[No.713-2]おふくろの味
No.713-2
「話を戻すけど、実家を離れてから、一度も食べてないの?」
微妙な部分を突いてきた。
「・・・う、うん・・・まぁ・・・」
「実家には帰っているんでしょ?」
頻繁ではないが、それでも年に一度は帰っている。
「それなら、言えばいいじゃない?」
「・・・なにを?」
一応、分からない振りをして、とぼけてみた。
「それを“食べたい!”って」
確かに、言ったことはない。
けど、言い難い状況がある。
「言い難い?」
「あぁ、気遣ってくれているだけに」
たまに実家に帰っても外食が多い。
「分かる、それ・・・うちもそうだから」
決して楽をしたいからではない。
「美味しいものを食べさせてあげたい・・・親心だと思う」
「だから・・・なかなか言えなくて」
そこには照れくささもある。
「思い切って言ってみたら?喜ぶと思うわよ」
「・・・そうだな」
なんだか、無性に食べたくなってきた。
「次、帰った時に、リクエストしてみようと思う」
「それなら、ついでにレシピも聞いておいてくれない?」
(No.713完)
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