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2016年3月

[No.678-2]言葉のちから

No.678-2

「・・・本題?」

どうして、“すりきれる程”聴いたのだろうか?

「どうして・・・って」

単に好きなだけかもしれないが、歌にするならインパクトは弱い。
ありがちかもしれないが、それには“涙”がよく似合う。

「失恋や別れとか?」
「そうだな・・・少なくても明るいイメージではないよな」

この歌の歌詞もそうだ。
“あの頃たった一人の友達だった”と続いている。

「友達が居なかったと言うより・・・」
「孤独感を強調したんだと思う」

もともと、恋愛の歌だ。
苦悩している姿が時間の流れと共に描かれている。

「話は戻るけど、CDならこうはいかない」
「傷が付くほど・・・とは意味が違うもんね」

このフレーズは大いに想像力をかきたててくれる。

「すごいよね、“言葉のちから”って」

この歌は最後にこう締めくくられている。
“明日への希望へと変えてゆこう”と。

(No.678完)
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[No.678-1]言葉のちから

No.678-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「“言葉のちから”ってすごいよね」
「どうしたの!?急に・・・」

最近、ある歌の歌詞を知った。
正確に言えば、昔から知っていた歌詞をあらためて噛み締めた。

「昨日さぁ、なにげなく、歌詞カードを見ていたら」

あるフレーズが飛び込んできた。
何度となく耳にしているのに、文字で見ると新鮮に映った。

「どんなフレーズなの?」
「“すりきれる程 聴いたアルバム”って、フレーズ」

これには多くの意味が含まれている。

「そもそも“今は”すりきれないだろ?」
「・・・たしかに」

もちろんアルバムとは、レコードのことを指している。

「若い世代なら意味が分からないかもな」
「そうね・・・“CDって、すり減っちゃうの!?”なんてね」

つまり、すりきれるほど、何度も聴いたことを意味している。

「針の説明も必要だけどな」
「で、なきゃ、すり減る理由が分からないもんね」

それはさておき、ここからが本題だ。

(No.678-2へ続く)

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ホタル通信 No.278

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.217 変えない理由
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

軽く読み直して気付きました。さて、この小説のモデルは誰だったのか?・・・と。

だからと言って、その人が思い浮かばないのではなく、逆に該当する人がふたり存在し、どちらの人のことを描いたものか最初、区別が付きませんでした。
それもそのはずです・・・よくよく読んでみるとそのふたりの話が混在していたからです。

そもそもメアドを変えない理由は、Aさんの存在があったからです。小説に書いた通り“来るかもしれないメール”を待っていたからです。
“落ち着いて気が向いたらメールして”は、Bさんに対して言ったセリフです。このふたつが意図的ではないにせよ、混ざってしまいました。シチュエーションが、比較的似ていたために、混同してしまった感は否めません。

さて、そのメアドの“今は”と言いますと・・・。
今も当時と変わっていません。理由は今も昔も同じです。
ですが、さすがに“来るかもしれないメール”を待っているわけではありません。
今は“来るはずのないメール”を待っていると言ったほうが正解ですね。

全体的に少しブルーな話だっただけに、ラストはコミカルタッチで締めくくってみました。
T278
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[No.677-2]今、この経験が・・・

No.677-2

富士山を通り過ぎようとする頃だった。
話題はいつしか、趣味の話になっていた。

「ブログを書くのも趣味のひとつかな?」
「え~!?どんなのですか?」

2009年から、日常を小説風にしたブログを始めた。

「あくまでも小説“風”なので」
「でも、すごいすごい!」

ことのほか、驚いてくれた。
それに褒め上手と言うか、盛り上げ上手と言うか・・・。

「例えばどんなのですか?」

最近の小説をいくつか紹介した。

「日常のささいなネタから、作っているんですよ」
「・・・じゃあ、こんなのはネタになりますか?」

彼女が身の回りで起こった話をし始めた。

「・・・どうでしょうか?」
「そ、そうですね・・・」

見知らぬ人に、小説のネタを提供されている。
もちろん、初めての経験だ。

「どんな話でも、ラストは悲しい涙では終わらせない」
「・・・それがポリシーなんですよ」

つい、熱く語ってしまった。

「そうなんだぁ・・・素敵ですね!」
「じゃぁ・・・もうひとつ・・・こんなのはネタになりますか?」

いやいや・・・それより、今、この経験自体がネタになる。
S677
(No.677完)
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[No.677-1]今、この経験が・・・

