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2016年8月

[No.712-1]一号店

No.712-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「さっきから、なにジロジロ見てるの?」
「あっ!・・・う、うん・・・別に・・・」

明らかに不自然な返事をしてしまった。
こうなると、もはや逃れられる術はない。

「初めてじゃないよね?」
「“この店”は初めてだけど、他の場所なら・・・」

全国にチェーン店を持っている、ハンバーグレストランだ。

「ほら、店ごとに個性的な作りになってるだろ?」

内装も外装も店舗ごとに個性がある。

「だから、どうなってるのかな・・・と」
「そうなの?・・・そんな風には見えなかったけど」

決して嘘じゃないけど、100%本当のことも言っていない。
それを・・・見抜かれている。

「う、うそじゃないよ!」
「私は“そう見えなかった”と言っただけだよ?」

彼女の術中にはまったようだ。

「元カノと来たことを思い出した・・・とか?」
「ち、ちがうよ!」

これについては100%本当のことだ。

(No.712-2へ続く)

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ホタル通信 No.295

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.360 ふたつの月 
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

少し話の辻褄が合わない部分はありますが、比較的お気に入りの小説です。

この小説は“月”をテーマにして、早々に映画の話題にすり変って行きます。ただ、すりかわったと言っても、“月”がテーマであることには変わりはありません。
ただ、妖しく光る月→映画の話・・・という流れでストーリーを考えたのではなく、実際はその逆でした。映画の印象が強く残っていたところへ、妖しい月が目に入った・・・という流れが小説を書くきっかけです。

ところで、小説に出てくる映画・・・何だか分かりますか?
多少、脚色しているので実際の映画と異なる部分もありますが、ほぼそんな感じのワンシーンがあります。
随所にヒントがあるので、考えてみてください。SF好きなら簡単に分かると思います。

さて、話を戻せば・・・彼女のアピールに気付かず、映画の話をし出す彼。ついつい、彼の話に食い付いてしまった彼女。
小説の90%くらいは、本来はどうでもいい部分であり、ラストで劇的な結末を迎えるというパターンです。
冬のホタルでは定番の手法ですが、無理矢理感が多い小説の中にあって、比較的、しっくりくる出来栄えです。

手前味噌ですが、5分程度のミニドラマとして映像化したら、文字よりも映えるんじゃないかと思っています。起承転結がハッキリしているのと、展開を裏切る衝撃のラストが待ち構えていますので。
T295
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[No.711-2]赤いシート

No.711-2

「けど、その原始的なのがいいんじゃない?」
「あはは・・・そうかもね」

変わるもの、変わらないもの・・・色々ある。

「あなたの向上心も変わらないよ」
「そ、そうかな・・・」

良くも悪くも中学からの付き合いだ。

「昔から勉強熱心だったじゃない?」
「昔は・・・ね」

社会人になってからは勉強もままならない。
時間がないというより、情熱が足りない。

「まぁ、OLと言えどもストレスはあるからね」
「OLと言えども・・・じゃなくて、OLだから・・・あるの!」

純粋な気持ちで勉学に励んでいた頃が懐かしい。

「周りに同じような人がいることに気付いてやる気がでたよ」
「その単純さも変わらないね!」

そう言う友人の口の悪さも変わらない。

「・・・ところで、赤いシートってさぁ・・・」
「正式な名前ってあるの?」

S711
(No.711完)
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[No.711-1]赤いシート

No.711-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
その気になって見れば案外多い。
デジタル全盛の世であっても・・・。

「・・・赤いシート?」
「ほら、英単語なんかを覚える時に・・・」

英語の勉強を再び始めた。
かれこれ何度目のリスタートだろう・・・。

「・・・あぁ、あれね!」
「そう!あれ」

電車の中で勉強している時だった。
目の前の学生も参考書らしきものを取り出した。

「そしたら、赤いシートが見えて」

その気になって周りを見ると他にも数人居た。

「へぇ~意外ね」
「でしょ!?」

今の時代、スマホで勉強できたりもする。

「アナログというか・・・変わらないね」
「確かに・・・そうよね」

原始的とも言えなくもない。

(No.711-2へ続く)

