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2016年5月

[No.693-1]変な習慣

No.693-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「急に暑くなって来たわね」
「・・・だね」

夏を前に、連日、暑い日が続いている。
急激な気温の変化に、もはや体もバテ気味だ。

「こんな日は早く帰って、お風呂にでも入りたいね」
「それより、その後の“一杯”が目的なんでしょ?」
「あったりぃ~!」

それは私も否定しない。

「あっ、そうだ!お風呂のことで聞きたいんだけど?」
「ん・・・なに?」

自宅の浴槽は、ごく普通のサイズだ。
足を完全に伸ばせないまでも、窮屈には感じない。

「賃貸だから、どこにでもあるタイプだと思う」
「私の家も、そんなものよ」
「でね、半分しか使ってないの」

つまり、湯船で足を伸ばさず、体育座りの格好をしている。

「だから、半分以上、空いてるんだよね」

誰も居ないわけだから、足だって伸ばせる。
なのに、わざわざ窮屈な格好をしてしまう。

(No.693-2へ続く)

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[No.692-2]息苦しい

No.692-2

「どんな?」
「さっき言った通り、乗っかっている夢だよ」

いつもの場所でぐっすり寝ていた。
よほど居心地が良かったのかもしれない。

「・・・微乳だから?」
「それは言わないの!」

でも、布団をかぶれば微乳も巨乳も関係ないはずだ・・・多分。

「夢の中だけど、息苦しくなって、目が覚めたの」
「そう言えば、死んだの丁度、1年前くらいよね?」
「そうだよ・・・偶然だけど死んだ日に見たの」

友人が何か言いたそうだ。
その季節には若干、早いが・・・。

「それって・・・やっぱり」
「偶然よ、単なる偶然・・・」

友人の言いたいことは分かっている。
それに当たっているとも言えるし、外れているとも言える。

「でも、去年の死んだ日にだよ?」
「だから、偶然なの・・・単なる偶然!」

偶然なのは間違いない。
ただ、その偶然を引き起こす何かについてまでは否定はしない。

「息苦しくて目覚めたら、彼の足が胸の辺りに・・・」
S692
(No.692完)
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[No.692-1]息苦しい

No.692-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今、空前のネコブームよね?」

空前かどうかは知らないが、そんな雰囲気はある。

「そうかもしれないね」

感覚的には、犬派が多いと感じていた。
飼い主に従順で、頼りにもなる。

「そう言えば、以前飼ってたよね?」
「うん・・・1年前まで」

飼っていたネコは寿命を全うして死んだ。
だから、思いのほか辛くはなかった。

「気まぐれなところがウケてるんじゃない?」

今で言う“ツンデレ”だ。
甘えるときには、呼ばなくても自分から擦り寄ってくる。
けど、それ以外は呼んでも来ない。

「そうかもね、ベタベタしないところが今風なのかもね」
「それにさぁ・・・」

夜中、息苦しさに目覚めると、上に乗っていることがある。

「丁度、胸のあたりに乗ってるから・・・」

そこそこの重量だ、苦しくもなる。

「そう言えば、数日前にそんな夢を見たよ」

(No.692-2へ続く)

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ホタル通信 No.285

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.386 片親
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

実話度は低めにしています。実際にこのような会話をしたわけではないからです。

ただ、猫の自体は実話で、これに彼女の生い立ちを重ねあわせたような小説です。あえて、彼女の生い立ちを話すつもりはありませんが、タイトルも含め、何となく感じとって頂ければと思っています。

会話をしたわけじゃない・・・そう前述しましたが、それは小説のように猫を前にして会話をしなかっただけです。
逆に彼女とは“このような”話をする機会が多かったように思えます。
決して幸せだったとは言えない自分の生い立ちや生活環境を恨んでいたわけではありませんが、色々な疑問を抱えながら生きてきました。

そんなこんなで、ココロの病とも闘う彼女と、たまたま通り過ぎた猫の親子が、考えることもなく自然に結び付きました。でも、実際は父親とも離れ、母親とも疎遠になり、言わば天涯孤独状態であったのも事実です。

今回のホタル通信はやや暗めの内容でしたが、何度か書かせて頂いた通り、これこそが“冬のホタル”の真髄です。
T285
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[No.691-2]車のゲーム