No.677-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「昨日と違って、今日は冷えますね?」
「そうですね」

座席に着くなり、隣の知らない女性に話しかけられた。
まるで知り合いかのような自然な口ぶりだ。
それは・・・不思議と僕も同じだった。

「どちらまでですか?」
「新大阪までです」
「じゃあ、一緒ですね!」

もしかして・・・
新手の“勧誘”なんだろうか?

「お仕事ですか?」
「えぇ・・・昨日から東京に出張だったので、その帰りです」

怪しげな雰囲気を感じながらも、つい正直に話してしまった。

「あなたは?」
「私は遠距離の彼に久しぶりに・・・」

なるほど、そういうことか・・・。

「明日、彼の誕生日なので」

嬉しさを隠せず、つい、話しかけてしまったのだろう。

「・・・あっ!すみません、さっきからベラベラと・・・」
「僕は構いませんよ」

ただ、本音を言えば寝かして欲しい。
でも、そう言うわけにも行かないだろう。
目が輝いているからだ。

「よかったぁ!それでね・・・」

大阪までの約2時間半の旅がこうして幕をあけた。

(No.677-2へ続く)

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[No.676-2]無駄な時間

No.676-2

「心配ごとでもあるの?」

聞いたのはいいが、“ない”ほうが珍しいのかもしれない。

「ほら、私、料理とか・・・何もできないじゃない?」
「まぁ、私もだけどね」

花嫁修業らしきことは一切していない。
毎日をただ、おもしろおかしく生きてきた。

「今になって、ちょっと後悔してる」
「・・・」

友人と過ごしてきた日々はそれはそれで楽しかった。
けど、後に残るものがないのも事実だ。

「無駄な時間を過ごしてきたのもしれない」
「・・・そうね、私たち」

友人のプロポーズ話が、思わぬ方向に向かった。

「でも・・・ね」

確かに何も残らない日々を過ごしてきた。

「それもそのはずよ」
「・・・どういう意味?」

私たちの今は、無駄な時間でできている。
言い換えれば、無駄な時間を燃料にして走ってきた。

「いつだって、完全燃焼だったでしょ?私たちって!」
S676
(No.676完)
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[No.676-1]無駄な時間

No.676-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ふぅ~」

友人が聞こえるほどの大きな息を付いた。

「聞いて欲しいわけ?」
「えっ!いいの!?」

そのつもりだったことは百も承知だ。

「・・・で、何なの?」
「実は・・・彼のプロポーズを受けようと思ってるの」
「そ、そうなの!?」

友人に彼が居ることは知っている。
結婚まで秒読みだったことも含めて。

「いざ、口に出されるとビックリしたよ」
「そうよね・・・自分でも驚いてる」

友人の言葉にはそれなりの意味がある。
私たちは決して落ち着かないタイプに見えるからだ。

「遊びが一番!みたいな私が・・・家庭を持つんだよ?」
「それは私も同じよ」

仕事は仕事でキチンとしている。
けど、それ以上に遊びも“キチン”としている。

「けど、良かったじゃない?」
「・・・それが、さぁ・・・」

早くもマリッジブルーのような雰囲気が漂っている。

(No.676-2へ続く)

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ホタル通信 No.277

舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.336 温度差
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

冬のホタルでは、“空き地”を題材にした小説が少なくありません。

それこそ空き地なので、何もない所に小説を書くきっかけなんてあるの?と思うかもしれません。格好をつけるつもりはありませんが、私にとってはきっかけの宝庫のひとつなんですよ。
その代表的なきっかけが、“空き地以前の姿”を覚えていないということです。この小説以外にも、これを題材にした小説がいくつかあります。

それこそ毎日目にしていたはずなのに、思い出せないことがよくあります。今回の小説もそれをベースに展開させて少し強引ですが駄菓子屋の話へと繋げています。
実は、空き地と駄菓子屋は現実には全く違うところに存在しています。
ただ、駄菓子屋も小説を書いたずっと以前に、無くなっていました。
前述した通り、“空き地には何もない”はずなんですが、そこには色々な思い出が詰まっていることを言いたかった小説なんですよ。