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[No.710-2]孤独なネコ

No.710-2

けど、特に何かがいる気配もない。
視線の先は、単なる住宅地が広がっているだけだ。

「何か見えているのかな?」
「どやろな」

僕たちには見えないものが見えているのだろうか。

「何か聞こえてるかもしれへんしな」
「それはありえるね」

それに嗅覚だって人間以上だろう。

「とりあえず、うちも一緒に見てみるわ」

そう言うとネコに近づき始めた。

「ちょ、ちょっと・・・」

予想に反して、ネコはその場を動こうとしない。

「何を見とんねん?」

彼女がネコに話しかけた。

「ネコは・・・・なんて?」

その場の雰囲気に乗ってみた。

「・・・遠い未来やて」
T710
(No.710完)
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[No.710-1]孤独なネコ

No.710-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・どうした?」

急に立ち止まり、一点を見つめている。

「あれ見てん」

指差す方向に一匹のネコがいる。

「ネコ・・・だよね」

一応、確認する。
特に珍しくもない光景だし、どこにでもいる三毛猫だ。

「何を見てるんやろね」

そのネコは顔を上げ、どこか遠くを見ている。
近くに居る僕たちのことは、まるで眼中にないみたいだ。

「何をって・・・そりゃ・・・」

なぜだが言葉が続かない。

「・・・まぁ、何だな・・・何か居るんじゃない?」

野生ならではの警戒の現れかもしれない。

「せやったら、うちらの方がよっぽど警戒されるやん!」
「そ、そうだよね・・・」

ネコの視線の先をもう一度確認した。

(No.710-2へ続く)

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ホタル通信 No.294

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.378 あめちゃん
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

実話度はほぼ100%です。100%だからこそのテーマかもしれません。

小説に出てくる“飴”のメーカーや商品名は覚えていませんが、メジャーではなかったことは覚えています。また、当時同じものを買おうと、コンビニやスーパーをいくつか巡っても売っていませんでした。
この小説は飴が表向きのテーマになっているものの、冒頭とラストから分かるように“彼女を疑ってしまった”ことこそが本当のテーマです。

「売ってたら買ってくる」なんて社交辞令だと思っていました。
自分も似たようなことを言うこともありますから。
でも、相当な日数が過ぎた後に買ってきてくれたので、結構ビックリしたのを覚えています。だからこそ、小説になったと思います。
結果的に、今までの中間報告が言い訳ではなかったことになるわけですから、それを疑っていたことに対する反省の念もあり、これの方が飴そのものよりも色濃く、小説に反映されました。

なんてことない小説なんですが、実話をベースにする当ブログの象徴的な小説のひとつかもしれません。
T294
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[No.709-2]ぬけがら

No.709-2

「でも、ほんとそうよね」

あらためて思うことがある。

「なにが?」
「だって、こんなたくさんぬけがらがあっても・・・」

いずれ消えてなくなる。
そう考えれば、少し物悲しくもなる。

「セミって、デビューして1週間くらいの命だっけ?」

言い回しは微妙だが間違ってはいない。

「・・・そうだったと思う」
「ぬけがらは、彼らが生きてきた証なのかもしれないね」

友人にしては、いつになく気の効いたセリフだった。

「そう言えば、言ってなかったけど・・・彼と別れたの」

友人の唐突なカミングアウトだった。

「ぬけがら・・・に触発されたの」
「ぬけがら?・・・また変なモノに触発されたわね?」

ぬけがらの“何が”友人をそうさせたのだろうか?

「ここにも“ぬけがら”が一匹、居るってこと!」

そう言うと、自分を指差した。
S709
(No.709完)
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[No.709-1]ぬけがら

No.709-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁっ!気持ち悪いぃ!」
「急に何よ!?ビックリするじゃない」

ある生き物と目が合ってしまった。
正しくは、もう生きていないが・・・。

「見てよ、あれ・・・」

目の高さの木の葉っぱに、セミのぬけがらがくっついていた。
それも、ひとつやふたつじゃない。

「大量じゃん!」

少なくとも十匹分はある。

「初めてみたよ、こんなにたくさん」

ひとつやふたつ程度ならよく見かける。

「でもさぁ、そのうち見かけなくなるよね?」
「それはそうよ」

たかがぬけがらだ。
そう長く、もつはずもない。

「じゃ、記念に一匹どう?」

そう言うと、ひとつ取って私の顔に近づけた。

「ちょ、ちょっとぉ!殴るわよ!」

セミ以上にうるさい私たちだった。

(No.709-2へ続く)

