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2016年2月

[No.671-1]おもければおもいほど

No.671-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇねぇ、アレ見た?」

いつものごとく、私を試すような聞き方だ。

「言っておくけど、アレじゃわかんないからね」

クイズ的なやりとりは面倒だ。
さっさと結論を導こう。

「もぉ!これからが良いところなのにぃ!」

ひとつ言える事は、かなり変化球を投げてくることだ。
アレは少なくともファッションやスイーツなどではない。

「で、なに?」
「重力波、ついに観測されたんだって!」
「・・・ジュウロクハ?」

もう一度、聞き直した方がよさそうだ。

「一応、ジュウロクハって聞こえたけど?」
「そうよ、それ」

合ってるらしい。
けど、何のことだが私にはさっぱり分からない。

「もしかして、アニメかなんかの必殺技?」

何となく聞き覚えがある言葉だからだ。

「それ・・・カメハメ波のこと、言ってる?」
「えっ!?・・・その親戚じゃないの?」

大いに違うらしい・・・友人の顔にそう書いている。

(No.671-2へ続く)

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[No.670-2]あの日に帰りたい

No.670-2

「単純にできないだけよ」

かと言って、特段努力をしていないのも事実だ。

「変なオーラでも出てるのかしら?」
「まぁ・・・それは否定できないわね」

相変わらずストレートに答えてくれる。

「もぉ!一応、気にしてるんだから・・・」
「冗談よ、冗談」

けど、あながち外れてはいない気もする。

「昔の方がもてたなんて皮肉ね」

お世辞にも“イケてない”私だった。
地味な私に彼が出来たのは不思議としか言いようがない。

「そうね・・・今は“こんなん”だけど」
「それ、どう言う意味よ!?」

いつもこんな展開になってしまう。
でも、これはこれで楽しくもある。

「昔に帰りたい?」
「・・・どうだろうね」

昔に帰りたいと思ったりはしない。
ただ、あの日に帰りたいと思ったことはある。
S670
(No.670完)
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[No.670-1]あの日に帰りたい

No.670-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「また、来ちゃったわね」

今頃になると、あえて友人が口にする。

「もう、昔のことよ?」

7年前が“昔”なのかは意見が分かれるところだろう。

「けど、まだ忘れてないわけでしょ?」
「そうだけど、未練があるわけじゃないわよ」

学生時代の淡い恋だった。

「そう?私にはすごく似合いのカップルに見えたけどな」

同じクラスだったゆえに、何かと事情を知られている。

「あれから7年も過ぎてるのよ!?」
「・・・だからなに?」

こういう話になると友人の追及が激しい。
それも毎年、こんな調子だ。

「だから彼ができないんじゃないの?」

否定も肯定もしない・・・というより、自分でも分からない。

「そんなつもりはないんだけどね」

この言葉に嘘はない。

(No.670-2へ続く)

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ホタル通信 No.274

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.228 塩おにぎり
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

多少の脚色はあるものの、実際の出来事をほぼ忠実に再現してみました。

もちろん、実話度100%のお約束で、作者は小説の牽引役である男性なのか、優衣(ゆい)なのかは秘密です。
さて、実話度100%なので、読んで頂いた通りの内容で、悪く言えば、小説ではなく単なる日常会話に過ぎません。
ですが、日常会話の中から“ピン!”と来るものがあったからこそ小説風に仕立てています。

以前も書かせてもらいましたが、何がテーマでも話を作れる反面、そこから感じるものがなければ決して作ろうとは思いません。
例えば、「No.667 流されている!?」を発表しました。水鳥がただ泳いでいる話に過ぎませんが、流れに乗りスイスイ泳ぐ者もいれば流れに逆らう者も居る。これを目にした時、「人間社会と似てる、自分は・・・あっち側だろうな」と感じた時、それが小説を書くきっかけになります。

話を戻すと、小説上の二人が初対面であったなら“意気投合”してるわけですよね。そんな人、案外居そうでいません。
だからこそ、細くとも永く付き合えるのかもしれませんね。
表面的なものではなく、深層の部分で意気投合できるのは、ちょっとマニアックな世界に通ずるものがあります。

