No.651-2
「だから、大変なの・・・」
とっくに怒りは収まっている。
後は歩み寄るタイミングだけの問題だ。
「・・・頑固者同士は」
お互い相手が折れるのを待っている。
「彼が謝ってきたら許すつもり」
だからこそ、仲直りにまで進展しない。
平行線のままだ。
「原因がどうであれ、自分から謝っちゃえば?」
「それができたら苦労しないの!」
今回は特に長引きそうな予感がする。
「・・・全く困った人たちね」
友人も呆れ顔だ。
「最悪、このままだったらどうするつもり?」
「そ、それは・・・」
別れたいとは思っていない。
「寂しいクリスマスになるわよ?」
「・・・にしては、うれしそうな顔してるじゃん!」
“悔しい”から、“悔しい”けど彼に歩み寄ることにした。

(No.651完)
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No.651-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
それはあるテレビCMのセリフだった。
私の場合、石と言えば良いのか、鉄と言えば良いのか・・・。

「まだ喧嘩中なわけ?」
「・・・そうね」
彼と喧嘩の真っ最中だ。
「仲直りできそう?」
「どうだろう・・・」
これが初めての喧嘩じゃない。
だからこそ、仲直りできるかどうか分からない。
「お互い頑固だからね」
歩み寄りたい気持ちがないわけじゃない。
けど、自分からはそうしたくない。
「相手が折れるのを待っているってこと?」
「うん・・・そう」
喧嘩の原因を作ったのは彼だ。
だから、彼が折れるべきだ。
「・・・と、彼も思ってるんじゃない?」
「喧嘩の原因はお互い“相手”にあると思ってるだろうから」
友人の発言は的を得ている。
なぜなら、今まさにその通りだからだ。
(No.651-2へ続く)
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No.650-2
「だって・・・私も経験あるから」
それもつい数日前の出来事だった。
「ほんと迷惑な話だよね」
「う、うん・・・」
ただ、私は迷惑を掛けられたのではなく、掛けた方だ。
「掛けた方?」
「うん、私もこれと同じことしちゃったの」
ゴミ箱を見つけて、これ幸いと思い、コップを捨てた。
けど・・・。
「取り出そうと思っても取れなくて・・・」
強引に押し込んだら余計にどうにも出来なくなった。
「だから、人のこと言えないね」
たかが・・・と思う以上に、罪悪感が残る。
「そんなことないさ」
「だって、黙ってたら分からなかったことだろ?」
そう・・・不思議と正直に話したくなった。
「とにかく・・・まずはこれを何とかするか!」

(No.650完)
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No.650-1
登場人物
女性=牽引役
男性=相手
-----------------------------
「何だよ、これ・・・」
空き缶専用のゴミ箱がある物でふさがれている。
「・・・コーヒーのコップ?」
流行のカフェで使われている透明のコップだ。
最近は、コンビニでもよく見かける。
「みたいだね」
「これじゃ、捨てられないだろ!」
空き缶を入れる穴に、引っ掛かっている状態だ。
「最後まで入れられなかったんだよ」
「・・・最初は入るんだけどね」
簡単に言えば、コップは台形を逆さにした形だ。
底の方から穴に入れるとスンナリ入る。
「で、もう一息の所で引っ掛かるんだよね」
そうなる押すに押されず、引くに引けず・・・。
結果、どうしようもなくなる。
「・・・やけに詳しくない?」
「というより、なんか話がリアルじゃない?」
そう言われるのも当然だ。
(No.650-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.214 ワン切り
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性
今回の実話度は、衝撃度から見て少しパーセンテージを上げてみました。
二人の会話は実際には行われていません。存在する事実は“しばらく繋がらなかった番号に繋がってしまった”ということだけです。
ただ、そのインパクトがかなり大きく、小説にも書いてある通り、パニックに陥りそうになりました。
“元彼”と連絡が取れなくなった・・・正確に言えば、“彼”と連絡が取れなくなりました。つまり、まだ付き合っている最中に、連絡が取れなくなったわけです。
そこに至るまでの過程は割愛しますが、そうなる理由に心当たりがないわけではありません。
ある日、何気なく元彼の電話番号を押してみました。
登録されている電話番号を整理するために、最後の確認の意味で押したのが本音で、そこに何ら期待をしていませんでした。そこへ来て、呼び出し音が鳴り始めたものですから、驚きは半端なものではありませんでした。
ただ、小説にも書いた通り、冷静になってみれば誰かがその番号を引き継いだと考えるのが自然です。
それ以来、電話を掛けてみたことは一度もありませんし、今後も掛けるつもりはありません。全く知らない人に、繋がってしまうはずですから・・・。
でも、スマホの中には今でも番号が残っています。


