[No.730-2]隠したかったもの
No.730-2
「大丈夫?」
「うん・・・ちょっと切っただけ」
他にも四苦八苦した後が残っている。
けど、それはどうやら“隠したかった”らしい。
「・・・卵焼きはどう?」
雰囲気を察したのか、やんわりと聞いてきた。
「美味しいよ」
「甘さ加減も丁度いい」
僕が甘党であることを彼女は知っている。
とは言え、その加減は苦労したのかもしれない。
「そう・・・良かった・・・」
さっきの“良かった”よりもかなり気持ちが入っていた。
何よりも安堵の表情が印象的だ。
「何か気になる?」
「えっ!」
ちょっとイジワルく返してみた。
「冗談だよ」
「・・・もう!」
その後も何もなかったように卵焼きをほおばった。
焦げた裏側に気付いていないフリをしながら。
(No.730完)
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