No.691-2

「お兄ちゃんによく誘われたよ」
「けど、一応、男子向きじゃない?このゲーム」

そう言われるとそうだ。
女の子が遊んでいたような記憶はない。

「小さい頃は車好きの女の子なんて居なかったでしょ?」

確かに身近にそんな子は居なかった。

「まぁ・・・居たとしても言わないだろうな」
「そうね」

車はどちらかと言えば、男子の領域だ。
とにかく、もうそのゲームを見かけることもなくなった。

「懐かしい話ね」
「そうだな」

そう言えば、なぜこんな話の展開になったのだろう。
他にもたくさん写真を見ていたのに・・・。

「なんでだろうね?」
「今、車を運転してるからじゃない?」

確かにそう考えるのが妥当だろう。
運転してるから、さっきまで見ていた写真を思い出した格好だ。

「ゲームと違って安全運転で行くぞ」
「そうね、それが一番!」

ハンドルを握る“彼女”の表情が一段と真剣になった。
S691
(No.691完)
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[No.691-1]車のゲーム

No.691-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「知ってるよ、それ」
「お兄ちゃんも好きだったから」

さっきまで子供の頃の写真を見ていた。
そこに、あるゲームが映っていた。
・・・とは言え、家庭用じゃない。

「場所はどこ?」
「動物園だよ」

当時、行楽と言えばもっぱら動物園だった。
時々、入場料が無料になることがあったからだ。

「大人になった気分だったな」

一言で言えば、車のゲームだ。
ハンドルを操作して、車の模型を動かす。

「単に舵を切ってるだけだったけどね」

車は固定されたままで、道路が動く。
つまり、変化する道路にあわせて、車を左右に動かすだけだ。

「男子は好きじゃない?こういうの」
「まぁな」

当時、ゲームと言えばこのようなものが主流だった。

「写真からでもそれが伝わるもん!」

写真の中の僕は、真剣そのものだった。
顔は映ってなくても、背中がそれを物語っている。

(No.691-2へ続く)

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[No.690-2]最後の手紙

No.690-2

でも、渡したのは覚えているのに、どこで渡したか覚えてない。

「どういうこと?」
「いつもなら、学校内で渡してたんだけど」

最後の手紙だけは、場所の記憶がない。

「少なくとも学校の中ではないと思うんだけど・・・」

それに手紙だからと言って郵送したわけでもない。

「じゃあ、外で会ってた時くらいしかないわよね?」
「でも、そうそう外では会わなかったし」

付き合っていると言っても高校生だ・・・たかが知れてる。

「友達に頼んだとか?」
「ううん・・・ちゃんと彼を目の間にして渡したよ」

辛い出来事なので、記憶が消失したのだろうか?
とにかく、どこで手紙を渡したのか覚えてない。

「それなら、同じことする?」

幸か不幸か、元カレがまだ地元にいることは知っていた。

「ねっ!聞いてスッキリしたでしょ?」
「まぁ・・・ね」

スッキリした反面、“知らなかった方が良かった”とも思った。

「渡したんじゃなくて、彼から“渡されてた”なんて・・・ね」

それも校門すぐ出たところで渡されたようだった。
こんなシチュエーションなら覚えてられない・・・笑っちゃうけど。
S690
(No.690完)
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[No.690-1]最後の手紙

No.690-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(・・・自分の時はどうだったっけ?)

あらためて振り返ってみても肝心な部分が思い出せない。

「最後の手紙?」
「うん、昨日テレビでさぁ・・・」

学生時代の元恋人に会いに行く企画をやっていた。

「それなら、私も見たよ」
「女性が元カレに会いに行ってたよね?」

企画としては特に珍しいものではない。
逆にありがちな内容だ。

「それで、手紙の話になったでしょ?」

今は珍しいかもしれないが、昔は手紙のやり取りも多かった。
そう簡単には電話では話せなかったからだ。
かと言って直接話すのも照れくさい。

「そうそう!それって“恋愛あるある”だよね」
「私もそんな感じだったの」

クラスが違うこともあり、休み時間に渡すことが多かった。

「・・・でも、卒業を前に別れることになったんだ」

別れる理由は、正直もう覚えていない。
ただ、最後に手紙を渡したことは覚えている。

「それが、テレビと同じだった?」
「そう」

テレビの女性も元カレに手紙を渡した。
最後の手紙を。

(No.690-2へ続く)

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ホタル通信 No.284

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.389 一瞬が全てを変える
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

シチュエーション的に見れば、細かなところを除いて、概ね事実です。

実際、地下鉄の通路にポスターが貼られていました。ただ、何の宣伝だったのかは、さすがに覚えていません。何となく、学校や教育関係の宣伝だったような、そんな気はしています。

ほぼ事実でありながら、実は肝心な部分は創作です。
一瞬で変わった私とポスターの前で立ち止まっている制服姿の女の子がそうなんです。言い換えれば、私はその瞬間に変わってないし、女の子も本当は存在していません。
ただ、心動かされたのは事実であり、その強烈な印象を描いたものです。
最後に女の子を登場させたのは、単なる演出ですが、文字としてよりも、映像的な効果を狙いました。つまり、映画などのラストシーンとして、相応しいのではないかと。