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No.649-2
単なるハプニングだったはずだ。
そこに、隠し事などが入り込む余地はない。
「・・・えっ、なに!?」
「言っとくけど、ワザとやったわけじゃないからね!」
言い放ったのには理由がある。
結果的に、これがきっかけで彼と付き合うようになったからだ。
「それは分かってるさ」
一応、告白は彼がしてきた。
「それで、話してないことって?」
「そもそもさぁ・・・変だと思わない?」
「えっ・・・やだぁ・・・そんな季節は終わったよ・・・」
何となくホラーっぽい展開だ。
彼の表情も怪しげだ。
「いくら横を通り過ぎたからって、手が当たると思う?」
「・・・言われてみれば・・・」
小川沿いの道は十分過ぎるほど道幅がある。
それに、人通りだってたかが知れている。
「ど、どういうこと!?」
「・・・あの日な・・・」
彼があの日のことを話し始めた。
「・・・私の目の前に行こうとしてた!?」
「あぁ、今日こそは告白しようと思って」
聞けばその瞬間に私の手が飛んできたらしい。
「だから、告白する前にフラれたのかと思ったよ」

(No.649完)
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No.649-1
登場人物
女性=牽引役
男性=相手
-----------------------------
「うっとおしいけど、思い出すよね」
その言葉通りのことが一年前に起きた。
「・・・これ?」
一見すると何も居ない空中を指差す。
正確に言えば“こいつら”だ。
何百匹・・・いや、それ以上の数かもしれない。
「うん・・・一応、こいつらが結んだ縁じゃない?」
一年前、いつも通り、学校に続く小川沿いの道を歩いていた。
そして今と同じように、こいつらが飛び交っていた。
「ハプニングの産物だけどね」
こいつらの正体は春と秋に大量発生する、蚊のような虫だ。
「・・・痛かったでしょ?」
その虫をはらうために、手を振り回していた。
「まぁ・・・それなりに」
その手が、通り過ぎようとしていた彼の顔を直撃した。
「ほんとゴメンネ」
お互い徒歩だったので、幸いにもケガには至らなかった。
「でも、すごくビックリしたんだから」
まさかそんなことになろうとは思っても見なかったからだ。
「それは僕だって同じだよ」
「ただ・・・そのことで話してないことがあるんだ」
(No.649-2へ続く)
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No.648-2
「そうだけど・・・来年はふたりで見ることもないでしょ?」
「あっ・・・」
確かにそうだ。
来年の春にはふたりとも卒業してしまう。
「部活でいつも遅かったから・・・」
「・・・太陽よりも見ていたはずよ」
3年間、それこそ1日も休まずに部活を続けた。
それは友達も同じだった。
「それはそうね」
「だけど、私たち下ばっかり、向いてなかった?」
不甲斐なさに涙に暮れる日が少なくなかった。
「それは、あんたじゃん!」
「なに言ってんのよ!そっちこ・・・あはは」
言い終える前に笑い声に変わった。
「あはは・・・」
どちらでもない・・・お互いさまだ。
「知らないうちに、時間は流れてたのね」
苦しくも楽しい時間が永遠に続くと思っていた。
「ちょっと遠回りして帰らない?」
月の欠片を探しに・・・。

