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[No.656-2]イニシエーション・ラブ

No.656-2

スマホもケータイも無い時代だ。
・・・と言うより、そもそもネットが無い。

「それでも楽しかったよな~」

もちろん、そこには涙もあった。
それも含めての話だ。

「そうよね、人と人とが・・・」
「・・・直接会うしかコミュニケーションが取れない時代だもん」

反面、ある意味、別れは残酷だった。

「残酷?」
「だってさぁ・・・会わなくなったら事実上、終わりだろ?」

唯一の電話も気軽に出来るものではない。
それに会えない時間を埋めるものがなかった。

「遠距離恋愛なんて、その典型だよ・・・映画のように」

最初はその距離間が、逆に二人を熱くする。
けど、いつしか、勘違いしていることに気付く。

「お互い悲劇のヒロインに酔っていただけだと」
「・・・そうなのかもしれないね」

それに気付いた時、もう冷める気持ちを止めることはできない。

「当然、それを乗り越えた人も居るけどね」

それは今も昔も変わらない。
会えない時間は、相手を想う気持ちで埋めるしかない。
S656
(No.656完)
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