今でも彼女とは良い関係です。でも、意外と思われるかもしれませんが、二人はかなり浅い関係でそうそう逢うこともないんですよ。
T274
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[No.669-2]時代は変われど

No.669-2

「聴いた装置と言うか製品と言うか・・・」

つまり、始めて聴いたのはカセットテープだった。
厳密に言えば、携帯型の製品で・・・だが。

「なんだぁ!そう言えばいいのにぃ」
「ごめん、ごめん!」

もちろん、CDからダビングしたものだ。

「・・・で、次はMDだったんだよね」
「懐かしいぃ!」
「歳・・・バレちゃうよ?」

避けていたはずの話題なのに二人で大笑いした。

「そ、そうだったわね」
「で・・・それから、また時は流れて・・・」

MDも時代の流れと共に表舞台から姿を消した。

「そ・れ・で、今はこれ」

いわゆるメモリー型のプレーヤーだ。

「昨日聴いた曲をカセットテープでも聴いたことがある」

それにMDでも聴いた。

「それを昨日、唐突に思い出しちゃって」
「・・・という話だったわけね」

彼女の歌声が眠っていた記憶を刺激したのかもしれない。
時代は変われど、彼女の歌声は何も色褪せていない。
S669
(No.669完)
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[No.669-1]時代は変われど

No.669-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あっ」

思わず小さな声を漏らしてしまった。
時々、唐突に何かを思い出すことがある。
もちろん、そのきっかけがあってのことだ。

「最近・・・のアルバムを買ったんだ」

いわゆるベスト版と言われるものだ。
けど、一般的に言われているものとは少し重みが違う。

「そうみたいだね・・・ファンだっけ?」
「ううん・・・特別そうじゃないんだけど」

それでも、好きでよく聴いていた。

「それでさぁ・・・昨日、聴いてたんだよね」

音楽を聴くときは、もっぱら専用のプレーヤーを使う。

「面倒だから私はスマホで聴いちゃうけどね」

スマホが主流になってからは友人のような人も多いだろう。
ただ、昔はそうはいかなかった。

「初めて聞いたのが・・・」
「やだ、今の歳がバレちゃう話?」

確かに話は昔にさかのぼる。
けど、結論はそこじゃない。

「・・・じゃなくて、聴いた物の話」
「キイタモノ?」

私の表現が悪かったようだ。

(No.669-2へ続く)

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[No.668-2]・・・発明記念館

No.668-2

「なに描こうか?」
「せいじゅうろうに決まってるやん!」

あえて聞く必要もなかったみたいだ。

「・・・ほいっ!」
「なんだよ?“ほいっ!”て・・・」

菜緒(なお)が、容器を俺に差し出した。

「もしかして、“描いて”ってこと!?」
「うちな、ヘタクソなんやもん・・・」

ここに入る前とは別人のような、おしとやかさだ。
ただ、絵心がないとは意外な事実を知った。

「へぇ~知らなかった」

普段、描く機会がないこともその理由のひとつだろう。

「まぁ、いいけど・・・」

嫌々な雰囲気を出しながらも、内心は違う。
そこそこ自信があるからだ。

「・・・これでどうかな?」
「めっちゃうまいやん!」

一般的な基準ではなく、あくまでも菜緒の評価ではあるが。

「曲面だし、下書きなしだから難しいよな」
「せやかて、ええ記念になったやん!」

そう・・・確かに記念になった。
ある間違いがあったことも含めて。
Image1_2
(No.668完)
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[No.668-1]・・・発明記念館

No.668-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
念願・・・ではないおにせよ、ようやく実現した。

「こっちやで!」

それもあってか、いつも以上に菜緒(なお)が元気だ。

(・・・こっちじゃないのかな?)