(No.648完)
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No.648-1
登場人物
女性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
「・・・あれ?」
友達が不思議そうな声を上げる。
「どうしたの?」
「ほら、見て・・・」
そう言うと視線の先を指差した。
それが何であるか、言わずとも分かる。
「わぁ・・・なんか幻想的な三日月ね」
いつも目にしている色とは明らかに異なる。
ある意味、神々しくもあり、妖艶でもある。
「見方によっては恐くも見えるね」
それこそ、天変地異の前触れのようにも見えなくもない。
「ううん、違うの・・・月は月なんだけど・・・・」
「違うの!?」
友達が状況を説明し始めた。
「ほら、少し前まではこっちにあったじゃん、月が」
「・・・確かに」
正門を正面だとすると、左手側にあった。
それが今は右手側にある。
「けど、月ってそんなものよね?」
天体には詳しくないけど、その程度なら知っている。
(No.648-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.212 片付かないもの
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性
小説では彼が進学のため引っ越すことになっていますが現実での理由は違います。
また、本当は立場も反対で、小説上の私が転勤のために引っ越すことになりました。従って、小説を読み直して頂く際は、立場を入れ替えてみて下さい。
ただ、会話については事実と創作が入り乱れていますので、実話度は抑え気味にしています。
実話をベースにした話のわりには、アイデア的に良い感じで話を終えることができました。つまり、ラスト付近はほぼ創作になります。
最初から荷物の整理と見せ掛けて心の整理・・・の流れは考えていませんでした。あくまでも実話である引っ越し、荷物の整理を主軸として描いていました。
とは言え、その背景に、彼との微妙な関係があったことで荷物の整理と気持ち、心の整理を引っ掛けることを思い付きました。実際に会話はありませんでしたが、微妙な関係だっただけに、そんな雰囲気はあったんですよ。
その一言を言ってしまおうか・・・でも、言ったら始まるのか、終わるのか・・・結局、言えずじまいでした。


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No.647-2
「それにしても・・・」
「なに?」
時より感心することがある。
これ以上ないと思えるほど、ピッタリの擬音があることだ。
「ほら、カピカピって言葉」
擬音はあえて説明を加えないほうが良い。
言葉の響き自体が大切だからだ。
「乾いた鼻水をうまく表現してるよな」
「・・・そう言えばそうね」
カサカサでもピカピカでもない。
言葉的にも見た目的にも丁度、その中間を行く。
「まさしく、このために生まれて来・・・」
「どうしたの?話の途中で」
フッと気付いたことがある。
「でもさぁ、普通、鼻水がどうこう・・・って言う?」
「言わないと、かわいそうじゃん」
そうは言っても、見て見ぬふりがほとんどだろう。
「なんか、ひょうひょうと言うよね?」

(No.647完)
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No.647-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
その言葉に漢字があるとは知らなかった。
単に擬音だと思い込んでいた。
「やだぁ・・・カピカピになってるじゃん!」
「・・・えっ!?」
同僚の女子社員が僕の顔を指差した。
「な、なにが?」
「鼻水・・・」
言われて気付いた。
そう言えば、ここ数日鼻水が止まらない。
「ご、ごめん!風をひいてて・・・」
熱っぽさもなくはない。
「・・・が乾いて、カピカピになっているわよ」
「そうなの!?」
思わず、鼻を手で擦った。
確かに・・・そんな感触がある。
「鼻水が出てるのに、そのままにしてるからよ」
「・・・そうみたい」
でも、知っててそうしたわけじゃない。
あくまでも無意識であり、気付けなかっただけだ。
(No.647-2へ続く)
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No.646-2
「しばらくは寮に住んでたんやけど」
専門学校に通っていた時期もあるらしい。
「けど、そこも居づらくなって」
「だから、あの人のところへ転がり込んだ」
もちろん“あの人”を知っている。
面識はないが、少なくとも良い印象は持っていない。
「家に戻ることは?」
「もう・・・二度とないやろな」
ただ、不思議と母親を憎む言葉を聞いたことはない。
「まぁ、ウチは生きてるわけでもなし・・・」
「死んでるわけでもなし・・・中途半端な存在やね」
すぐには彼女の言っていることが理解できなかった。
けど、後からジワジワと込み上げてくるものがあった。
「そっか・・・」
適当な言葉が見当たらない。
彼女の前ではどんなに気の利いた言葉でも軽く感じられるからだ。
「そんなウチでも幸せになれるんかなぁ・・・」
誰に向かって言ったわけでもないセリフだった。

その記事を読めば読むほど彼女と境遇が似ている。
「彼女も懸命にもがいてたよな・・・」
その先に決して光が見えなくとも・・・そして、この僕も。
(No.646完)
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No.646-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
とある新聞記事に目が留まった。
その記事の内容が他人事とは思えなかったからだ。