最後になりますが、人が心を動かされる時は、満たされている時より、何か不安を抱えている時だと思っています。
当時の私もそうでした。
T284
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[No.689-2]宝箱

No.689-2

「ちょっと・・・」
「さっきの映画より面白い展開になってきたじゃん!」

地面から三分の一ほど、顔を覗かせている状態で発見した。

「最初は単なる木片かな?って思ってた」

でも、よく見ると金具が見えた。
それに、さびてはいたけど、なにやら装飾が施してあった。

「何だかドキドキしてきた」
「それで、好奇心も手伝って掘り起こしてみたの」

だからと言って、宝箱とは思って居なかった。
ただ、中身を知りたい衝動に駆られただけだった。

「・・・で、中身は?」
「聞きたい?」
「そりゃそうでしょ!ここまできて」

ベースが木だけに、あちこち腐って穴が開いていた。
それだけに嫌な予感はあった。

「ヘビが何匹か入ってたわ」

結局、それ以外、何も入ってはいなかった。
思わせぶりな箱も、よく見れば普通の木箱だった。

「今日の合コンでもそうならないようにね」

合コンを目の前に、何やら意味深な友人の一言だった。
S689
(No.689完)
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[No.689-1]宝箱

No.689-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
映画の内容よりもある一場面が気になった。

「ほら、いかにも!って箱が出てきたじゃん」

単なる古びた箱じゃない。
宝物が眠ってそうな、そんな雰囲気を持った箱だ。

「まぁ、確かに・・・」
「実際、宝物よりも貴重なモノが入ってたし」

宝箱から金銀財宝が溢れんばかりに顔を覗かせている。
そんなシーンを目にすることも少なくない。

「それでさぁ・・・小さい頃ね」

小さい頃は男子顔負けのやんちゃぶりだった。
いつも近所にあった、森で遊んでいた。

「だから、遊びと言えば探検ごっこなんだよね」
「聞くまでもないけど、隊長だよね?」

さすが友人、私のことをよく分かっている。

「森・・・探検・・・宝箱・・・なんとなくつながりがあるわね」
「その通り!」

遊び慣れた場所とは言え、未知の場所も多い。
そんな時、森の奥で古びた箱を見つけた。

(No.689-2へ続く)

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[No.688-2]私はそんなに偉くない

No.688-2

「・・・なにかピンと来ない?」
「漢字は関係ないんだよね?」

関係があると言えばあるし、ないと言えばない。

「そうだね・・・漢字がアレなら完璧だけどな」
「じゃあ、店員になったつもりで、呼んで見てくれる?」

店員になってみればすぐに分かることだ。

「えっ・・・と、じゃぁ・・・かみ・・・あぁ!」
「だろ?」

ようやく気付いたようだった。

「なるほど!面白い話ね」
「でも、本人にして見れば、事実なんだろうし」

それに笑わせるつもりは毛頭ないだろう。

「さっきも、そう呼ばれてたよ」

おそらく店員は気付いていなかったのだろう。
それは周りの人もそうなのかもしれない。

「ただ、僕には“予備知識”があったからね」

隣の“かみさま”は、3人連れのようだった。
S688
(No.688完)
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[No.688-1]私はそんなに偉くない

No.688-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「さっき、並んでいる時に・・・」

行列が出来る店に並んでいた時のできごとだ。
僕の隣の人が、その友人と会話し始めた。

「聞き耳立ててたの!?」
「そ、そんなんじゃないよ!」

別にコソコソ話していたわけじゃない。
だから、普通に耳へと入ってきた。

「行列だけに、行列にまつわる話をし始めたんだ」
「どんな?」

行列ではよく順番待ちのために名前を書くことが多い。
山田とか佐藤とか・・・。

「で、隣の人の名前がさぁ・・・」
「変わった名前の持ち主とか?」

普通なら、その展開になるだろう。
聞いたこともないような名前の持ち主が隣に居た・・・と。
ただ、今回は少し違う。

「いいや、そんなに変わった名前じゃない」
「なんて名前の人なの?」
「“かみ”という名前らしい」

残念ながら、会話だけでは漢字までは分からなかった。

(No.688-2へ続く)

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ホタル通信 No.283

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.225 前にススメ!
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

前回のホタル通信でも書きましたが、なんでも恋愛話に結び付けてしまうパターンの小説です。

とは言え、無理矢理結び付ける場合と最初から狙ってそのような展開にする場合とがあります。
今回は後者で最初から恋愛話に結び付けられるような話を主軸に持ってきました。従って、話の主軸である資格取得の話は事実です。