最後にもうひとつ言わないといけないですね。
なぜ、タイトルが温度差なのか・・・名付けの親である私も少し考えてしまいました。
でも、小説を読み返し、ラストの2行からすれば「あぁなるほどね!」と納得することができました。
T277
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[No.675-2]忘れてたから思い出す

No.675-2

「“忘れてた”ってことよね?」
「あっ・・・」

友人も驚きを隠せないようだ。

「今まで考えたこともなかったよ」
「私もよ」

思い出すのは、忘れていた証拠でもある。
あえて“悪者”にしようとは思わないけど事実だ。

「だから、忘れちゃいけないこともあるよね・・・きっと」
「でも、忘れなきゃいけないこともあるよね?」

どれくらいの時間だろうか・・・しばらく沈黙が続いた。

「仕方ないよ・・・引き出しの数はたくさんあっても」
「常に開けていられるのは僅かしかないんだもん」

何かを開けたら、何かを引っ込めなきゃならない。
思い出はそんなものだと思ってる。

「そうね、忘れてたんじゃなくて、ただ閉まってるだけ」
「それを開ける鍵が、例えば“卒業証書”というわけね?」

いつになく真面目な会話をしている。

「そう!思い出の鍵はみんな持っている」

だから、決して忘れていたわけじゃない。

「けどさ、あえて捨てた鍵もあるでしょ?」

友人が何を言いたいのか想像は付いている。
S675
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[No.675-1]忘れてたから思い出す

No.675-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それは新聞の社説に書かれていた。

「思い出す?」
「うん・・・その行為に何か引っ掛かるものはない?」

すぐに結論を言ってしまうのはもったいない気がする。
それだけインパクトがあったからだ。

「特にないけど・・・思い出すことが何か?」
「“思い出す”ってことは?」

答えが出るまでもう少し引っ張りたい。

「・・・ってことは、思い出を持ってるから?」

思い出や思い出す行為に悪い印象を持つ人はいないだろう。
私も新聞記事を目にするまではそうだった。

「例えば今なら、卒業式のこと、思い出さない?」
「まぁ・・・そうかな」

もう少しすれば、卒業証書を抱えた学生を目にするだろう。

「4月になったらなったで・・・」

今度は着慣れない真新しい制服を着た学生で溢れ返るだろう。

「そろそろ答えを教えてくれてもいいんじゃない?」
「ごめん!ごめん!」

何かのきっかけで思い出す。
今までの話なら、卒業証書であり、真新しい制服だ。
つまり・・・。

(No.675-2へ続く)

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[No.674-2]きっかけはお風呂から

No.674-2

「とにかく・・・面倒になったってこと!」

けど、良い所もある。

「良い所?」
「うん、妙に落ち着くのよね・・・」

古いからと言って、ボロボロではない。
古いなりの手入れがキチンとされている。

「全然、今風じゃないから、逆にそれがいいのかもね」

格好よく言えば、ノスタルジックに浸れる。

「おばあちゃんの家を思い出す?」
「・・・それもあるね」

昔を思い出すこともあれば、この先を考えることもある。

「ひとり暮らしを始めてから」
「何だか色んなこと、考えるようになったなぁ・・・」

それが先か、お風呂が先かは分からない。
でも、そのきっかけはお風呂が作ってくれた。

「何だか、そのお風呂に興味が出てきたよ」
「そう?・・・なんなら家に入りにくる?」

この会話なら自然な流れだ。

「いいの?入って?」
「言っとくけど、い、いっしょじゃないからね!!」

とにかくこのお風呂は色々なきっかけを作ってくれる。
S674
(No.674完)
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[No.674-1]きっかけはお風呂から

No.674-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
(まっ、こんなものか・・・)

