[No.708-2]○○さん
No.708-2
「本屋だよ」
「・・・本屋さん?」
そこには今、向かっている。
私が小説を買いに行きたいと話したからだ。
「まぁ、本屋に限ったことじゃないけどね」
「お店に“さん”付けするのは」
「“さん”付け・・・?」
最初は意味が分からなかった。
それほど、無意識だったからだ。
「・・・あっ!本屋“さん”・・・ね」
「そう!洋服屋さんも雑貨屋さんも聞いたことあるぞ」
確かに、“さん”を付けて言ってしまう。
「だって、呼び捨てにしてるようで嫌なんだもん!」
それに、呼び捨ては、仲が良くないとできない。
“さん”付けは、ある意味、距離を置いているということだ。
「昔から、こうなの!!」
いつからだろう・・・気付けば、“さん”付けが普通になっていた。
「まぁ、まぁ・・・そう怒るなって」
「逆に良いんじゃない?俺は好きだな、そういうとこ」
どさくさに紛れて、ハートにボールを投げ込んできた。
「もう!変なこと言わないでよ、和樹(かずき)ったら!」
(No.708完)
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