった。
あらためて、その魅力に気付いた。

「“ショート”の魅力じゃなくて、“彼女”の間違いじゃない?」
「かもな!」

今朝は、そんな男性社員で溢れていた。

「ふ~ん・・・」
「・・・何だよ」

さっきから、気のない返事が返ってくる。

「もともとショートの人は、気付いてもらえないのよね」
「どういう意・・・!?」

言い終わる前にあることに気付いた。
S747
(No.747完)
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[No.747-1]ショートヘア

No.747-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ほんとバッサリでさぁ」

もともと髪が長かったこともあり、よりインパクトを感じた。

「そんなに?」
「あぁ・・・別人みたいだったよ」

もちろん、悪い意味ではない。
それはそれで似合っていた。

「ショートもロングも似合うなんて羨ましいね」

確かにそうだ。
ショートにするにはそれなりの覚悟が必要だろう。

「失恋でもしたのかな?」

とは言え、そんな雰囲気は微塵も感じなかった。

「男って、すぐそう考えちゃうよね・・・」
「単なるイメチェンよ、きっと」

多分、なんの根拠もないだろう。
ただ、同性の言葉だけに、妙な説得力がある。

「そうなの?」
「そろそろ春も近づいてきたからね」

まるでファッションの一部のような発言だった。

(No.747-2へ続く)

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