« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »

2016年9月

[No.720-2]ありがとうと言いたくて

No.720-2

「頻繁に“拍手”をくれる人が居るんだ」
「・・・誰?」

誰かは分からない。
多少なりともブログ仲間がいるので、その人かもしれない。

「もしかしたら、あの人かな・・・って思うこともあるけど」
「多分、見ず知らずの人だと思う」

特にコメントを残してくれるわけでもない。
ただ、拍手ボタンを押してくれる。

「へぇ~、あなたが謎の人なら、その人も謎の人ね」
「そうなるね」

こんなつたない“小説もどき”のブログに付き合ってくれる。
自己満足で良いとは言え、嬉しくないわけがない。

「コメントを・・・欲しいな・・・と思ったこともあったけど」
「今の距離感が丁度、いいのかもしれない」

近づけば遠のいてしまうような気がしている。

「距離感か・・・分かるような気がする」
「それでも、日頃のお礼はしたいので」

それなら、いっそのこと、小説で伝えようと考えた。

「あなたらしい考えだね!」

直接的に書くのも照れくさい。

「とにかく、“ありがとう”と言いたくて」
S720
(No.720完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.720-1]ありがとうと言いたくて

No.720-1

登場人物
?=牽引役  ?=相手
-----------------------------
「まだブログは続けてるの?」
「うん、続けてる」

始めてから、丸7年以上経過した。

「小説・・・書いてるんだよね?」

実は親友にも詳しい話をしていない。

「そうだよ、小説“風”だけど」

実話や実話をベースにしている小説だ。
内容が内容だけに、たとえ親友でも教えられない。

「相変わらず、秘密主義?」
「うん・・・ごめん」

決して、身近な人を“悪く”書いたりはしない。
だから、見られても何も問題はない・・・・でも・・・。

「自分の本音やダークな部分も書いてるから・・・」

知人に見られているという意識が、内容に制限をかけてしまう。
それを避けたいがためだ。

「それにしても、よく続けられるよね?」
「もともと、そんな気はなかったんだけど」

単に自己満足の世界だ。
読んで欲しいというより、書き続けることに価値を見出している。

「ただ・・・」

こんな私に付き合ってくれる人がいる。

(No.720-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.299

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.312 重なるイメージ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

あるべき建物が無くなっている・・・まさしく日常を切り取った話であり、テーマとしては何度か登場しています。

見ているようで見ていない・・・思い出せない時、苛立ちにも似た気持ちになります。思い出せないことに苛立ちを感じるのではなく、見ていなかったことに対してです。
単に建物が無くなっただけに過ぎないのでしょうが、そこには誰かの人生があったはずです。何度だかそれさえも、否定しているような気持ちになります。

実話度は低めですが、無くなったと勘違いしていた建物や新しく建てられた店は事実です。周りの環境も随分変っていたこともあり、店一軒分の不自然な空間を見た時、かつてここに店があったように反応してしまいました。
小説ではその場で、思い出せていますが、実際はかなり後になって思い出しています・・・というより、この近くに住む知人に聞いてようやく事実が判明しました。

そんなこんながありながら・・・でも、いまだに、見ているようで見ていません。それが建物であり、人であったり。
T299
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.719-2]一生の戦い

No.719-2

お互いの力が均衡しているせいだろうか・・・。
雨が降るわけでもなく、晴れるわけでもない、曇り空が続いた。

「さすが、やるわね!」
「はぁ・・・」

驚くほどノリノリの彼女だ。
一体、何が彼女をそうさせているのだろう・・・。

「ちなみに、引き分けの場合は?」
「もちろん、再戦よ!」

一応、ルールは決められているようだが見てはいない。
いや・・・そもそも見ようとも思わない。
どうせ、負けたとしても、くだらない罰ゲームくらいだろうから。

「終業時間までだったよな?」
「そうよ・・・残り1時間くらいだね」

曇り空は相変わらずだ。
波風が立たないように、“このまま”終わって欲しい。

「負けたらどう・・・あっ!」

言い終わる前に、空が急激に暗くなってきた。
その直後、大粒の雨が地面を叩き始めた。
俗に言う、“ゲリラ豪雨”だ。

「やだぁ・・・」
「まぁ、勝負は勝負だからね」

とにかく、勝負はついた。
勝ったことより、正直終わって、ホッとした。

「ちなみに、負けたらどうなるの?」
「勝つまでやれって」
S719_2
(No.719完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.719-1]一生の戦い