「それって、家を飛び出したってこと?」
「そやね」
特に表情を変えずにサラッと言われた。
「もう、かれこれ5年になるかな」
「・・・」
つい逆算してしまう。
(そうなると・・・)
「そう・・・高校を卒業したら、すぐって感じやね」
どうやら見透かされていたようだった。
「家に居場所なんかなかったし、それに・・・」
「・・・それに?」
彼女の表情がこわばる。
でも、ほどなくして穏やかな表情に変わった。
「母親の・・・罵声も耐えがたかったし」
“罵声”の前に、少しだけ間があった。
恐らく言葉を選んだのだろう。
「そうなんだ・・・」
彼女が育った家庭環境は薄々知っていた。
会話の端々に、それを匂わせるキーワードがあったからだ。
そう考えると、罵声以上のものがそこにはあったはずだ。
(No.646-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.344 時計
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性
とある想い出を語り合うパターンの小説ですが、読み返して見ると、あらためて懐かしさが込み上げて来ます。
まず実話度ですが、想い出自体は事実に基づいて構成されていますが、それを二人で語り合うことは創作です。
従って、全体的には事実の部分が多いのですが、あくまでも実話度は「現実に会話が行われたか?」をベースにしていますので、20%と低めです。
さて、当時は待ち合わせで、もめた記憶がありません。
小説にも書いた通り、そもそも「何時に」なんてものが、なかったからかも知れません。
みんな時計や、その代わりになるものを持っていませんでしたから、逆に「何時に」と言われてもそれに合わせるのも困難だったと思います。
それに今思えば、真っ暗になるまで遊び、家に着いた後に「時計を見てビックリ!」なんてこともシバシバ・・・。
待ち合わせ時間もそうですが、時間を気にせずに遊んでいた結果なんでしょうね。
ラスト付近は昔を懐かしみながら、今、自分達が置かれている状況を嘆いている・・・そんな感じです。
ただ、このままラストを迎えると、少し湿っぽくなりそうだったので、ありがちですが“腹の虫”を登場させました。
ここまでの流れなら、それでも不自然さはないと考えた結果です。


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No.645-2
「・・・あるもの?」
あえて言うなら、子供っぽさの反対を行くシロモノだ。
「自転車のハンドル・・・」
「確か当時は“アップハンドル”って呼んでたな」
それはハンドルが上に長い・・・というか高い。
「あっ・・・それ知ってる」
長さも色々あったらしく、極端に長い人もいた。
「けど、なんで子供っぽさの反対なの?」
「当時、不良グループがよく乗っててさぁ・・・」
不良・・・とは言いつつも憧れもあった。
だからこそ、なりきれない分を自転車で誤魔化した。
「僕もそこそこ長いハンドルの自転車だった」
「ベースは前のままだけど」
つまり、そんな自転車が売っているわけではない。
ハンドルだけ取り替えるのだ。
「それだけで、ワルになれた気分だったな」
けど、それもほどなくして卒業することになった。
「逆にそれが恥ずかしくなってきちゃって」
自転車だけに、僕らと共に時代を駆け抜けてきた。

(No.645完)
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No.645-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
昔の自転車が特集されている雑誌を見つけた。
「男子はよくこんなの乗ってたよね!」
スーパーカーブームの影響だったのだろうか?
車に似た装備を持つ自転車が多かった。
「だよな・・・隠しライトなんてその典型だったもんな」
収納されていたヘッドライトが操作すると飛び出してくる。
それは車そのものの機能だった。
「それに変速機も」
今で言う、オートマ車を彷彿させる作りだ。
「子供心をくすぐる機能が多かったよな」
「そうよね~自転車を囲んでワイワイ騒いでたっけ」
ただ、ブームはそんなに長くは続かなかった。
それにそれよりも早く“卒業”してしまう。
「卒業・・・する?」
「中学にあがると、さすがにそれはキツイな」
一言で言えば派手だし、子供っぽさが否めない。
例えそうではないにせよ、中学生ともなれば敬遠される。
「お洒落に目覚める・・・と言うか」
「まぁ、いわゆる思春期ってやつね」
逆にある物が、ちょっとしたブームになった。
(No.645-2へ続く)
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No.644-2
「ほら、今だって・・・」
待ち合わせ場所は、そんな人で溢れかえっている。
「それだけ幸せってことじゃないの?」
「なに見ているかにもよるけど・・・」
彼女の場合は、“食”だった。
人によっては、彼氏や彼女とLINEしているのだろう。
「・・・かもしれないね」
一昔前なら、在り得ない光景だ。
待ち合わせは色んな意味で緊張の連続だ。
「でも、みんな気付いていないんだよな」
おそらく本人はそんなつもりじゃないはずだ。
けど、そうさせてしまうのだろう。
「まぁ、いいじゃん!小さな幸せを噛み締めてるんだから」
「・・・だよな」
それに気付いたとしても気付かない振りも必要かもしれない。
「そうそう!」
「ところで、食べたいスイーツは決まった?」
この流れで行けば、こう聞くしかあるまい。
「えっ!いいの?」
ニヤけ顔より、満面の笑みの方が断然良いからだ。

(No.644完)
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No.644-1
登場人物
男性=牽引役
女性=相手
-----------------------------
恐らく本人は“気付いて”いないのだろう。
回りが“気付いて”いることを・・・。
「・・・もしもし?」
「あっ・・・ごめん!気付かなくて・・・」
相変わらずスマホに夢中だ。
「まぁ、暇つぶしにはいいだろうけど」
気付かなかったことに対して、とやかく言うつもりはない。
むしろ、早く来ていることを褒めるべきだろう。
それよりも・・・。
「なぁ・・・知ってる?」
「なにを?」
彼女に声を掛ける前に、数分だけ遠くから観察した。
「スマホいじってる時の自分の顔だよ」
「うそぉ!!・・・・そんなに私、ブサイク!?」
「いや、そうじゃなくてさぁ・・・」
なにも彼女だけに限ったことではない。
「結構、ニヤついていたぞ」
「えっ!ほんとに!?」
スマホで何を見ていようが、そんなことに興味はない。
それに、怒った顔や渋い顔で見ているよりは格段にマシだ。
「秋のスイーツ特集を見てたらさぁ」
確かに季節がら、表情も緩みがちになるだろう。
(No.644-2へ続く)
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小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.383 雨女VS晴れ女
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性
最近はあまり書いてはいませんが、当ブログでは定番の雨女(雨男)ネタですね。
いきなり手前味噌にはなりますが、他の小説よりも一般受けしそうな感じで仕上がることが多く、この小説もなかなか良いオチだと思っています。
実話度は雨女であるということだけが事実なので、20%でも多いくらいでしょうか。
さて、オチの意味は分かりますか?
それほど複雑な話ではないのですが、擬音で表すとすれば、一瞬「へっ!?」みたいな感じなるオチです。
少し説明すれば、雨女(小説上の私)の神通力が弱くなっていたのではなく、晴れ女の神通力が私を上回っていた。だからこそ、晴れ女の力にあやかって、晴れて欲しい“ここぞというイベント”には晴れ女を誘う。
・・・なのに、私の歓迎会には、晴れ女は呼ばれなかった。
つまり、裏を返せば私の歓迎会は“どうでもよかった”ことになります。これがオチです。
でも、最初からオチが決まっていたのではなく、いつものように何となく書き始めた上でのオチなんですよ。
手前味噌・・・と思っているのは、何の構想もなく書き始めても時々「!」のようなオチに行き着くことがあることに対してです。それに、小説は会社の昼休み時間中に1本仕上げていますので、そのスピード感もなかなかだとは思っています。


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No.643-2
「良くカセットテープの台紙に転写したよな」
当時、音楽はレコードとカセットテープで聞く時代だった。
「もしかして、歌手名とか曲名とか?」
「何で分かったの!?」
聞き返すのも野暮だったかも知れない。
彼女とは同年代だからだ。
「だって、私もそうだったから」
手書きは手書きで味があった。
けど、シールの文字はそれだけでお洒落に見えた。
「そうそう!それにアルファベットだったからね」
残念ながら漢字はなかった。
・・・かと言って、ひらがなやカタカタでは何とも冴えない。
「そうなんだよな・・・」
つまりローマ字表記が、よりお洒落度を増すことになった。
「ただ、曲名が長いと大変でさぁ」
「だから、これが便利だと見つめていたわけね!」
当時これがあったらもっと楽だったはずだ。
「だけど、大変だったからこそ、心にも転写されてたみたいだな」

(No.643完)
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