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2015年12月

[No.657-2]LINEの涙

No.657-2

(間違いない)

相手は恐らく彼氏だろう。
どんな話をしていたのかは想像はできる。
それが今、途絶えたのだ。

(どうしよう・・・)

つい見ず知らずの女性に情が移ってしまった。
鼻をすする音は、完全に泣き声に変わった。
ただ、隣に居ないと分からないレベルの声だ。

そうこうしている内に、目的の駅が迫ってきた。
彼女のスマホを握り締める手にも力が入っている。

(・・・ええぇい!こうなったら)

「が、ん、ば、れ・・・」

空に向かって独り言のようにつぶやいてみた。
丁度、目的の駅にも到着した。

「・・・ありがとう」

僕が席を立つ瞬間、小さな声が背中越しに聞こえた。
S657
(No.657完)
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[No.657-1]LINEの涙

No.657-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(泣いてるのかな?)

小刻みな鼻のすすり方が妙に気になり始めた。
最初は、風邪でも引いているのかと思っていた。

(覗き込むわけにもいかないし・・・)

髪の毛が丁度、顔を塞ぐように垂れている。
彼女が下を向いているからだ。
正確に言えば、手に持っているスマホの画面を見ている。

(気になるな)

小さくとも鼻をすする音が電車内でも聞こえる。
なにせ、隣同士だからだ。
とは言え、たまたま乗り合わせたに過ぎないが・・・。

(もしかして・・・)

ある確証が出始めてきた。
彼女はLINEをしている・・・。
それが目にチラッと入ってきたからだ。

けど、ほどなくして彼女の手が止まった。
一瞬だけ漏れた嗚咽のような声と共に・・・。

(No.657-2へ続く)

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[No.656-2]イニシエーション・ラブ

No.656-2

スマホもケータイも無い時代だ。
・・・と言うより、そもそもネットが無い。

「それでも楽しかったよな~」

もちろん、そこには涙もあった。
それも含めての話だ。

「そうよね、人と人とが・・・」
「・・・直接会うしかコミュニケーションが取れない時代だもん」

反面、ある意味、別れは残酷だった。

「残酷?」
「だってさぁ・・・会わなくなったら事実上、終わりだろ?」

唯一の電話も気軽に出来るものではない。
それに会えない時間を埋めるものがなかった。

「遠距離恋愛なんて、その典型だよ・・・映画のように」

最初はその距離間が、逆に二人を熱くする。
けど、いつしか、勘違いしていることに気付く。

「お互い悲劇のヒロインに酔っていただけだと」
「・・・そうなのかもしれないね」

それに気付いた時、もう冷める気持ちを止めることはできない。

「当然、それを乗り越えた人も居るけどね」

それは今も昔も変わらない。
会えない時間は、相手を想う気持ちで埋めるしかない。
S656
(No.656完)
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[No.656-1]イニシエーション・ラブ

No.656-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
確かに予告通りの映画だった。
まんまと騙されていた。

「ある意味、衝撃的な内容だったよね」
「あのシーンからだよな・・・騙され始めたのは」

思い込みを利用した巧みなストーリー構成だった。

「多分、そう」

それに時より、テロップで表示される日付も曲者だった。

「そうそう!もう一度見たくなっちゃう」

でも、僕の興味は別のところにあった。

「それもあるけど、なんか懐かしい映画だったよな」

時代設定が、僕らの青春時代と重なる。

「・・・私もそう感じてた」

ボディコン、ワンレン・・・昔のトレンドも、もはや死語に近い。

「カーステレオ、見た?」
「カセットテープだっけ?」

単にそれだけじゃない。

「そのテープ、確か金色に輝いていたよな?」
「・・・アレだよね」

年齢がバレる一品とも言える。

(No.656-2へ続く)

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ホタル通信 No.267

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.387 ラーテスカ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

高校生の時、クラスメートのひとりから何気に聞かれました「“ラーテスカ”ってなに?」と。

もちろん、聞かれた瞬間は何のことだかさっぱり分かりませんでしたが、話を聞けばすぐに分かりました。
屋台を始めて見た子供がそれを言うのなら分かるのですが、高校生ですからね・・・。
今までずっと、疑問に思っていたのかもしれませんが、とにかく大爆笑したのを覚えています。

カステーラと言っても、“あの”カステラではありません。
ひとつひとつがたこ焼きサイズで、生地はホットケーキぽいやつです。ちまたで、ベビーカステラと呼んでいるものがそうだと思います。
確かに、見た目はカステラではないので、それこそ外人さんなら「Oh!カステ~ラ~!」なんて言いそうですね。
それに、祭りの屋台ですから、新種の食べ物が登場しても不思議ではありませんから。

オチは“超超”強引だと思っています。何の伏線もなく、唐突に告白していますからね。
ただ、それを少しでも緩和するために「理解力と行動力に、脱帽した」を最後に持って来ています。
日常生活には伏線なんてものはありませんから、会話の中で流れを理解し、行動に移す・・・これがラストシーンになっています。
S267
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[No.655-2]どんぐり

No.655-2

「小学生の時に男子の間で、ちょっとしたブームがあって」

学校の敷地内に、どんぐりの木が植えられていた。
今頃の季節は、同じように大量のどんぐりが落ちていた。

「いかに大きなどんぐりを探しあてるか、競争してたんだ」

その気になってみれば多少、大きさにバラツキがある。

「誰が始めたの?」
「・・・さすがに記憶にないな」

自然とそうなったような気がする。

「まぁ、子供がすることだからな」

大して意味の無いことに一生懸命になる。

「・・・で、一番になったらどうなるの?」
「自分が好きな女子の隣の席に座れるんだ」

担任の方針で、頻繁に席替えをしていた。
そこに目をつけた。

「席は自分たちで好きに決めてよかったので」

唯一のルールは男子と女子が隣同士に座ることくらいだった。

「・・・それなら、ストレートに言えばいいじゃん!」
「えっ!?なにがだよ」

彼女が手を差し出す。

「探してきたんでしょ?一番大きなどんぐり」

・・・だとしても残念ながら君じゃない。
S655
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[No.655-1]どんぐり

No.655-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あっ」

思わず声が出るほど、足元から嫌な感覚が伝わってきた。

「やだ・・・汚い」
「違う!違う!アレじゃない・・・」

当然ながら勘違いしている。

「じゃぁ・・・なによ?」
「どんぐりだよ、どんぐり!」

通学途中の道に、大量のどんぐりが落ちていた。
もちろん、木に実っていたものだ。

「それを踏んづけちゃったんだ」

あれだけ大量に落ちていると、踏んづけない方が難しい。

「・・・と、言う話・・・」

彼女が不服そうな顔をしている。
まぁ、予想は出来た。

「わざわざする話?」
「季節感があって、いいじゃん」

少し前は、アレじゃないけど、似たものを踏んづけていた。
アレと同じ臭いがするものを・・・。

「・・・と言うのもあるけど、小さい頃にな」

どんぐりにはちょっとした想い出がある。

(No.655-2へ続く)

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[No.654-2]おばあちゃんの記憶

No.654-2

「・・・でさぁ・・・」

思い出すのは、嫌な記憶だ。

「嫌な記憶?」

ただ、おばあちゃんがその原因だったわけじゃない。

「あぁ・・・結構、わがまま言ってた」

朝食がどうとか、あれがどうしたとか・・・。

「甘えているようで、甘えていないような」

母親が居ない寂しさをぶつけていたようにも思える。

「男の子って、そんなとこあるよね?」

結局、そんな思い出しか残らなかった。

「だから、申し訳ないことしたなって・・・」

そんなことを唐突に思い出した。

「たかが小学生レベルでしょ?」
「そんなの気にしてないわよ、おばあちゃんは」

そにしてもなぜ、唐突に思い出したのだろう・・・。
選んだパンをトレイに乗せながら、そんな疑問が頭をよぎった。
S654
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[No.654-1]おばあちゃんの記憶

No.654-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
唐突に、あることを思い出した。

「・・・おばあちゃんの記憶?」

単に祖母の記憶というわけではない。

「小学生の時かな・・・一度だけ祖母が家に来たんだよね」
「それって珍しいこと?」

そう聞かれるのも当然だろう。

「いつも、僕が祖母の家に行ってたんだ」

夏休みになると、家族と共に訪れていた。
それは親戚も同じだった。

「だから、家に来ることはなかったんだよね」

逆にそこに居なくてはならなかった。

「ところで来た理由は覚えてる?」
「もちろん!」

来た理由どころか、その時の光景が目に浮かぶほどだ。

「母が病気で数日間、入院したので」
「・・・代わりで」

つまり、母の代わりに僕たちの面倒を見てくれた。

(No.654-2へ続く)

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ホタル通信 No.266

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.397 宇宙の始まり
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

実話度はほぼ0%です。ふとわいた疑問を小説風な展開にしてみました。

とは言え、唐突にわいて来た疑問ではありません。多少、そっち系に興味があったので、日頃から疑問に思っていました。
小難しい話はさておき、誰もが一度は考えたことがあるであろう「宇宙の果て」「宇宙の始まり」を会話の中で展開させています。その流れの中で、“何かに属する”という会話がオチに対する伏線の役割を果たしています。
ですが、オチが決まった上で、あえて伏線を用意したのではありません。

つまり、いつもの通り、会話の流れに沿うようなオチを付けただけに過ぎません。ですから、先を見て物語を書き進めることはありません。
従って、時にはオチが出てこなくて、相当悩むことも少なくはありません。そんな時は“思わせぶり”なオチで、逃げています(笑)

ところで、今回のオチは分かりますでしょうか?
この小説は、就職活動に勤しむ二人の女性・・・詳細な人物設定はしていませんが、まぁ、大学生とでも考えて頂ければ結構です。
なかなか属せない(=就職活動がうまく行かない)ことを少しコメディタッチで描いたものです。
T266
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[No.653-2]節目のとき~それから~