No.719-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
大袈裟だが、いずれこんな日が来ると思っていた。

「いよいよね」

もともとは彼女から仕掛けられた闘いだ。
社内きっての“晴女”の彼女に。

「そ、そうだな・・・」

正直、気乗りはしない。
彼女と周囲に押し切られるような感じで、この闘いを受けた。
“雨男”の自分としては。

「・・・本気・・・だよね?」
「もちろんよ!」

降水確率が午前も午後も50%の時・・・勝負する約束だった。

「雨男が勝つか、晴女が勝つか・・・なんてさぁ・・」
「くだらなくない?」

お互い、その方面では社内でも有名人だった。
その関係で表に引っ張りだされた。
創業50周年のイベントのひとつとして。

「なに言ってるのよ!?社長も注目してるんだから!」
「そ、そうなの!?」

色んな意味で心配になる。

「とにかく、もうすぐ闘いのゴングが鳴るわよ!」
「ちょ、ちょっと!」

その言葉通り、始業を知らせるチャイムが鳴り始めた。

(No.719-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.718-2]わずかな隙間

No.718-2

「わざわざ、あんな窮屈な場所を選ばなくてもいいのにね」
「あはは、それは言えてる!」

おそらく彼らにとって、安全な場所なのだろう。

「恋人同士?それとも夫婦かな?」
「友達同士・・・ってこともありえるわよ」

それにしても仲睦まじく座っている。
ことの真相は彼らに聞くしかないだろう。

「ほんと、憎めないやつらね」
「でしょ~!」

通勤途中に自転車の進路を妨害する・・・。
ベンチに座っていると、物欲しそうに寄ってくる・・・。

「案外、一番身近な動物なのかもね!」

それに、飼いならしたわけじゃないのに、妙に馴れ馴れしい。

「わかる、わかる!私はあんたの飼い主じゃない!ってね」

でも、寄って来なければ来ないで寂しいかもしれない。

「とにかく・・・いつまでも仲良くね!」

向かいのハトと・・・ついでに隣に聞こえるように叫んだ。
S718
(No.718完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.718-1]わずかな隙間

No.718-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ見て・・・」

友達とベランダで雑談をしていた時だった。

「・・・ハトだよね?」

紛れも無くハトだ。
向かいの家の出窓に二羽、座り込んでいる。
それも出窓の僅かなひさし部分に。

「何だか窮屈そうだよね」
「・・・だね」

まるで肩を寄せ合うかのようだ。
それが微笑ましくも見える。

「落ちないかしら・・・」
「彼らには、ムダな心配じゃない?」

確かにその通りだ。
でも、つい心配してしまう。

「相変わらずハトにはやさしいよね?」
「そ、そうかな・・・」

そんなつもりは毛頭ない。
けど、憎めないやつらなのは確かだ。

(No.718-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.298

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.227 いたずら
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

ホタル通信を書くにあたって読み直してみると、リアリティ溢れる作品であると、あらためて感じました。

実話度の通り、約80%は事実です。小休止のために入ったカフェで彼女がコースターに何やら書き始めたのが発端です。
冬のホタルは嘘っぽい話ほど、本当のことが多いのも特徴です。想像の世界だけでは描ききれない、リアルな現実を描くことをテーマにしています。
小説の前半はほぼ100%実話で、後半特にラスト付近は創作になります。

彼女との出会いはコースターではなく、別のきっかけでした。
従って、彼女がコースターにイタズラ書きする姿を見て、アイディアを思いつきました。
正直、ラスト付近は暗い話です。「あの日、ひとつの火が消えなくて済んだ」は、皆さんが察している通りの内容です。またこの部分は創作であることに間違いはないのですが、彼女がその影に怯えていたのも事実です。

タイトルは“イタズラ”で、内容もコミカルに展開してはいるものの、本当は少々、重い話に仕上げています。でも、決して悲しい話ではなく、むしろ生きることに前向きなんです。
T298
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.717-2]行きと帰り

No.717-2

(ハァ~なんでこんなハメに・・・)