また、恋愛の話も事実ではないにせよ、その恋愛感については全くの創作ではなく、多少事実に基づいたものです。
資格取得を例にあげれば、ひとつのことに納得できないと先に進めないタイプで、なかなか理解できない事柄があると途端に勉強が進まなくなる傾向にあります。
加えて、どうせ受験するなら、「とりあえず合格すれば良い」ではなく、「100点を取って合格するぞ」の意気込みを持っています。

これが個人プレーの受験勉強だから良い物の、これが恋愛という対戦プレーなら面倒極まりない女になりますよね。
ただ、それを口にするというか、小説にしてしまうわけですから、どこかでそれを楽しんでいるのかもしれません。

今でもこのスタイルは変わりませんね。良い意味で諦めていますので。
T283
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[No.687-2]能天気な発言

No.687-2

「それに、大型連休がね・・・」

じきにやってくる大型連休が新人には鬼門だ。
現実逃避するには、絶好の逃げ場所になる。

「何人だっけ?辞めたよね」

去年も連休後に会社を辞める人が何人かいた。

「結果的に半分以上、辞めたかもしれない」

両手ほど居た同期も、今では片手に収まる。

「だから彼女も辞めなきゃいいな・・・って」
「そう考えると、大型連休は微妙ね」

緊張の連続から解放されて一息付くことができる。
反面、実家に戻ったり、地元の友達と会うことで気持ちが揺らぐ。

「私も気持ちが揺らいだな・・・」
「・・・それは私もよ」

とにかく、今は何かとストレスを感じる時期だ。
良くも悪くも・・・。

「彼女、どうなるのかな?」
「まぁ、私たちでも大丈夫だったから何とかなるんじゃない?」

能天気な友人の発言だけど、今だけは心強く感じた。
S687
(No.687完)
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[No.687-1]能天気な発言

No.687-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今日、スーツ姿の女の子とすれ違ったんだけど」

いわゆるリクルートスーツだ。
まだ、幼さが残る彼女には、不釣合いに見えた。

「そう言えばよく見かけるよね」
「そりゃ、今時期だもん」

入社後、ようやく1ヶ月・・・そんな時期だ。

「ただね、表情が暗かったんだ」

足取りも重く感じた。
たくさんの荷物を抱えていたせいもあるだろう。

「そりゃそうよ、だってまだ・・・」

期待と不安が入り乱れている時期だ。
不安が強ければ暗くもなる。

「そうね、私たちも同じだったわね」

まるで去年の私たち見ているようだった。
期待よりもはるかに不安の方が大きかった。

「だから、人ごとと思えなくて」

今でこそ冷静で居られるが、当時は当時で辛かった。

(No.687-2へ続く)

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[No.686-2]謝恩会

No.686-2

「・・・ということは、そこに好きな人が居たの?」

当然の展開だろう・・・でも、決して、そうではなかった。

「いいや、当時、他の学校の子とつきあってたから」

確かに女子は居た。
先輩にも後輩にも、そして同級生にも。

「それなら女子を意識して?」
「いや、それもないな」

悪い意味ではなく、彼女たちは眼中になかった。
女子と言うより、部員として見ていたからだ。

「とにかく、姉に頼み込んで」

可能な限りのオシャレをした。

「まぁ、色気づく年齢だったこともあるんじゃない?」
「そうだな・・・そんな気がしてる」

話を戻せば、それ以外、ほとんど記憶に残っていない。
何を話し、何を食べたのだろうか・・・。

「もう一度聞くけど・・・」
「だから、飲んでないよ!」

大切な想い出のはずなのに、悲しいくらい覚えてない。
多分、アレの印象が強すぎたからだろう。

「・・・アレ?」

謝恩会の帰り、高校のグランドで最後の練習をした。
その時、本当の意味で先輩に感謝し、皆で泣いた。
S686
(No.686完)
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[No.686-1]謝恩会

No.686-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「謝恩会?」
「あぁ、高校の時、クラブの先輩を送り出す時に・・・」

自分が高二の時だった。
それに高三の先輩が、いわゆる“引退”する時期でもあった。

「一応、その名目で部員が集まったんだ」

先輩への感謝がなかったわけではない。
けど、どちらかと言うと、今で言う“飲み会”に近かった。

「もちろん、アルコールはなかったけど」

学校近くの喫茶店を貸し切った。

「へぇ~、すごいじゃん」

当時の喫茶店は、学生には敷居が高かった。
お金の問題以前に、大人な場所だったからだ。

「じゃ、そこで色々あった話をしてくれるのね?」
「それがさぁ・・・」

かなり、非日常な出来事だったわりにはほとんど記憶がない。

「お酒、飲んでなかったんだよね?」
「も、もちろんだよ!」

この言葉に嘘はない。
それは自分も含めて全員そうだった。

「舞い上がってたのかな・・・」

目いっぱいオシャレした記憶は大いに残っている。

(No.686-2へ続く)

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