女性にしては珍しく、初めての場所でも臆することがない。
それに引き換え、俺は・・・。

「ちょっと待って!今、電波が悪いみたい」

スマホを片手にしても四苦八苦している。

「ほら、あれやん!」
「・・・ほんとだ・・・」

駅からさほど離れていないこともあり、あっさり見つけられた。
見つけたのは彼女だが・・・。

「もう人がいっぱいやん!」
「・・・意外にいぃ・・・ちょ、ちょっとぉぉ!」

言い終わる前に、猛烈な勢いで俺の腕を引っ張り始めた。

「わ、わかったから!」

言うなれば、ここではちょっとした工場体験ができる。
オリジナルのカップヌードルを作ることができるからだ。

「二階やて!」

案内板を見るや否や一目散で階段を駆け上がって行った。

(No.668-2へ続く)

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ホタル通信 No.273

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.215 予言なんてそんなもの
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

今更ですが、冬のホタルの作者は小説上の牽引役(ホタル通信上の語り手)か、転勤した彼のどちらかになります。

当ブログは、登場人物が物語を進めて行きます。もちろんほぼ実在する人物であり、例外を除いて登場する人物のどちらか片方は“作者”です。
小説のテーマから、登場人物の性別や学生、社会人などの人物像を決めています。そのためには作者の性別や年齢がどうしても邪魔になるために、今も正体不明のままで通しています。

この小説ももしかしたら、牽引役の“私”は女性ではなくて“男性”かもしれません。そうなると、転勤したのは“彼”ではなく“彼女”なのかもしれませんね。また、相手の気持ちや心の中を想像して書くこともあります。
つまり二人で体験したことを、自分の目線ではなく、あえて相手の目線で書くんです。現実に起こった出来事なのに、100%事実でもない・・・何とも不思議な小説が出来上がるわけです。

もう最後ですが、ラストの「後でこじつけてみたら?彼と上手くいったわけを」の意味は分かりますか?
もちろん、予言は“後からのこじつけ”であることを言いたいのもありますが、“彼と上手く行ったらいいな”と、自分の願望を友人の口を借りて声にしているんですよ。
T273
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[No.667-2]流されている!?

No.667-2

「ほら、あれ見て・・・」
「・・・どれ?」

川の流れに乗って、スイスイ泳いでいる水鳥がいる。

「どう思う?」

友人の言いたいことは分かっている。
今は何でも仕事や社会に結び付けてしまう。

「私は無理かな・・・」
「・・・多分、私も」

なんとも不器用な私たちだ。
社会の流れに乗って、スイスイと泳げるはずもない。

「だけど、見方によっては流されてるよね?」

友人が意外な一言を投げてきた。

「・・・それもそうね」

確かに流されているように見えなくもない。
川の流れが結構早いからだ。

「もうやめようか、例えるの?」
「・・・だね!」

あらぬ不安を自ら助長してしまっている。

「ちょっと歩こうよ」
「うん!」

返事と共に重い腰を上げた、その時・・・。
視線の先に、別の水鳥の姿を見つけた。
川の流れに逆らうかのように、必死に泳ぐ二羽の水鳥を。
S667
(No.667完)
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[No.667-1]流されている!?

No.667-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「卒業まで、あと少しね」

友人の口調から、それを待ち望んでいないことは分かる。

「そうだね・・・」

それは私も同じだ。
社会に出ることへの不安が日を追うごとに増して来ている。

「キラキラ輝いてるのは、川面(かわも)だけね」

何となく川辺を歩きたくなって、二人でここに来てみた。

「ほんと・・・いやみのひとつでも言いたくなっちゃうね」

川面に反射する太陽の輝きさえ素直に見ることができない。

「入社式はいつ?」
「あなたと同じ4月1日よ」

とは言え、別々の会社だ。
それに友人は、この町を出ることになる。

「そっか・・・」

別に友人としての縁が切れるわけじゃない。
でも、頻繁にはもう逢えない。

「色んな意味で不安だね」
「・・・うん」

春の暖かい日差しが、逆に寂しさを演出する。

「いいね・・・水鳥は気楽で・・・」

数羽の水鳥が、何とものんびりと泳いでいる。

(No.667-2へ続く)

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[No.666-2]気合

No.666-2

「別の理由?」
「あぁ・・・なんていうか・・・」

もっと精神的なものを感じていた。

「まぁ、あえて言うなら“気合”ってことかな」
「そう!それそれ!」
「でも、思ってるような気合じゃないと思うけどな?」

彼女の言葉とは裏腹に、皆くどいほど髪を整えていた。
一本足りとも、乱れぬようにと・・・。

「その上で、ゴムなんかで束ねてたぞ」

多少、見た目も気にした上でのことだとは思う。
けど、明らかにそれとは違う気配を感じた。

「それが気合だよ、気合!」

やはり、この言葉がピッタリ来る。

「真剣な眼差しも、また素敵だよな・・・」

普段の生活ではなかなか見せない表情だろう。

「さっき、“思ってるような気合じゃない”って言ったよね?」

「ん?あぁ・・・」

けど、気合は気合だ・・・特別、種類があるわけでもないだろう。

「真剣な眼差し・・・なんて、女子の常套手段よ」
S666
(No.666完)
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[No.666-1]気合