ため息のひとつやふたつ、出ないはずもない。

「とにかく・・・・急ごう!」

小走りに外に出た・・・その時だった。

「わぁ!?」

うろこ雲が夕日に照らされ、何とも幻想的な空が広がっていた。

「買ってきたよ」
「ありがとう!助かるわ~」

これでお目当ての料理にありつける。

「・・・何だか、すがすがしい顔してない!?」

もうすぐ料理を食べられるともなれば、そんな顔にもなるだろう。

「そうか?」
「そうよ!行きは、シブシブだったくせに」

どうやら、バレていたようだった。

「だって、もうすぐ食べられるだろ?」

ただ、自分で言っておきながら、何か引っ掛かる。

「いや・・・それもあるけど」

独り言のようになってしまった。

「あまりにも、空が綺麗でさぁ・・・」
S717
(No.717完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.717-1]行きと帰り

No.717-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれぇ!?」

彼女から焦りにも似た声が聞こえてきた。

「どうした?」
「お醤油が切れてるの・・・」

これから彼女の手料理をご馳走になる。

「えぇ~!だって魚の煮付けだろ?」

醤油がなければ始まらない。

「う、うん・・・ごめん」

彼女らしいといえば彼女らしい。
でも、腹ペコの僕としては無視できない事態だ。

「どうする?」
「・・・悪いけど、買ってきてくれない?」
「僕が!?」

別に嫌じゃないけど、一応、“お呼ばれ”した身分だ。
多少、配慮も欲しい。

「だって、他の料理の準備もあるから・・・」
「ねっ!お願い!」

煮付け抜きでと言いたいが、それはメインディッシュだ。

「・・・分かったよ」
「ほんと!?ありがとう!」

ただ、近くにはスーパーどころか、コンビニもない。
そう考えると、気が滅入ってくる。

(No.717-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.716-2]本気の勝負

No.716-2

「そばに男子がひとり、居たんだよね」

それが何とも違和感があった。

「バトミントンをするわけでもなく、ただ、座ってた」

単に仲が良い友達との見方もできる。
でも、そうは感じなかった。

「・・・もうひとつの理由がそれね」
「うん」

かつて、私もひとりの男子をめぐって争ったことがある。

「その時の雰囲気によく似てたの」

同じテニス部ということもあり、テニスで勝負をつけた。

「・・・で、結果は?」
「惨敗・・・だった」

ただ、それは勝負をする前から分かっていたことだ。

「実力が違いすぎていたからね」
「それなら、テニスで勝負しなきゃよかったじゃん?」

けど、何かで白黒をつける必要があった。

「あなた・・・譲ったんでしょ?彼女に」
「そ、そんなんじゃないわよ!」

本気の勝負・・・相手を負かすために“本気”を出すのではない。
S716
(No.716完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.716-1]本気の勝負

No.716-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
バトミントンで遊ぶ子供たちが増えている。
多分、オリンピックの影響だろう。

「それは言えてるよね」

すぐに始められるスポーツでもあることも関係しているのだろう。

「昨日ね・・・子供たちのそばを通りかかった時に」

何やら意味深な言葉を聞いた。

「なんて言ってたの?」
「“これ、本気の勝負だよね”と」

女の子同士の会話だった。
見た目から判断すれば、小学生の低学年だろう。

「確かに意味深ね・・・」
「私もそう思った」

素直に聞けば、その通りの言葉だ。
遊びは遊びでも、“真剣にやろう”ということだ。
ただ、考えようによっては、深い意味があるように思える。

「・・・何かをかけた勝負?」
「そう!それも物ではなくて・・・」

つまり、人だ。

「好きな男子・・・って、こともありえる」

こう思うのには理由がふたつあった。

(No.716-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.297

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.224 落としたメモリー
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

同じUSBメモリーを持っていたことは事実ですが、それを知ったのは、“拾ったから”ではありません。

知るきっかけは、彼女がUSBメモリーを見せてくれたからです。なぜ、見せてくれたのかは、正直覚えていません。
たかが、同じUSBメモリーを持っていただけに過ぎないことですが、掃いて捨てるほど種類がある中で、偶然を超えた何かを感じずには居られませんでした。

この小説は、オチを最初から決めてから書き始めました。
USBメモリーから、“記憶”というメモリーを連想し、さらに、記憶を“想い出”に置き換えました。
ラストの一行は「記憶媒体を落としたら大変」という意味と「想い出を落としたら(失くしたら)大変」のふたつの意味を持たせてあります。