下見をしていたとは言え、いざ住んでみると・・・。

「お風呂?」
「一応、付いてはいるんだけど・・・」

大学への進学を期に、ひとり暮らしを始めた。

「古いアパートだから中身もそれなりなんだよね」

それでも今の私にはそれが精一杯な状況だ。
親の仕送りには頼らない・・・そう決めたこともあるからだ。

「そんなにひどいんだ?」
「“ひどい”と言うわけではないんだけど」

良く言えば昭和テイストだ。
小さい頃、祖母の家に泊まった時と同じ“匂い”がする。

「ほら、極端に言えば・・・」
「お湯なんて蛇口をひねれば出るじゃない?」

私たちの世代はそんな環境で育った。

「でも、今のアパート・・・ちょっと面倒で」

シャワーを使うには瞬間湯沸かし器を動かす必要がある。
お風呂は水を入れて、それを沸かすタイプだ。

「経験ないよ!」

私も最初はそうだった。

(No.674-2へ続く)

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ホタル通信 No.276

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.367 姓名判断
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

冬のホタルではお馴染みの、結末を中途半端に終わらせて、皆さんに考えてもらうような手法です。

さて、その中途半端な結末につながる流れをあらためて解説しますね。ポイントは大きく三つあります。
一つめは、占いの反対のことが起きているということです。
占い上では僕は不幸に、そして彼女は幸せに恵まれるとでます。一方、現実ではそれぞれ逆になっています。つまり、僕は幸せで、彼女は不幸であると・・・。

二つめは、“ある名前”がなんであるかということです。
多分、姓名判断をした人なら、一度や二度、試したことがあると思います。
そうです・・・僕の“姓と”彼女の“名”を組み合わせて試してみたんです。その理由は言うまでもありません。
そして三つ目は、彼女も僕と同じ組み合わせを試していたことです。

つまり、僕の“姓”と彼女の“名”の組み合わせで占った場合、端的に言えば彼女は“不幸に”なる結果が出ていたんです。
普通なら、落胆するはずなんでしょうが、占いと現実が逆になっているということを彼女自身が知っていたため、「余裕の表情だった」わけです。

そして、1年後・・・。
あえて組み合わせなくても、彼女は堂々と姓名判断ができるようになったんです。占い上では不幸に、そして現実では幸せに・・・でも、残念ながらこの部分は創作というか叶いませんでした。
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[No.673-2]私たちの見出し

No.673-2

「それで、手前味噌なんだけど」

抜群のセンスを発揮した。
あまり褒めない先生が絶賛したほどだ。

「みんなは見出しの意味をよく理解してなくて」

単なるタイトルになっていた。

「ほら、見出しって、それだけで伝わるだろ?」
「うん・・・濃縮してるって感じよね」

多くの言いたいことをグッとおさえて、ギュと詰め込む。

「なんか、それも見出しっぽい!」
「・・・ところで、覚えてる?その見出し」

さすがにほんの一部しか覚えていない。

「確か・・・」

とにかく、最後は“青春”で終わる。
これだけは、ハッキリと覚えている。

「古き良き時代だったか・・・輝かしい時代だったか・・・」

こんな風なフレーズが先行したように記憶している。

「ふ~ん、なるほどね・・・」

「じゃあ・・・今の私たちに見出しを付けるとしたら?」
「えっ!?」

ある意味、試されている気がした。
センスをじゃない・・・僕たちの関係を・・・だ。
S673
(No.673完)
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[No.673-1]私たちの見出し

No.673-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「じゃぁ・・・今の私たちに見出しを付けるとしたら?」
「えっ!?」

ある意味、試されている気がした。

「なに見てるの?」
「ん?あぁ、アレだよ」

いつ見ても感心する。
週刊誌の見出しほど興味をそそる言葉はない。

「中吊り広告?」
「あぁ・・・」

買うかどうかは別にしても記事を読んで見たくなる。

「そうね、女性誌も同じよ」
「ううん・・・それ以上かな?」

彼女曰く、読むだけに留まらないと言う。

「ほら、ファッションとか化粧品とか」
「試したくなると言うか、ついには買っちゃうんだよね」

なるほど・・・そう言うことか。

「恐るべし、見出し!って感じね」
「・・・だよな・・・そう言えば・・・」

高校の授業でそんなことがあった。

「授業で?」
「うん、国語の時間にな・・・」

新聞の見出しのようなものを考える授業があった。

(No.673-2へ続く)

