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2016年11月

[No.731-2]最も足が地に着く時期

No.731-2

「・・・たたり?」
「ちょ、ちょっと何よそれ!?」

言葉とは裏腹に、真剣に考えたこともあった。
過去に男性を冷たくあしらったことがあったかもしれない・・・と。

「そうでもなきゃ・・・」

確かに、3年連続でそうなった。
イルミネーションで街の装いが変るころに別れを告げられる。

「彼がプレゼントしたくなかったとか?」

一般的には、ありえなくもない話だ。
クリスマスにかこつけて、高額な品をやんわりとねだる。
ただ、私の場合、プレゼントそのものさえ、ねだったことがない。

「けど、プレッシャーは感じると思うわよ」
「結構、普段の言動を見ているから・・・男性は」

そう言われると自信がない。
もしかしたら、プレッシャーを与えていたのかもしれない。
知らず知らずのうちに。

「いずれにせよ・・・今年もひとりみたい」
「次の日は、付き合ってあげるからさぁ!」

悪い意味で、1年で最も足が地に着いている時期だ。
今頃は。
S731
(No.731完)
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[No.731-1]最も足が地に着く時期

No.731-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
また、例の季節がやって来た。

「いよいよだね!」

もしかしたら、1年で最も浮き足立っている時期かもしれない。
世の男性と女性は。

「何が?」

出来れば避けたい話題だ。
だから、あえてとぼけてみた。

「何がって・・・」
「ほら、一面のイルミネーションじゃない!」

言われなくとも、さっきから目に飛び込んできている。
何とも憎らしいほどに。

「あなたはいいじゃん・・・」

つい最近、友人に彼氏ができた。
それに比べて、私ときたら・・・。

「もしかして、別れちゃった・・・?」
「・・・まぁ・・・ね」

友人とは真逆で、つい最近、彼と別れた。

「今年も!?」

なぜか、クリスマスを前に彼と別れてしまう。
初めての彼ができてから、それがずっと続いていた。

(No.731-2へ続く)

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[No.730-2]隠したかったもの

No.730-2

「大丈夫?」
「うん・・・ちょっと切っただけ」

他にも四苦八苦した後が残っている。
けど、それはどうやら“隠したかった”らしい。

「・・・卵焼きはどう?」

雰囲気を察したのか、やんわりと聞いてきた。

「美味しいよ」
「甘さ加減も丁度いい」

僕が甘党であることを彼女は知っている。
とは言え、その加減は苦労したのかもしれない。

「そう・・・良かった・・・」

さっきの“良かった”よりもかなり気持ちが入っていた。
何よりも安堵の表情が印象的だ。

「何か気になる?」
「えっ!」

ちょっとイジワルく返してみた。

「冗談だよ」
「・・・もう!」

その後も何もなかったように卵焼きをほおばった。
焦げた裏側に気付いていないフリをしながら。
S730
(No.730完)
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[No.730-1]隠したかったもの

No.730-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「お弁当どう?」

紅葉シーズンということもあり、郊外へ足をのばした。

「もちろん、美味しいよ」
「よかったぁ~」

厳しく判定するなら、可もなく不可もない。
いわゆる平均点の味だ。

「初めてにしては、上出来じゃない?」
「・・・何か引っ掛かるけど・・・まぁ、いいか」

あまり褒めすぎるのも良くない。
今の味に満足してしまうからだ。

「あまり無理するなよ?」
「・・・どうして?」

朝から慣れない料理に四苦八苦したのだろう。

「ほら、絆創膏・・・」

昨日の夜は、それがなかった。

「あっ!バレちゃった・・・」

本気で隠すなら、いくらでも手はあっただろう。
あえて“見せる”という戦略もあるにはあるが。

(No.730-2へ続く)

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ホタル通信 No.304

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.234 ハズレの景品
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

そこそこ実話度は高めで話の流れはほぼ事実です。所々、設定を変えたり、脚色したりしています。

まず、くじ引きした場所が商店街ではなく自動車の販売店でした。
その販売店を訪れた際、丁度、クリスマス時期と言うこともあり、クジ引きをやっていました。
その結果、手に入れたのが“鮮やかな赤が”となぜか遠回しに書いた、ポインセチアの鉢植えでした。なぜ、遠回しに書いたのかは覚えていませんが、多少、クイズっぽさを演出したかったのかもしれません。

話の焦点はズレますが、このポインセチアには何かと思い入れがあり、何度か小説の主軸として登場しています。古くは学生時代に付き合っていた彼女と別れた後に、贈ったことがある花で、その印象が今でも尾を引いています。
さて、今回の話はクジ引きに当たった話ではなく、ポインセチアが予想に反して、枯れなかったことが話を作るきっかけになりました。
これが自分にとっては衝撃的で、花に対する見方が変ったくらいでした。
花なんてもらっても仕方ない・・・ほんの一時的な贈り物・・・なんて考えていましたから。

花に話しかける、彼女にも話しかける・・・の部分は、思わせぶりな部分ではありますが、小説としての深みを“何となく”持たせただけに過ぎません。
T304
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[No.729-2]勇気があればいつだって

No.729-2

「ごめん・・・」
「・・・」

ついには返事をしてくれなくなった。

「ほ、ほんとは・・・」

このままだと誤解されたままになってしまう。
正直に言うしかない。

「・・・ぷっ!」
「えっ!?」
「あはは!ジョークよ、ジョーク!」

さっきまでとはうって変った表情と態度だ。

「ちょっとからかってみたのよ」
「な、なんだよ、それ!?」

今度は僕が不機嫌になった。

「だって、ほら・・・」

彼女が渡したお土産を指差した。

「ほら、横に付箋が付いているでしょ?」
「これに私の名前が書いてある」

お土産を仕分ける時、名前を書いた付箋を貼った。
それを取り忘れていた。

「ありがとう・・・旅先でも私ことを考えてくれて」
「うん・・・」

誕生日やホワイトデーに頼る必要はない。
勇気があればいつだって。
S729
(No.729完)
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[No.729-1]勇気があればいつだって