No.666-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
その気になって観察すれば、結構そんな人が居る。
僕の前の人も、そそくさと整え始めた。

「昨日の試験、どうだった?」

会社に着くなり、開口一番がそれだった。

「少しは得点が上がっていると思うけど」

超スローペースだが、勉強は続けていた。

「良かったじゃない!」
「勉強の習慣も少しづつ付いてきたからな」

その結果、多少なりとも手応えを感じ始めた。

「ところでさぁ・・・ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「あらたまって、なに?」

昨日の試験会場での出来事だ。
試験前に、多くの女性が髪を後ろで束ね始めた。

「邪魔になるから・・・でしょ?」

確かにその通りだと思う。
束ねていたのは皆、髪がロングの人ばかりだ。

「試験って、下ばかり向いているでしょ?」
「だから、うっとうしくて」

意外と言えば意外だ。
同性として、別の理由を期待していたからだ。

(No.666-2へ続く)

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ホタル通信 No.272

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.306 背筋がピン!と 
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

あえて順番を付けるとすれば、登場する女性は当ブログで、登場回数が上位に位置する人です。

また、背景になっている場所は、大阪ではなく札幌です。
話は大きく反れますが、作者の正体・・・つまり、年齢や性別等を知っており、かつブログの存在も知っている人はこの世に一人しかいません。それが、小説に登場してくれた女性です。

実話度はさほど高くはありませんが、実際に彼女は私の前を歩くことが多かった・・・お互いそんな通勤習慣でした。
だからこそ、彼女の背中を必然的に見る・・・少し艶っぽく言えば“背中を追っていた”のかもしれませんね。
話を少し戻すと、その彼女はこのブログの存在を知っているわけですから、ホタル通信でほぼ本音が語られているのを見て驚いていると思います。

この話、朝のワンシーンを切り取っただけではなく、もうひとつ別の話を混ぜています。
それは「失恋したから・・・かな」と、唐突に展開して行くあたりからです。
ただし、本当の意味での失恋ではなく、いわゆる憧れの存在のような人を亡くされた話を聞いたことがあったのでこれを置き換えています。

なぜ、置き換えたのか、明確な理由は覚えていません。
自然とそうなったような、そんな気がしています。
T272
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[No.665-2]投稿職人

No.665-2

「特別扱い?」
「うん、投稿の常連だったから」

その雑誌に対する意見などを求められるようになった。

「他の雑誌にもよく掲載されたよ」

多少、掲載されるコツというか・・・ツボが分かっていた。

「まぁ、今思えば恥ずかしい内容も多かったけどね」

今でもいくつか覚えている。

「へぇ~それなら聞かせてよ?」
「言った通り、恥ずかしいからダメ!」

中学生が書く、それこそ幼稚で下品なネタだ。

「ますます聞きたくなってきたんだけど?」
「だから、ダメなのぉ!」

自分から言い出したことだけど話題を戻した方がいいだろう。

「ところでさぁ・・・」
「その動画、なにがおもしろいの?」

話題をさっきまで巻き戻した。

「ほら、これだよ」

スマホを私に向けた。

「えっ!?うそぉ・・・なにコレ~!」

何とも幼稚で下品な光景が映っていた。
けど、かつて文字にした私のネタはこれ以下だった。
S665
(No.665完)
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[No.665-1]投稿職人

No.665-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「さっきから、何に見てるの?」
「ん?YouTubeだよ」

スマホのお陰で、退屈をしのぐバリエーションも増えた。

(・・・と、いうことは私と居ると退屈ってこと!?)