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[No.672-2]消えた帽子

No.672-2

「明日も暖かかったら手袋も卒業ね!」

これを“前向き”と言っていいのかは別にしても・・・
意味も無く、羨ましく思う。

「私は・・・どうかな・・・」

寒さに弱いせいなのか、単に優柔不断なのか・・・。

「明後日もなら、薄手の上着に変えてこようかな?」

まるで季節の変わり目を楽しんでいるかのようだ。

「そうだね・・・私もそうしようかな」

決められないのなら、友人と行動を共にしよう。

「大丈夫?」
「も、もちろん大丈夫よ!」

寒さに弱くても優柔不断でも、決めたことはやり抜くタイプだ。

「じゃ何でもいいから、今日からひとつずつ卒業ね」
「今日から?・・・今日は無理よ」

あいにくマフラーも手袋もしてきている。

「えっ?だって、今日はいつもの帽子・・・被ってないじゃん?」
S672
(No.672完)
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[No.672-1]消えた帽子

No.672-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・どうしようか・・・」

季節の変わり目は服装を決めるのも一苦労だ。

「おはよう!」
「おはよう!あっ・・・」

いつもと変わらない朝だ。
けど、友人の服装がいつもと違う。

「マフラーやめたんだ?」
「うん、悩んだけど、暖かくなるみたいだから」

ここ数日、昼間は春の陽気だ。
かといって、朝晩はまだまだ寒さが残る。

「まずはマフラーから卒業かな・・・って」

それだけでも随分と印象が変わる。
毎日、見慣れていただけに。

「私もまずはそれからかな・・・って思ったんだけど」

まだ手放す決心が付かなかった。

「・・・寒さに弱いし、それに今日も風が強いみたいだったから」

夏になったらなったで、今度は暑さに弱い。

(No.672-2へ続く)

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ホタル通信 No.275

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.394 はやさの時代
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

ホタル通信を書くにあたって読み直していると、あることに気付きました。

世相を反映した小説を書くことはあっても、それを皮肉ったりするようなものを作ることはありません。あえて避けているわけでもなく、自然とそこに結論が向かないだけです。
ただ、この小説はちょっと世の中を皮肉った内容になっていますね。

その昔、ホームページを表示するまでに、しばらく時間を要したり、動画なんてダウンロードしようものなら、たかが数メガのファイルでも何十分も掛かったりしていました。ところが今はその程度なら、ほぼ一瞬ですよね。
それに、ダウンロードどころか、リアルタイムで再生できたりするわけですから、小説に書いたとおり、もはや“待つ”ということもありません。

・・・だからなんでしょうか?
表示が遅いネットにイライラ、エレベータにイライラ・・・している自分に気付きました。
行列ができるお店に並ぶのとはわけが違うんですよね・・・。
スムースに表示したり、来たりするものが“そうならないと”と、イライラしてしまう。
でも、急いでみたところで得するわけでもなく、結果が変わるわけでもないんですよね。

確かに今でもすごいスピードで世の中は変わっています。
けど、街角の片隅に目を向けてみると、そこにゆっくりとした時間が流れていることに気付きます。
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[No.671-2]おもければおもいほど

No.671-2

「重力よ、重い力の・・・その波ってこと」
「あぁ・・・なるほど」

何がなるほどなのか、自分でも良く分からない。

「まぁ、いいわ・・・説明してあげるから」

それから、苦痛でしかない1時間が過ぎた。

「・・・で、分かった?」
「うん、いやと言うほど・・・」

聞き終わってみれば、理解している自分が居る。

「特に質量が大きいと時空が歪む話なんて・・・」
「そう!その歪が公転をもたらしてるんだよね」

さっきまで、必殺技と言っていたとは思えない理解度だ。
友人の説明が上手いのか私の理解が早いのか・・・。

「それが引力というか重力なんだね」

時空なんて、目の前にいくらでも存在している。
けど、その存在を感じることはできない。

「うん!さっきあなたが言ったように重ければ重いほど・・・ね」
「重ければ、重いほど・・・か・・・」

何か引っ掛かるものがある。

「人間もだよね?」
「そうね・・・軽いけど一応、質量があるからね」

おもければおもいほど・・・か。
S671
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