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[No.708-2]○○さん

No.708-2

「本屋だよ」
「・・・本屋さん?」

そこには今、向かっている。
私が小説を買いに行きたいと話したからだ。

「まぁ、本屋に限ったことじゃないけどね」
「お店に“さん”付けするのは」

「“さん”付け・・・?」

最初は意味が分からなかった。
それほど、無意識だったからだ。

「・・・あっ!本屋“さん”・・・ね」
「そう!洋服屋さんも雑貨屋さんも聞いたことあるぞ」

確かに、“さん”を付けて言ってしまう。

「だって、呼び捨てにしてるようで嫌なんだもん!」

それに、呼び捨ては、仲が良くないとできない。
“さん”付けは、ある意味、距離を置いているということだ。

「昔から、こうなの!!」

いつからだろう・・・気付けば、“さん”付けが普通になっていた。

「まぁ、まぁ・・・そう怒るなって」
「逆に良いんじゃない?俺は好きだな、そういうとこ」

どさくさに紛れて、ハートにボールを投げ込んできた。

「もう!変なこと言わないでよ、和樹(かずき)ったら!」
S708
(No.708完)
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[No.708-1]○○さん

No.708-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「えっ!?なになに・・・」

彼がクスクス笑い始めた。

「おかしなこと言ったっけ?」

自分ではごく普通の話をしていたつもりだ。

「ごめん、ごめん!」

謝りつつも、申し訳なさそうな雰囲気はない。

「寝癖とか・・・ないよね?」

慌てて、髪を確認する。
今朝、遅刻しそうになったからだ。

「もしそうだったら会った時に言うよ」
「とにかく・・・笑ったわけを教えてよ!」

幸いにも笑った顔に悪意は感じなかった。

「ほら、さっき本の話をしてただろ?」
「・・・してたよ」

小説好きの私は、ついペラペラとしゃべってしまう。
特に話題作が出ると。

「・・・迷惑?」
「だったら、少なくても笑ったりしないだろ?」

確かにそうだ。
迷惑なら怪訝な顔をすればいい。

(No.708-2へ続く)

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ホタル通信 No.293

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.222 微笑
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

自分で言うのも変ですが、大変懐かしい小説です。こんな時代もあったのかと・・・ある歌の歌詞ではありませんが。

実話度はかなり高めです。本当は100%でも良かったのですが、小説の冒頭が創作なので、少し控えめに設定しました。三人で逢う予定・・・ではなく、最初から二人で逢う約束をしていました。なぜ、わざわざ創作したのかは覚えていません。

もしかしたら、この小説だけかもしれない特徴を持っています。それは有名人の名前が直接的に書かれていることです。普段はある人・・・で片付けることが多く、それが誰であるかは、読み手に任せています。
ところが、この小説は一人どころか、多数の実名が出てきます。実話をベースにした小説ですから、当然と言えば当然なのですが、逆に嘘っぽく見えてしまうところが不思議です。

あえて言う必要もありませんが、彼女は実在の人物です。
でも、冬のホタルではこの小説にしか登場していません。
だからこそ、話は戻りますが「こんな時代もあったのか」と想うわけです。
T293
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[No.707-2]次の約束

No.707-2

「次、どうする?」
「来週は用事があるから、再来週かな」

いつしか、週一で会うようになっていた。
それでも少ないくらいだと思っていた。

「そうなんだ・・・何とかならない?」
「ごめん、無理なんや」

たかが、一週間会えないだけだ。
けど、今の僕には、それさえも苦痛に感じる。

「そっか・・・ちょっとの時間でも・・・」
「ごめんな」
「そっか・・・」

少し辛抱すればいつも通り会うことができる・・・。
そう自分に言い聞かせることにした。

「じゃぁ、また連絡する」
「うん」。

今、一番欲しい物は?と聞かれたら間違いなくこう答える。
“次の約束”だと。
S707
(No.707完)
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[No.707-1]次の約束

No.707-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「じゃぁ、またね!」
「うん、またね!」

最初はどこにでもある別れ際の挨拶だった。
それが、いつしか様相が変わり始めた。

「じゃぁ、また・・・次はいつ会える?」
「そやね・・・」

つい、口から出てしまう。
今、決める必要もないのに・・・。

「来週の金曜日はどう?」
「・・・多分、大丈夫やと思う」

僕らの関係は、いつ切れてもおかしくない・・・。
出会った時から、そんな関係だった。
けど、以前は先のことは考えなかった。

「それなら金曜日で」

今は違う。
関係が切れないように、次の約束を取り付ける。
それが、いつしか心の拠りどころになっていた。

(No.707-2へ続く)

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