小説では、USBメモリーの中身を見せてもらっていますが実際は見ていませんし、何が入っていたか分かりません。
彼女は彼女で隠そうとする素振りはなく、僕は僕で知ろうともしていませんでした。よくよく考えなくても、個人の持ち物ですからね。
T297
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.715-2]変わらないもの

No.715-2

「時代は変る・・・変って当たり前だよ」
「・・・そうよね」

日々、緩やかに変化をしている。
気付かないレベルで。

「カセットテープを何本も持ち歩いてた頃が懐かしいね」
「あぁ・・・レーベルには曲名書いたよな」

今じゃ、音楽に“もれなく”付いてくる。

「そうそう!あれ書くのも楽しみのひとつだった」

今の若者に聞かれると笑われそうな話だ。

「でもさぁ、変らないところもあっただろ?」
「えっ!?なにが・・・」

彼が急に、問い掛けてきた。

「僕たちが付き合うようになった、きっかけ・・・覚えてる?」
「もちろんよ!」

彼が私に音楽を聞かせた。
ヘッドフォンの片方を私の耳にあてて・・・。

「あっ!昔からある常套手段だよね!」
「・・・だな」

そのバラードは愛の告白を歌ったものだった。
S715
(No.715完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.715-1]変わらないもの

No.715-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
最近、スマホで音楽を聴く機会が増えた。

「便利な世の中になったわよね~」
「おいおい・・・現代人とは思えない発言だな」

彼に呆れられた。

「でも、実際そうじゃない!」
「よくよく考えれば、“電話機で音楽”を聞いてるのよ?」

よくよく考えなくても言った通りだと思う。

「そりゃそうだけど・・・」
「それに、レコードやカセットテープの世代からすれば・・・」

今や音楽は単なるデータに過ぎない。
音楽そのものを実感することさえ希薄になっている。

「実際、ネットで音楽が買えちゃうわけだし」

そう考えれば、世の中は一変した。

「こんな便利になるなんて、想像もしてなかったよ」
「・・・まぁ、確かにな」

ただ、どこか寂しいような気もする。

「それは、昭和の人にありがちなノスタルジア?」
「言わないの!」

当たっているだけに、反論できない。

(No.715-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.714-2]モンシロチョウ

No.714-2

「だから、なんでここまで来たのかな・・・って」

モンシロチョウにも変ったやつが居たのだろうか。

「そうね・・・」
「上でも目指していたのかしら?」

もし、そうであっても理由を知るすべはない。
そもそも、彼らに意思などあるはずもない。

「そうかな?」
「そうだろ!?」

そんな話は聞いたことがない。

「じゃ、迷い込んだだけなのかな?」
「そう考えるのが妥当だろ」

単に強い風にあおられただけかもしれない。

「まぁ、なににせよ、関係ない話だけどね」

ベランダで虫が死んでいた・・・ただ、それだけだ。

「・・・とは言え、同情してるように感じるんだけど?」
「えっ!?まぁ・・・そうかもな」

確かに“ゼロ”ではない。
だからこそ、こんな話をしたのだろう。

「あっ!ほら、あれ見て!」

モンシロチョウが空高く遠ざかって行く。
まるで何かを追いかけるように。
S714
(No.714完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.714-1]モンシロチョウ

No.714-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ベランダで、モンシロチョウが死んでいた。

「死んでても珍しくはないよね?」
「普通ならね」

誤解を招きそうな表現だとは分かっている。

「変死・・・ってわけでもないよね?」

さながら、サスペンスドラマのような展開になってきた。

「そっち系じゃなくて」
「もう!早く答えを教えてよ」

昨日、ベランダでモンシロチョウが死んでいるのを見つけた。
ただ、そこはマンションの10階だ。

「えっ!?そんな所まで飛んできてたの・・・」

当然の反応だった。

「・・・みたいだな」
「確かに“普通”じゃないわね」

自由に飛びまわれる彼らだ。
10階に飛んできても不思議ではない。

「ただ、相当な高さだろ?」

それに、高く飛ぶ理由もないだろう。
子孫を残すのであれば、地上が理想だ。

(No.714-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

ホタル通信 No.296

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.348 女友達
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