No.729-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
お土産には色々な意味がある。
形式的なものから、そうじゃないものまで。

「これ、有名なお菓子だよね?」

その方面に詳しいと助かる。
アレコレと説明する必要がないからだ。
何よりもその有り難味を十二分に分かってくれる。

「そ、そうなんだ!?」
「みんな買ってたからさぁ・・・」

一応、とぼけてみた。
さも買ってきたのは偶然だと言わんばかりに。

「最近はこれがお土産の定番なんだって!」
「へぇ~道理で・・・」

あくまでも知らなかったことにした。

「でも、もらっていいの?」
「も、もちろん!」

最初からそのつもりで買ってきた。

「ひとつ、余っちゃったから・・・顔見かけたので」
「・・・あっ」

つい、照れ隠しで余計なことまで口走ってしまった。

「ふ~ん・・・そうなんだ」

彼女の表情が曇る。

「いや、その・・・」
「別にいいわよ、私はそんなポジションでも」

怒ってはいないけど、明らかに不機嫌そうな態度だ。

(No.729-2へ続く)

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[No.728-2]夢を見させて

No.728-2

車の走る音や意味不明な騒音で目が覚める。
当然ながらビーチも山も見えない。

「分かるわ~その気持ち」
「私もしばらく、後遺症で悩まされたもん!」

長期休暇にありがちな・・・というより、海外旅行にありがちな・・・だ。
けど、今回はそれとも少し違う。

「なんだろう・・・すごく後ろ髪を引かれるようで」

今までそんな気持ちになったことがない。
結局、自宅が一番落ち着くからだ。

「独特の時間が流れているよね」
「そうね・・・私もそう思う」

単に南国だからではない。
快適さで言えば、日本の方が数段上だ。

「それに普段よりも人と接することができたし」

“ありがとう”と何度、言ったことか・・・。
店員しかり、見ず知らずの人、しかりだ。

「わかる!わかる!」
「自然に出ちゃうのよね」

日本に帰ってきても、その感覚がしばらく残ったほどだ。

「とにかく・・・満喫できたみたいで良かったね」
「もうしばらくは夢を見させてもらうことにするわ」

その言葉通り、ここ数日間はハワイの夢しか見ていない。
S728_2
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[No.728-1]夢を見させて

No.728-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
長期の休暇を取得する機会に恵まれた。
だからこの際、海外に出掛けてみることにした。

「ゆっくり出来た?」
「そりゃ、もう・・・」

出社を拒否したいほど十二分に休暇を満喫した。

「どこのホテルだっけ?」
「ほら、あなたが・・・」

もとはと言えば、目の前の友人が紹介してくれた。

「あっ!そうだったわね」

部屋からはビーチと有名な“山”が一望できる。

「お陰様で毎日、波の音で目が覚めたわ」

多少、大袈裟な表現でもウソに聞こえないところが不思議だ。

「毎日が新鮮だったな・・・」
「そうそう!多少不便なところが逆にいいのよね!」

友人はそうだろう。
英語もそこそこ話せる。

「私は、“結構”不便だったけどね!」
「ごめん!ごめん!」

余裕の表情が何とも憎らしい。
・・・とは言え、それはそれでとても楽しかった。

「それがさぁ・・・今は・・・」

(No.728-2へ続く)

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ホタル通信 No.303

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.230 多くても少なくても
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

何とも言えない“中途半端”な作りがヒシヒシと伝わってきます。
それに、定番とも言える話の主軸を隠しながらの展開です。

小説を作る“きっかけ”になるものは、もちろんあったと思うのですが、それが何であったのか正直覚えていません。恐らく、タイトルと内容からすれば、“一言多い”あたりが、そのきっかけだと思います。
実話度が示す通り、ほぼ創作です。きっかけさえ忘れるくらいですから、さほど印象的なエピソードもなかったのでしょうね。今となっては当時をうかがい知るすべはありません。

定番・・・と前述しましたが、今でもこの手法は時々用いています。
荒っぽい言い方をすれば、“冬のホタル”自体、細かな描写を避けており、もともと分かりにくさが満載です。
これに輪を掛けて、主軸を隠しているわけですから、読み手にとってはたまったものではありません。ただ、現実の会話は、こんなものだと思っています。伏線を張りながら会話を進めるわけでもなく、自分勝手に話を進めることも。

・・・なので、当ブログは“小説風”と位置付けて、会話をベースに物語を展開させています。文字というより、空気感を感じて頂ければ幸いです。
S303
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[No.727-2]空気感

No.727-2

仕事を終え、帰り支度をしていた時だ。
メッセージが届いた。

「・・・そうだ!」

忙しさのあまり、すっかり忘れていた。

「降ったのかな?」

急いでLINEを開いてみた。
そこには一枚の写真だけが添えられていた。

「降ったんだ!?」

急いで、メッセージを送った。
暗くてハッキリはしていないが、これも住んだ者なら分かる。

「うっすら・・・だけどね」

やや溶け始めた雪で道路が黒光りしている。

「今年も始まったね」
「だね!」

今年の始まりは、今年の終わりも意味している。

「年末は帰ってくるんですか?」
「もちろん!」

彼女の空気感も、一緒に居た者にしか分からない。
S727
(No.727完)
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