No.653-2

「・・・で、僕らの関係はテレビと同じ扱いなんだ?」

どんどん悪い方向へ話が進んで行く。
このままでは本当に壊れかねない。

「ごめん、それについては謝るから・・・」
「“それ”以外もだろ?」

そうだけど、喧嘩の原因はハッキリしない。
お互いのすれ違いが招いたものだ。

「だけど、なんで私たち言い争ってるの!?」
「きっかけは?・・・私が一方的に悪いの!?」

抑えていた感情を吐き出した。

「そ、それは・・・」

今度は彼が気後れしている。

「ごめん、言い過ぎた」
「・・・う、うん」

展開の早さに、私も一気にクールダウンした。

「あっ・・・そうだ!」

その話で思い出したことがあった。

「“大切なものほど壊れやすい”って書いてあった」
S653
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[No.653-1]節目のとき~それから~

No.653-1    [No.633-1]節目のとき

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
友人との会話が現実のものとなった。
形を変えて・・・。

喧嘩の理由は、覚えていない。
・・・というより、目立った理由が見つからない。

「・・・なんだよ、その壊れるって?」
「う、うん・・・」

話の流れで、つい口から出てしまった。

「半年くらい前から・・・」

友人に話した内容をもう一度、彼にも話した。
身近な物が壊れて行く話しを。

「・・・で、なにが言いたい?」

彼の口調がやけにきつい。
答えを分かっていながら、あえて聞いているのだろう。

「あなたとの関係も・・・壊れちゃったのかな・・・って」

この話は明らかに失言だった。

「だろうな、その流れなら」
「けど、そんなつもりじゃ・・・」

彼の表情はますます厳しさを増して行った。   

(No.653-2へ続く)

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[No.652-2]三輪車の犬

No.652-2

「サイズは三輪車くらいだよね?」

昔は知らなくても、“今なら”私も話ができる。

「多分そう・・・犬用の車椅子みたい」

確かに以前調べて見たら、売り物もあった。
ただ、それについてはどうも手作りっぽい。

「見た目はイマイチなんだけど・・・」

それには飼い主の愛情が込められているように感じる。

「その犬も何だか楽しそうなんだもん!」

それに懸命に歩く姿が愛おしくもある。

「それ以来、いやでも目につくじゃん、やっぱり」
「あなたが言った通り、確かに愛おしく感じるわね」

ただ、そうなる原因を作ったのは人間でもある。
ある意味、矛盾した表現だ。

「それにしても、今頃気付くなんて遅いわよ」
「だって、丁度散歩の時間に重ならなかったから・・・」

おそらく、私よりも“散歩の時間”の方が正確だろう。
その気になれば毎朝、会えるはずだ。

「だから、今度聞いて見ようかと思って!」

そう、聞いてみたいことがある。
“今、幸せ?”ってことを。
S652
(No.652完)
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[No.652-1]三輪車の犬

No.652-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
最近、頻繁に出逢うようになった。

「・・・知ってるよ」
「私も時々、見かけるから」

学校の近くだから、見かけている人も多いのだろう。

「転校してきたから、知らないと思うけど・・・」

友人が“その昔”を話してくれた。

「当たり前だけど、自分の足で歩いていた頃もあったのよ」
「・・・事故?」
「詳しくは知らないけど、そうみたい」

しばらくの間、見かけなくなったらしい。
でも、それを気にする人はいなかったようだ。

「特別、目立っていたわけでもないし・・・」
「単に“近所の犬”って感じだもん」

友人が冷たいわけじゃない。
飼い犬なんて、学校の周りだけでも掃いて捨てるほど居る。

「そうね、単なる一匹に過ぎなかったんだけど・・・」
「・・・だけど?」

ある日、状況が一変した。

「だって、車輪を付けて散歩してるんだもん!」

ふたつの車輪が、後ろ足の代わりだった。

(No.652-2へ続く)

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ホタル通信 No.265

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.305 不安のタネ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

手前味噌ですが、ラストは良くできた作りになっています。
ただ、読み直してみると“あること”が頭をよぎりました。

作者は他の方々の作品を読むことが殆どありません。それは作風に影響を受けたくないからではなく、アイデアに影響を受けたくないからです。
“冬のホタル”は超短編なので、人や情景などの細かな描写には拘っていません・・・というより、省略しています。
ですからブログの売りはスピーディな展開とアイデアだと思っています。

従って、他の方々の小説からアイデアを盗用しないように読まないようにしています。決してそんなつもりはなくても、無意識にそうしてしまうこともありますから・・・。
小説を読み直してみると、ラスト付近の展開は私が初めて書いたのではなく、既にどなたかが、書いているような・・・
そんな気がしてきました。これが、冒頭に書いた“あること”なんです。

最後に、実話度は低めです。このような会話があったわけではありません。これと似たプレッシャーが掛かる出来事があっただけです。
それを何とか乗り越えようと、私が思い悩んで居る時に、浮かんだストーリーです。
T265
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