タイトルにもなっている“女友達”は実在の人物です。ただ、何がきっかけで友達になったのかは覚えていません。

覚えていないというより、きっかけそのものがなかったように記憶しています。気付いて見れば・・・そんな言葉が良く似合います。
さて、その女友達との会話そのものは創作ですが、出てくるエピソードはほぼ事実です。
女友達に何人か彼女を紹介してもらいましたが、全員ダメになりました。高校生でしたから、つきあうのも別れるのも言葉は適切ではありませんが“軽い”ものでした。

当時、良く言えば“クール”だし、悪く言えば“無口”な自分でした。女子も会話も苦手としていたのは、小説に書いてある通りです。
そんな中で、女友達だけは苦手意識がなく、会話もごく自然でした。なぜ、そうなのか理由は分かりませんが、だからこそ、友達になれたのかもしれませんね。
実はこの女友達が紹介してくれた彼女の友達とも付き合うことになったことがあります。このエピソードはすでに発表していますので、探してみて下さい。
一時期、俗に言う三角関係になっていました。現在であれば、“ゲス”と言われそうですね。

ラストは創作です。特別「そうなって欲しかった」という希望的観測やそれらしき事実があって書いたのではなく、単に小説的な展開として書いています。
S296
web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.713-2]おふくろの味

No.713-2

「話を戻すけど、実家を離れてから、一度も食べてないの?」

微妙な部分を突いてきた。

「・・・う、うん・・・まぁ・・・」
「実家には帰っているんでしょ?」

頻繁ではないが、それでも年に一度は帰っている。

「それなら、言えばいいじゃない?」
「・・・なにを?」

一応、分からない振りをして、とぼけてみた。

「それを“食べたい!”って」

確かに、言ったことはない。
けど、言い難い状況がある。

「言い難い?」
「あぁ、気遣ってくれているだけに」

たまに実家に帰っても外食が多い。

「分かる、それ・・・うちもそうだから」

決して楽をしたいからではない。

「美味しいものを食べさせてあげたい・・・親心だと思う」
「だから・・・なかなか言えなくて」

そこには照れくささもある。

「思い切って言ってみたら?喜ぶと思うわよ」
「・・・そうだな」

なんだか、無性に食べたくなってきた。

「次、帰った時に、リクエストしてみようと思う」

「それなら、ついでにレシピも聞いておいてくれない?」
S713
(No.713完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.713-1]おふくろの味

No.713-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「私はね・・・」

流れで、“おふくろの味”の話になった。
テレビ等ではよく見聞きする話題だ。

「あなたは?」
「・・・そうだな」

今まで考えたこともない。
でも、すぐにある料理が思い浮かんだ。

「鶏のあし・・・」
「・・・あし?」

“骨付きのもも肉”と言えば良いのだろうか?
スーパーなどに普通に売られているものだ。

「早い話、クリスマスとかに、“かぶりつく”やつだよ」
「あぁ、アレね!」

その味付けに特徴があった。
多分、一般的なものではないだろう。
実家を離れて以来、それを口にしたことも店で見かけたこともない。

「どんな味だったの?」
「正確じゃないんだけど・・・」

微かな味の記憶を辿る。

「多少甘みがある、しょうが効いた味だったと記憶している」

醤油を使っていないためか、スープは透明に近い。
それで軽く煮込んだ料理だった。

「へぇ~何だか、美味しそうね」

味の記憶は不確かでも、美味しかった記憶は確かだ。

(No.713-2へ続く)

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

[No.712-2]一号店

No.712-2

「実家の近くに、一号店があるんだよ」
「そうなの?」

住んでいた頃は、その店が一号店だとは知らなかった。
つい最近、その事実を知った。

「なかなかないだろ?一号店が近くにあるなんて」
「・・・それはそうよね」

ありそうでないのが、チェーン店の一号店だ。

「だから、つい感慨深くなってしまって・・・」
「それで、ジロジロ見てたわけ?」

繰り返しになるが、嘘じゃないけど本当でもない。
いわば照れ隠しの行動だったのかもしれない。

「でも、何か隠してるでしょ?」
「えっ!?・・・それは・・・」

別にやましいことを隠しているわけではない。
ただ、今は言うタイミングだと思っていないだけだ。

「そのうち、話すからさぁ・・・」
「今じゃだめなの?」

彼女にしては珍しく追求してくる。
もう、バレているのかもしれない。

「それなら・・・言うけど、今度一号店に行ってみないか?」
「一号店だけでいいの?」
S712
(No.712完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
 ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »