[No.642-2]工事のおじさん
No.642-2
「そうかな?私は始めて見たわよ、そんな人」
誘導してくれることは何度も経験している。
でも、頭まで下げるひとは見たことがない。
「繰り返しになるけど、仕事だからでしょ?」
あくまで誘導を任されているだけに過ぎない。
それに自分が直接不便を掛けているわけでもない。
「それでも、頭まで下げるかな・・・」
確かに仕事と言えば仕事だ。
現場を代表して、不便を掛けていることをお詫びしている。
「それに何度も通るわけでもない」
「・・・もう二度と会うこともないかもしれないのに」
大袈裟だけどおじさんにとっての“一期一会”なんだろう。
「まぁ、そこまで言われると・・・ね」
仕事としてではなく、人として行動している。
そんなところが尊敬に値する。
「・・・で、尊敬しちゃうのは私じゃないわけね」
「そう・・・話は戻っちゃうけど」
今も見ず知らずの人に頭を下げている。
「・・・あっ・・・」
ひとつ思い出したというか・・・気付いたことがある。
「・・・彼もそうなのかもしれない」
昨日、彼と喧嘩して“八方美人!”とののしったばかりだった。
(No.642完)
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