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[No.646-1]もがく先には

No.646-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
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とある新聞記事に目が留まった。
その記事の内容が他人事とは思えなかったからだ。

「それって、家を飛び出したってこと?」
「そやね」

特に表情を変えずにサラッと言われた。

「もう、かれこれ5年になるかな」
「・・・」

つい逆算してしまう。

(そうなると・・・)

「そう・・・高校を卒業したら、すぐって感じやね」

どうやら見透かされていたようだった。

「家に居場所なんかなかったし、それに・・・」
「・・・それに?」

彼女の表情がこわばる。
でも、ほどなくして穏やかな表情に変わった。

「母親の・・・罵声も耐えがたかったし」

“罵声”の前に、少しだけ間があった。
恐らく言葉を選んだのだろう。

「そうなんだ・・・」

彼女が育った家庭環境は薄々知っていた。
会話の端々に、それを匂わせるキーワードがあったからだ。
そう考えると、罵声以上のものがそこにはあったはずだ。

(No.646-2へ続く)

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