「まぁ・・・いいけど」
「何だよ?」

自分がそう思ってるだけだ。
あらぬ波風は立てないほうがいいだろう。

「なんでもないよ、ところでどんな動画?」
「それがさぁ、おかしくって!」

最近流行りの”おもしろ動画”らしい。
世界中の人が投稿している・・・笑いに国境はない。

「おれも投稿したくなっちゃうよ!」

彼の言葉を聞いてあることを思い出した。

「そう言えば、私・・・今で言う“投稿職人”だったかも?」

その昔、投稿と言えば専らハガキが主役だった。
雑誌にしてもラジオにしても。

「特に雑誌にはよく投稿したなぁ・・・」

ちょっとした体験談、イラスト、おもしろネタ・・・。

「へぇ~そんな風には見えないけどな?」
「さすがに今はしてないけどね」

当時、編集部から特別扱いされていたこともあった。

(No.665-2へ続く)

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[No.664-2]既読スルー

No.664-2

「だから、“気にしてない”って言ったのよ」

言っては何だが、頻繁に送られてくる割には中身がない。
これから買い物に行くとか、帰ってきたとか・・・。

「さっきも言ったけど、何を返せばいいか困るでしょ?」

こうもストレートに言われると、否定するほうが逆に疑われる。

「まぁ・・・そうかな・・・」
「自覚してるし、それに好きだから送ってるしね」

それならそれで助かる。
LINEを送ること自体が好きならそれでよい。

「まぁ、俺も迷惑じゃないし」
「・・・ほんと?」
「あぁ」

流行のカフェで写真を撮ったりするのと同じ感覚なんだろう。
情報を共有したいと言うか・・・いかにも女子らしい行動だ。

「じゃ、あらためて言うけど、好きで送ってるから」
「ん?・・・あぁ、君さえ良ければ俺は構わないよ・・・」

内容はともかく、LINEをもらうこと自体は嫌いじゃない。

「俺も好きでもらってるから」
「なんだ・・・両想いだったんだね!」

どうしてこんな展開になったのか、理解できない自分が居る。
S664
(No.664完)
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[No.664-1]既読スルー

No.664-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
この言葉はLINEと共に生まれたと言ってもいいだろう。

「急にあらたまって・・・なに?」
「いや・・・その・・・」

確かにあらたまると言い出し難い。

「ほら、LINEでさぁ・・・」

流行の言葉を借りれば、“既読スルー”をしている。
けど、本当の意味でのスルーをしているわけではない。

「・・・俺って、あまり返信しないだろ?」
「そうね、いつものことだけど」

予想はできたが、やはりそう思われていたようだ。

「気にしてないわよ・・・別に」

けど、本心はどうだか分からない。

「既読スルーしてるつもりはないんだけど・・・」

この言葉に嘘はない。
届いたLINEを無視したつもりも放置したつもりもない。

「たわいないことばかりだから、返事しにくいんでしょ?」
「えっ・・・あっ、うん」

あまりにも的を得たセリフに、つい本音がもれてしまった。

(No.664-2へ続く)

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ホタル通信 No.271

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.303 絡まる
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

前回のホタル通信にも書きましたが、無理矢理恋愛話に結び付ける類の小説です。

何度かホタル通信では紹介していますが、話のラスト・・つまり、“オチ”を考えた上でストーリーを組み立てることはほとんどありません。これは今も昔も変わりません。
ただ、方向として“恋愛系”に持って行こうとは考えていました。
ですが、恋愛話が好きだったからではありません。正直に言えば当時の心境がそうさせました。楽しいことよりも苦しいことの方が多く、それが“冬のホタル”のベースになっていますし、今も小説を書き続けることができる原動力にもなっています。

さて、実話度は低めです。無理矢理・・・というくらいですから、“いつの間にかコードが絡んでいる”ことがある事実だけを頼りにストーリーを展開させています。
基本的にはどんなネタでも話は作れます。ですが、見聞きしたものを手当たり次第、小説にすることはありません。つまりあえてネタを探す行為はしていません。

あくまでも見聞きしたもの、経験したことの中で心に“ピン!”と来たものしか、小説化していません。
たかが“絡まる”ですが、知らず知らずのうちに、絡まり合い、解くことに苦労する・・・どこか人間関係に置き換えて居たんでしょうね。
今でも、自然にできた結び目を見つけると、この小説を思い出します。あなたの結びは如何でしょうか?決して解けないように。
T271
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